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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2008年4月 5日

遼東半島に未知の大ナローゲージ網を探る。(1)

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▲本邦初、いや恐らく世界初公開となる復州湾塩場金城運輸站に蝟集する機関車群。この金城運輸站が担当するのは復州湾地区の第1?4塩場。'08.3.21
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“灯台下暗し”とはこのことでしょう。まさか成田から2時間半、幾度となく訪れたことのある大連近郊に、まったく未知の巨大なナローゲージ・ネットワークがあったとは…。
先々週お休みをいただいて現地に行ってまいりましたので、今日から数回に分けて、この知られざるナローゲージ網の“断片”をご紹介してみたいと思います。ちなみにあえて“断片”と申し上げたのは、想像以上に規模が大きく、3泊4日の旅程では、その全貌はおろか片鱗を垣間見た程度に終わらざるをえなかったからです。

fukusyuuwanmap.jpgことの発端は昨年秋に遡ります。企業研修で遼東半島を訪れた方から「お好きそうなのを見かけましたが、ご存知ですか」とメールをいただきました。その添付された写真を見て絶句! 日頃から中国のインダストリアルナローに関しても少なからずアンテナを張り巡らしているつもりでしたが、これはまったく知りませんでした。しかも私もメンバーになっている英国のナローゲージ・レールウェー・ソサエティーや、世界各国の産業用鉄道のサーベイでは右に出るもののないインダストリアル・レールウェー・ソサエティはもとより、国内外のインターネット上にもこの軌道に関する情報はまったく流れてはいません。これはなんとしてでも現地に行くしかありません。
▲遼東半島は古くから知られる塩田地帯で、渤海沿岸、黄海沿岸ともに数多くの塩田が広がる。中でも復州湾塩田は屈指の規模。地図中のメッシュになっている部分が塩田。
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もたらされたわずかな情報によれば、場所は大連からクルマで1時間の普蘭店市から渤海沿いを西進することさらに30分ほどの復州湾。大規模な塩田が広がっており、目指すナローはこの塩田から塩を運ぶためのもののようです。

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▲金城運輸站の機関庫はラウンドハウスにでもしたくなるような大規模なもの。エンジン音を響かせて次々と機関車が出区してゆく。'08.3.21
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まずは懇意にしている中国旅行社に下調べをお願いしましたが、これが一筋縄ではゆきませんでした。大連から普蘭店までは高速道路も完備しており、場所こそ行きにくいことはないのですが、現地旅行社を通して工場に見学を打診するとあっさりと拒否。それならばと昨年末には旅遊局経由で再度申し込んでもらいましたが、これまたアウト。化学工場や鉱山ならともかく、青空の下で海水から塩を作っているだけなのになぜ見学させてくれないのでしょうか。あとからわかったところでは、どうやら近代的な工場設備ならともかく、旧態依然とした輸送システムを外国人に見せたくないというのが本音だったようです。

fukusyuuwan103.jpg結局、今年になってから、今度は遼寧省外事弁公室を経由して「国際的な窄軌(ナローゲージ)研究家」(実態に則しているかどうかは別として…)が研究のために立ち入りたいと申し入れ、ようやく公式訪問が可能となりました。もっとも、いざ現地に行ってみると、列車は公道の脇をばんばん走っており、いったいあの面倒な手続きは何だったのかと拍子抜けせざるをえませんでしたが…。
▲バック運転続行で出区線をヤードへと向かう2機。“所属区”によって機関車の塗色が異なり、ここ金城運輸站所属機は赤とクリームのツートンカラー。'08.3.21
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fukusyuuwan106.jpgさて、話を先々週の3月20日に戻しましょう。指折り数えてみると大連空港に降り立つのは実に15年ぶりです。飛行機のタラップを降りて平屋の小さな空港建物まで延々と地面を歩かされたのが嘘のように、今やデューティーフリー・ショップも並ぶ大ターミナルビルとなっているのにびっくり。おまけにかつては服務員の怒号が飛び交っていたイミグレーションも「歓迎光臨」ムードに包まれています。なかでも驚いたのは入国審査が終わると「私たちを評価してください」と日本語のアナウンスが流れること。いったい何かと思いきや、入国審査カウンターの端に5つのボタンがある小さな機械が置かれており、そのボタンを見ると「大変満足・満足・普通・不満・大変不満」のような和文が。つまりいま対応した入国審査官を査定してくれということらしいのです。北京オリンピックを目前に控えて、こんなところにまで懸命に変わろうとする中国の姿が見て取れます。
▲金城ヤードで入換え中の機関車。左の建物は信号扱い所。'08.3.21
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▲信号扱い所二階から金城ヤードを見下ろす。画面後方に山積みされているのが製品の塩。建物に遮られて見えないが、この塩の山の横まで国鉄(中国鉄路局)瓦五線からの専用側線が入ってきている。'08.3.21
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大連市内から整備された高速道路を普蘭店市へ。かつては前進形や建設形が行き交っていた並走する沈大線も、いまや電化高速鉄道と化して自国製の“新幹線”が矢のように追い抜いてゆきます。ただ、普蘭店から海沿いの地方道に入ると、そこには昔ながらの田舎の風景が広がっていました。まず目指すは復州湾地区の第1?4塩田を統括する金城運輸站。現在は旅客営業をやめてしまった国鉄瓦五線の復州湾站近くまで塩田の偉いさんが出迎えに出てくれることになっています。