鉄道ホビダス

2007年7月30日アーカイブ

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香東川沿いの渓谷に分け入った軌道は、岩崎、鮎滝、関とかつての駅跡をトレースしながら、国道193号線の対岸を自転車道となって続きます。戦前に廃止された鉄軌道としては珍しいほどに判然と軌道跡が残っているのは、主要国道と川をはさんで並行していた線形が幸いしたのでしょう。
▲川の中に忽然と取り残された第四香東川橋梁の橋脚群。60年以上の歳月を経ながらも、塩江温泉鉄道の忘れ形見としてしっかりとその形をとどめている。'07.7.22
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shionoe06n.jpgところで塩江温泉鉄道を走った車輌は、川崎車輌製の片ボギー気動車5輌がすべてです。同社が最初に手掛けた気動車でもあるこの40人乗りガソリンカーは、車体前後を絞った特異なスタイルで、日本離れしたデザインの車輌でした。詳しくは湯口 徹さんの『内燃動車発達史』をご覧いただくとして、これらのガソリンカーは塩江温泉鉄道廃止後、中国東北部にわたり、満州国新京の路面電車として復活を果たします。2軸のブリル21E台車に履き変えて“電車”と化した姿は、かの臼井茂信さんがお撮りになっていますが、戦後の消息は知れません。
▲「道の駅」の観光看板にも「21世紀に残したいガソリン道」として塩江温泉鉄道跡が紹介されている。気動車の姿形も結構リアル。'07.7.22
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▲岩部から終点の塩江には高い橋梁で香東川を一気に越えていた。塩江側の築堤は跡形もないが、ここにもコンクリート製の橋脚が残されている。'07.7.22

shionoe08n.jpgさて、関を過ぎると自転車道はいったん途絶えますが、旧安原駅付近から再び小路となって姿を現します。このあたりまで来ると香東川の渓谷もかなり狭くなり、軌道跡の小路も対岸の国道も小刻みにカーブを重ねて上流へと向かいます。旧中村駅付近を過ぎると香東川は東へと向きを変え、軌道もさらに狭隘な渓谷へと進んでゆきますが、この付近に残されているのが、さながらイースター島のモアイ像のようにずらりと並んだ6基の巨大な橋脚です。第四香東川橋梁の遺構で、地形図や残された絵葉書から判断するに、渡河するための橋梁ではなく、急峻な崖となった川岸をトラバースするための橋梁だったようです。
▲同じ橋脚を別角度から見る。画面前方が塩江方。ずいぶんと高度があるように見えるが、実際は手前の岩部方は山の中腹の隧道に接続していたようだ。'07.7.22
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橋脚はほかにもいくつか残されており、最終区間の岩部?塩江間のものは香東川と国道を跨いでいたかなりの高さがあるものです。旧版地形図によれば、岩部から勾配で高度を稼いだ軌道は隧道で香東川右岸に飛び出し、すぐにこの橋梁で対岸へと渡っていました。

shionoetirashi1n.jpg終点の塩江駅跡は現在の「道の駅」の手前あたりに相当するものと思われますが、残念ながら何の痕跡も見出すことはできませんでした。塩江温泉は現在も結構な賑わいを見せており、湯の香漂う温泉街には観光客がひっきりなしに行き来しています。そのなかで沿線観光案内の看板にまたしても「ガソリン道」の表記を発見。21世紀に残したい地元の近代化遺産としてしっかりと顕彰されているのは嬉しい限りです。「道の駅」で配られている観光リーフレットにも「昭和4年?昭和16年の間は高松市(仏生山)から塩江まで鉄道が通り、ガソリンカーが多くの観光客を運んでいました」と塩江温泉鉄道が写真付きで紹介されています。
▲塩江温泉の観光リーフレットにも「ガソリンカー」はしっかりと記載されている。第四香東川橋梁も「現在も残るガソリンカーの鉄橋跡」として紹介されている。
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▲開業間もない頃の塩江駅付近を走る塩江温泉鉄道の気動車。この遠景からも標準軌であるのと特異な車体構造が見てとれる。絵葉書所蔵提供:関田克孝

駆け足での訪問でしたが、わずか12年ほどで消えたこの塩江温泉鉄道が、「ガソリン道」の名とともに今でも地元の人びとに愛され続けていることがわかったのが、今回のミニ・トリップの最大の収穫だったといえるのかもしれません。

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