鉄道ホビダス

2007年7月17日アーカイブ

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▲正門前の花壇には1925(大正14)年アルゲマイネ(AEG)製の4号機がディスプレーされている。この軌道開設時に導入されたものだという。'03.9.26
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この特別養護老人ホーム=アルタ・ウント・プフレーゲハイム・デァ・シュタット・ウィーン(Alters-und Pflegeheim der Stadt Wien)を最初に訪れた時、まず驚いたのが正門前の花壇にディスプレーされているアルゲマイネ(AEG)製の古典バッテリー機関車の姿でした。通常なら“裏方”に徹して消え去る運命にあるはずのこんな古い機関車が正面に飾られている…80年にわたって入所者から親しまれているゆえなのでしょうが、なんとも嬉しい思いに包まれました。ちなみにこの機関車、メーカー形式AB55cと称する自重1.85t(運整3.5t)の蓄電池機(製番169)で、銚子のデキ3の2年ほど後輩となります。

lainz9n.jpgどうやらこの軌道、1925(大正14)年の運転開始当初から蓄電池動力だったようで、記録によれば正門前に保存されているのと同形のAEG製AB55c形バッテリー機関車(8PS)3輌でスタートしたことになっています。現在は1957(昭和32)年AEG製の1号機(GA1/1形10PS/製番358)を最古参に、シュトルプ(Struppe)製の5号機(1981年製/製番1181)、6号機(1983年製/製番1913)、7号機(1994年製・ともに8kW、運整重量3.52t)の4輌が在籍し、「据え膳」列車担当と「下げ膳」列車担当の2輌使用、1輌がフル充電の予備、残りの1輌が完全な予備といったシフトとなっています。
▲教会横を抜けてパビリオン1へと夕食をデリバリーするシュトルプ製6号機。'03.9.26
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▲早朝、単機で出庫した機関車はメインストリートに出ると必ずコンビニ“ANKER”の前で停まる。運転士たちが朝食をとるためで、しばし店内でくつろいだのち、いざ厨房棟へと向かう。今朝の「据え膳」列車の担当はAEG製の古参1号機。'03.9.29

このほかにもイエンバッハ(Jenbach)製ディーゼル機関車(JW15形3.2t)が2輌おり、こちらは保線用に使用されているとのことでしたが、ついにその姿を目にすることはできませんでした。

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▲メインの機関庫は鰻の寝床のような1線の矩形庫で、充電装置もこの庫に備えられている。機関車は一日3回の運用の間にこの庫に戻って充電する。'03.9.26
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それにしてもなにゆえ80年にもわたって蓄電池動力を使い続けているのでしょうか。現代的感覚からすれば環境に配慮した…ということになるのでしょうが、どうもそれだけではなさそうです。類推するに、一日3回決まった時間に決まった距離だけ走る条件にはもともと蓄電池式がうってつけだったのでしょう。
ちょこまかと走り回った機関車たちは、一段落すると庫内に戻ってきてさっそく充電に入ります。そして数時間後、次の食事の時間にはフル充電状態でまた厨房棟へと向かうのです。

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▲こちらはディーゼル庫。イエンバッハ製の小型DLが収納されているはずだが、残念ながらついにその姿を見ることはできなかった。'03.9.26

結局、朝に夕に足かけ5日にわたってこの「給食軌道」を訪れることになってしまいましたが、次にウィーンを訪れた際にもまたぜひ寄ってみたい、そんな思いを抱かせるちょっと不思議な魅力を持った鉄道でした。
なお、この軌道を訪れるにはウィーン中心部から市電62番(Oper?Lainz Wolkersbergenstr間)で終点のひとつ手前Versorgungsheimpl下車、電停がそのまま正門前となっています。改めて申し上げるまでもないかとは思いますが、撮影には事務棟でパーミッションを得ることをお忘れなく。ちなみに今回の一連の写真に“人”があまり写っていないのは、機関車を撮るのは構わないが、入居者や家族は写さないで…と念をおされたこともあってです。

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