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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2008年2月10日

日本セメント上磯工場2号機との再会。(上)

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先日の「ヨコハマ鉄道模型フェスタ」の道すがら、かねてより一度見ておきたいと思っていた、東洋電機製造㈱横浜製作所に保存されている日本セメント上磯工場2号機を訪ねてきました。指折り数えてみると、この機関車とは実に29年ぶりの“再会”となります。今回はその昔語りを交えて、北海道初の電気機関車であった本機と日本セメント上磯工場専用鉄道を振り返ってみることにいたしましょう。
▲復元保存されてから二十年以上が経つが、さすがに製造会社の工場内とあって保存状態は抜群。空を掴むポールに背景の電線を架線に見立てて合わせてみた。'08.2.2 東洋電機製造株式会社横浜製作所
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まずは東洋電機製造㈱横浜製作所の保存機です。さすがにメーカーのお膝元だけあって素晴らしい状態で保存されており、自社製品に対する愛情がひしひしと伝わってくる下のような説明看板も設けられています。

seasideline1n.jpg「この機関車は、当社が創業して間もない大正11年(1922年)、横浜市保土ケ谷の旧横浜工場でうぶ声をあげました。車体は汽車製造(株)で作られ、国産の電気機関車としては最古の部類に属します。誕生以来63年間、北海道の日本セメント(株)(旧称浅野セメント(株))上磯工場で、セメントの原料となる石灰石や粘土の輸送に活躍しました。
自重16トンのこの機関車には、45キロワットの主電動機が2台架装され、路面電車と同じ直接制御器で運転されます。鉱山で石灰石を貨車に満載し、工場へ向けて急勾配を下るため、前後の車輪の間に電磁吸着ブレーキを装備しているのが特徴です。のちに集電装置をポールからパンタグラフに変更するなど、若干の改造が施されました。
ボンネットの鐘を鳴らしながら、北海道のしばれる山野で働き続けた日々は、決して平坦なものではありませんでした。しかし、上磯のみなさんにあたたかく見守られ、現役で還暦を迎えることができたこの機関車は、どんな華やかな機関車よりも幸せであったに違いありません。
昭和60年(1985年)、日本セメント(株)のご厚意により、生まれ故郷の横浜に帰ることができました。当社では横浜工場の移転を機会に、先人の英知と努力の結晶であるこの機関車を新製当時の姿に復元し、この福浦の地に永久に保存することにいたしました。
昭和60年6月14日 東洋電機製造株式会社」
▲最寄の市大医学部駅に進入して来るシーサイドライン(横浜新都市交通)新杉田行き列車。'08.2.2 市大医学部
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▲保存にあたって集電装置がパンタグラフからポールに復元され、前照灯の位置がいわゆる“おへそライト”に変更されているが、バッファーと朝顔カプラーは現役時代からのもの。'08.2.2
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説明文にもあるように、この機関車は1922(大正11)年に汽車会社と共同で製造されたもので、電機関係は東洋電機、車体関係は汽車会社が担当しています。まず3輌が製造され、この時の汽車会社の製造番号は615~617とすでに三桁に達していますが、蒸気機関車製造が主だった汽車会社にとって本機が最初に手がけた電気機関車でした。その意味では東洋電機製造のみならず、今はなき汽車会社にとっても歴史を画する1輌ということになりましょう。

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▲ボンネット上には鐘が装備されている。これも現役時代からのもの。右は日本セメント社紋下に残るエッチング製の東洋電機製造銘板で、右書きで「大正拾壱年製作」とある。'08.2.2
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保存にあたっては、集電装置のポールへの変更など復元改造が行われていますが、現役当時を知る者にとっては驚くほどは変わっておらず、逆に新製から半世紀以上、ほとんど大きな改造をされることなく使われていたことを再認識しました。
再び説明看板から主要諸元をお目にかけましょう。
自重:16t、最大長:6100mm、最大幅:2150mm、最大高(ポール降下時):3400mm、軌間:1067mm、電気方式:直流600V、1時間定格出力:90kW(45kW×2)、1時間定格引張力:1765kg、1時間定格速度:19.3km/h、主電動機形式:TDK31-C、動力伝達方式:ツリカケ式、歯車比:14:70=1:5、制御方式:直並列抵抗制御、制御装置:DB1形直接制御器、ブレーキ装置:電磁吸着ブレーキ、手ブレーキ、製造所:東洋電機・汽車会社、製造初年:大正11年(1922年)、製造輌数:4輌(1?3、5号)。

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▲中央床下に装備されている電磁吸着ブレーキ。本機は最後まで自動空気ブレーキを持たず、手ブレーキとこの電磁吸着ブレーキのみの装備であった。'08.2.2
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▲リベット止めの板台枠単台車も時代を感じさせる。動輪直径は847㎜。右は連結面のアップで、自動連結器装備の貨車を牽引する際には専用の控車を必要とした。'08.2.2
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この2号機に限らず、個人的にも「B凸」は大好きな車種のひとつ(→「博山水泥のこと」参照)で、これまでにもスクラッチで模型化(→「最初で最後の“Sn”」「明鉱平山、完成せず」参照)したりしていますが、今さら思えばなぜもう少し丹念に全国の仲間を訪ね歩いておかなかったのか悔やまれてなりません。