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魚梁瀬森林鉄道跡をゆく。(上)

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▲奈半利駅で発車を待つ土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線9640形普通車。魚梁瀬森林鉄道奈半利線が消えて実に40年以上の歳月を経て再び奈半利の地に出来た「奈半利駅」である。'07.7.20

わが国最初の官設森林鉄道である津軽森林鉄道に次ぐ歴史を誇る高知県の魚梁瀬(やなせ)森林鉄道は、その規模はもとより、全国に普及した「堀田式ブレーキ」をはじめとする独自の技術でも知られています。また車輌の動態保存など、魚梁瀬森林鉄道を核とした地域おこしも積極的に行われています。先月四国を訪れた際、この魚梁瀬森林鉄道跡を駆け足で巡ってきましたので、その様子をかいつまんでお目にかけましょう。

naharistn.jpg5年ほど前に土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」が開通して以来、魚梁瀬森林鉄道の起点であった田野・奈半利地区へも列車でアプローチすることができるようになりました。ただ、肝心の魚梁瀬地区は駅からさらに40キロ近く山奥に入らねばならず、いまもってそのアプローチは決して楽ではありません。それにしても初めて目にする「ごめん・なはり線」はその大部分が高架構造となっており、かつての土佐電気鉄道安芸線を思うと隔世の感があります。
▲終点の奈半利駅は高架駅。近代的な外観の駅前にはロータリーも備わる。'07.7.20

naharimap1nn%EF%BC%91n.jpg▲旧版地形図に見る魚梁瀬森林鉄道奈半利線。奈半利川河口の北側に田野貯木場、南側に奈半利貯木場があった。奈半利川線はその名のとおり奈半利川に寄り添うように北上し、一方、安田川線は田野貯木場から安田川を遡って釈迦ヶ生で奈半利川線と合流して魚梁瀬をめざす。“魚梁瀬森林鉄道”とは本線に相当するこの両線などを合わせた呼称である。(地理調査所発行1:50000
地形図「奈半利」昭和35年発行より加筆転載)

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“木曽森林鉄道”が王滝森林鉄道や小川森林鉄道などの総称(通称)であるのと同じく、“魚梁瀬森林鉄道”も安田川森林鉄道や奈半利川森林鉄道(のちに魚梁瀬森林鉄道)など田野貯木場・奈半利貯木場を集積地とする森林鉄道・森林軌道群の総称として使われています。まずはその中の奈半利川線を遡ってみることにします。

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▲奈半利川を渡ってきた軌道は奈半利貯木場に入る手前で寺の参道を横切る。軌道を敷設する際にその補償として営林局が設置したと伝えられる石積の跨線橋がぽつんと残されている。'07.7.20
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改めて申しあげるまでもなく、この魚梁瀬森林鉄道に関しては舛本成行さんの力作=RMライブラリー『魚梁瀬森林鉄道』があり、先ごろ再版も完成しましたので、来歴はそちらをご覧いただくとわかりやすいのですが、この奈半利川線は線路条件の厳しい安田川線を補完する目的で1942(昭和17)年に全通した魚梁瀬森林鉄道としては比較的新しい路線です。奈半利貯木場自体も昭和に入ってから開設されたものだそうで、すでにそれなりの市街を形成していた奈半利の中心部を線路が貫くのにはそれなりの紆余曲折もあったようです。その名残のひとつが法恩寺旧参道に今も残る石積の跨線橋です。

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▲参道橋上より奈半利貯木場方面をのぞむ(左)。熟練の石工によるものと思われる石積は度重なる天災にもびくともしていなかったという。'07.7.20
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▲参道跨線橋全景。新参道ができて裏口となってしまった今では利用する人はほとんどいないが、まだ通行止めとはなっていない。石積の階段は想像以上に傾斜がきつい。'07.7.20
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この古刹の参道と国道(旧道)の間に線路を敷設するにあたって、高知営林局はその補償として石積の立派な跨線橋を建設、参拝者が線路を横断せずにそのまま階段をのぼって境内へと向かえるように計らったのだそうです。民家と寺の間に忽然と残されたこの石積の参道跨線橋は奈半利市街では最大の遺構と言えるでしょう。

sandoukyou5.jpgちょうどこの参道跨線橋の横にお住まいの方からお話を伺うことができました。軌道があった当時はこの跨線橋側が正面の参道でしたが、自動車の普及とともに逆側に新参道が設けられ、いまではそちらが正面、こちら側がいわば裏参道となってしまい、ほとんど利用する人もいないとのこと。なおかつこの跨線橋を下りたすぐのところにある国道も今では新道が出来て、ますます廃れてしまったのだそうです。それでもこれまでに幾度となく当地を襲った地震や台風にも微動だにすることなく、最近ではこの遺構目当てに訪れる人もいるそうで、ちょっと自慢げにお話いただきました。ただ、訪問時にはちょうど防災工事として法面工事が始まろうとしており、果たしてこの歴史的参道跨線橋がこのままの形で残されるものなのかどうか、少々不安ではあります。
▲奈半利貯木場の一部は民間の鋼材会社のストックヤードとなってしまっている。'07.7.20
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