趣味の総合サイト ホビダス
 
 

レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2007年9月 8日

屋久島の森林鉄道、存亡の危機。

ishidukasen2n.jpg
▲小杉谷付近の“本線”に相当する線路も各所でダメージを受けてしまっている。この付近の軌道は縄文杉への登山ルートでもある。'07.8.8 P:高塚慎司
クリックするとポップアップします。

今週は台風9号が東日本・北日本を縦断し各地で被害をもたらしましたが、二ヶ月ほど前、7月に九州地方を襲った台風4号によって屋久島の森林鉄道が大打撃を受けてしまっているそうです。

yakushimamap101.jpg
▲かつて屋久島には島内各所からいくつもの森林鉄道が存在し、屋久杉の原始林を目指していた。もちろん現在残されているのは安房森林鉄道だけ。本図でY字状となっている分岐点が小杉谷、南側の分岐線が石塚線。

ishidukasen3n.jpgこれまでにもこのブログでもご紹介し、また『模「景」を歩く』『鉄道写真2001』でも詳しく解説しておりますが、屋久島の安房(あんぼう)森林鉄道は、最後に残った“現役”の森林鉄道として知られ、近年ではその姿見たさに遥か屋久島を目指すファンも少なくありません。現在、港のある安房(苗畑)から10.7km上流の荒川までが屋久島電工の管理区間、荒川から7kmほどが屋久島森林管理署の管轄で、前者(全区間が立ち入り禁止)は発電設備の巡視等、後者(登山道として供用)は「土埋木」と呼ばれるかつての伐採跡の切り株の運搬や、登山道途中のトイレの屎尿タンク輸送に使用されています。
▲大きく傾いてしまった電柱。ただ、この付近の線路はそれほど罹災していないようにも見える。'07.8.8 P:高塚慎司
クリックするとポップアップします。

ishidukasen1n.jpg
▲そしてこちらが石塚線の崩落現場。軌道敷の路盤もろとも崩れ去ってしまっている。'07.8.8 P:高塚慎司
クリックするとポップアップします。

ishidukasen5n.jpgこの安房森林鉄道最大の見所は、土埋木を載せた運材車を「乗り下げ」という伝統の方法で荒川まで下ろすシーンにあります。巨木を載せた運材車の上に跨り、ロープでブレーキを扱いながら重力で勾配を下るこの曲芸のような運転方法は、戦前は全国各地の森林鉄道で目にすることのできた手法ですが、現在でもまだ伝承されているのは奇跡的とさえ言えましょう。ただ、最近では石塚線と呼ばれる作業線沿線の土埋木そのものが枯渇してきてしまっており、一部では軌道を使った運搬自体が遠からず終わるのではないか…との観測も飛び交っていました。そんな状況の中での今回の台風被害です。
▲荒川登山口までの林道も一部が崩落してしまい通行止めとなっている。'07.8.8 P:高塚慎司
クリックするとポップアップします。

ishidukasen4n.jpg
▲一方、車体の傷みが進んでいた機関車(酒井工作所製C17形4.8t機)は本年4月から修理が開始され、車輪の肉盛修正、キャブまわりの鉄板張替え、再塗装が行われて見違えるように綺麗になって本線復帰した。その直後に今度は線路そのものが罹災してしまうとは…。写真は保線作業から荒川に戻ってきた姿。'07.8.9 P:高塚慎司
クリックするとポップアップします。

情報をお寄せいただいた鹿児島の高塚慎司さんによれば、台風4号によって石塚線が分岐する小杉谷から300mほど石塚方に行ったところの軌道が路盤ごと流されてしまったのだそうです。写真を見てもとても軌道があったとは思えない状況で、土埋木搬出を請け負っている(有)愛林の高田社長によれば、復旧には崩壊地の治山工事から始めねばならず、かなりの時間を要するとのこと。しかも世界遺産の指定地域だけに、手続き面での障壁も予想されます。当面、石塚線沿線の土埋木はヘリコプターによって屋久杉ランド側に搬出することになるそうですが、果たして石塚線は復旧されるのか、そして最後の現役森林鉄道が再び動くシーンが見られるのか、心配でなりません。