趣味の総合サイト ホビダス
 
 

レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2007年8月22日

100式鉄道牽引車健在。

100shiki1n.jpg
かねてより気になっていたのが陸上自衛隊朝霞駐屯地に保存されているはずの「100式鉄道牽引車」の消息です。かれこれ16年前、本誌100号にちなんで「100式鉄道牽引車ものがたり」を3回にわたって連載し、その際に国内での現存唯一と思われる朝霞の保存車を取材させていただきました。“取材”といっても駐屯地内だけにそう容易いものではなく、やれ企画書だの、申請書だのとややこしい手続きのために、当時は六本木にあった防衛庁の陸上幕僚監部に行ったのを覚えています。
▲輸送学校前庭に再整備されて展示された100式鉄道牽引車。上屋も設けられて保存状態はすこぶる良好ながら、一緒に保存されていた97式軽貨車などの姿は消えてしまっている。'07.7.23 P:岡田誠一
クリックするとポップアップします。

100shiki2n.jpg
▲後軸はゴムタイヤを取り外した状態となっており、鉄輪での軌道走行時の様子が理解できるようになっている。'07.7.23 P:岡田誠一
クリックするとポップアップします。

この朝霞駐屯地内の輸送学校前庭には100式鉄道牽引車のほかにも、編成を組んで展示されている97式軽貨車、それに戦後、陸上自衛隊101建設隊で使用されていた協三工業製15tBタンク機(1946年3月製/製番15010)が保存されており、輸送学校校舎内の展示とともに小さな軍用鉄道博物館の様相を呈していました。

100shiki3n.jpgところが本誌連載でご紹介してから数年後、この朝霞駐屯地内の輸送学校に保存されている車輌たちが散逸してしまったようだという情報が入ってきました。事実、101建設隊のBタンクはかつてこのブログでもご紹介したように茨城県内の廃材置場に放置されているのが発見され、すわ100式鉄道牽引車も放出されてしまったか…と案じられていたのです。朝霞駐屯地そのものには最近は見学施設もあるようですが、敷地の奥深くに位置するこの輸送学校の状況はなかなか伝わりにくく、つい最近までその安否ははっきりとしませんでした。
▲3位側から見た100式鉄道牽引車。外されたゴムタイヤが見える。'07.7.23 P:岡田誠一
クリックするとポップアップします。

100shiki5n.jpg100shiki6n.jpg
▲100式鉄道牽引車のもうひとつの特徴でもある空冷ディーゼルエンジン。被弾した際にウォータージャケットが破損して運転できなくなる恐れのある水冷を避けて特異な空冷ディーゼルを採用しているのは戦車と同様。オリジナルは排気量8?のいすゞDD‐10型だが、この個体はいすゞDA-6B型が搭載されている。'07.7.23 P:岡田誠一
クリックするとポップアップします。

今回、客車・気動車の研究家としても知られる岡田誠一さんが陸上自衛隊の許可を得てこの輸送学校を訪れ、初めて100式鉄道牽引車の“無事”を確認してきてくれました。すっかり綺麗に化粧直しされた100式は、専用の展示上屋の下に説明看板を伴って保存されていますが、ふと気づいてみると編成状態にあったはずの97式軽貨車の姿がどこにも見当たりません。Bタンクとともに放出されてしまったのでしょうか…。まだまだ全国各地にその末裔を見ることできる97式軽貨車ですが、この輸送学校の個体はボギー状態で、しかもレール繰り出しローラーなどの付属品もすべて揃っていただけに、もし廃棄されてしまったのだとすると残念でなりません。

100shiki4n.jpgさて、この「100式鉄道牽引車」(紀元2600年=西暦1940年の制定形式。ちなみに97式は2597=1937年の制定形式)は旧日本陸軍が開発した軌陸車で、DMV(デュアルモードビークル)の祖先のような車輌です。その発端は1931(昭和6)年の柳条湖事件に遡り、南満州鉄道から中東鉄道(ソ連領)への侵攻に備えて配備された90式広軌牽引車がルーツと思われます。以後6輪化して装甲を強化した91式、92式(逆転機を追加装備)、95式(キャタピラ仕様)、97式(関東軍寒地用)、98式(97式の南方戦線メーターゲージ用)、この100式、1式(100式のメーターゲージ対応版)、3式(形式は制定されたものの実際に製造にいたったかは不明)と進化を遂げてきました。
▲搭載されたいすゞDA-6B型エンジンの製造銘板。製造年月は「昭和16年6月」と読み取れる。'07.7.23 P:岡田誠一
クリックするとポップアップします。

100shikifig.jpg
▲新設された説明看板に記載されたスペックは、全長6.10m、全幅2.44m、全高2.45m、重量6.3t、速度60km/h(単車時)・25km/h(牽引時)、牽引力2,500t、機関:空冷ディーゼル(90HP)、燃費23km/?(牽引時)、軌間幅:3段階の変更可能=1,067mm(日本)1,435mm(中国)1,524mm(ロシア)、転路:転路用ジャッキ使用により約5分。Rail Magazine1992年3月号(No.102)所収「100式鉄道牽引車ものがたり(下)」より。作図:常味真一
クリックするとポップアップします。

この100式(1式)鉄道牽引車は、「戦場にかける橋」で知られるタイのクワイ河橋梁横のリバークワイ駅構内にも保存されていますが、日本国内ではもちろん唯一の残存車で、こういった形で末永く保存される態勢となったのはなんとも嬉しい限りです。