鉄道ホビダス

2008年3月 4日アーカイブ

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「シーネンツェッペリン」と聞いてもピンとくる方は決して多くはないと思いますが、戦前のドイツが誇る高速車輌のさきがけで、1931(昭和6)年6月にハンブルクのベルケドルフ駅とベルリンのシュパンダウ駅間で樹立した230km/hの速度記録は1955年まで破られることがありませんでした。
▲シーネンツェッペリン前夜、ハノーバー郊外で実験に供されるオペルのロケット車。なんと2回目の走行実験中に爆発してついえたという。

08304n2.jpg今日はこのシーネンツェッペリン研究の第一人者であり、ベルリンのドイツ技術博物館学芸部門の鉄道に関する責任者でもあるアルフレッド・ゴットヴァルト(Alfred Gottwaldt)さんによる講演会が上野の東京文化財研究所で開催されました。ゴットヴァルトさんは鉄道建築史、戦時鉄道史、資料復元法などの権威として国際的に知られており、今回は東京文化財研究所の招聘で来日されたものですが、絶好の機会でもあり、日本鉄道保存協会として昨年ニュルンベルクのドイツ鉄道博物館で行われた講演の一部をご披露いただくことにしたものです。
▲シーネンツェッペリンに関する自著を手にしたアルフレッド・ゴットヴァルトさん。'08.3.4 東京文化財研究所会議室

シーネンツェッペリン(Schienenzeppelin)はその名のとおり“軌道上の”ツェッペリンを意味し、葉巻状の流線型車体の後部に取り付けられたプロペラによって走行する特異な鉄道車輌です。飛行船製造を専門とする技師フランツ・クルッケンベルクが、第一次世界大戦後、航空産業が禁止されたためその技術を鉄道の高速化に活用しようと模索したひとつの完成形がシーネンツェッペリンでした。

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▲最後の公開運転を行うシーネンツェッペリン。沿線には世界各国から1万人ものギャラリーが駆けつけたという。なお、左後方に見える鉄骨構造物は世界初の懸垂式モノレールの軌道である。
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BMW製600馬力エンジンでプロペラを駆動し、まさに軌道上を“飛ぶ”がごとく走行するこのシーネンツェッペリンには、自国の保険会社がすべて尻込みしてしまい、結局のところイギリスのロイズだけが保険加入に応じたという逸話も披露されましたが、日本で言えば昭和初期に200km/hオーバーの粘着走行をしようというのですから正気の沙汰とは思われなかったに違いありません。

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▲シーネンツェッペリン開発途上の実験車で、走行中の車輪の粘着を“目視”する作業(左)。なんとこの体勢で時速180km/hまで耐えたというから言葉がない。右はシーネンツェッペリンのインテリアで、かのバウハウスによるデザイン。
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シーネンツェッペリンは先に記したように1931(昭和6)年6月に230km/hの金字塔を打ち立て、次世代へとその技術が活かされるはずでした。しかし、それまでクルッケンベルクの挑戦を支持し続けてきたドイツ国鉄は、200km/hオーバーの運転は当面必要ないとして、無難なディーゼル・エレクトリックによる高速気動車開発へと方針を転換してゆきます。この方針転換は戦前期のドイツ高速気動車特急網へと活かされてゆくものの、速度への挑戦という面では、ドイツは戦後のICEまで雌伏の時を過ごすこととなります。

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▲パワーポイントに続いてドイツ技術博物館保有のシーネンツェッペリン関連映画も上映、熱弁をふるってくれたゴットヴァルトさん。'08.3.4 東京文化財研究所会議室

講演会で最も印象的だったのが、最後に投影されたなんということのない0系新幹線の写真でした。晩年、亡くなる前にかろうじて“Shinkansen”開業のニュースに接したクルッケンベルクは、2つのことを言い残したそうです。ひとつは自分が目指した高速鉄道の夢は正しかったこと、そしてもうひとつはシーネンツェッペリン時代に日本の技術者の来訪があったこと、だそうです。日本の技術者とはもちろんのちの国鉄技師長であり、新幹線計画の中心となった島 秀雄さんにほかならないはずです。
「私たちドイツ人は来日して新幹線に乗るたびにクルッケンベルクのことを思い出すのです」と結ばれたゴットヴァルトさんの言葉が、とりわけ深く胸に刻まれた一日でした。

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