鉄道ホビダス

2007年7月10日アーカイブ

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千葉県市原市の株式会社日本AEパワーシステムズ千葉事業所内で保管されていた130トン積吊掛式大物車シキ160形がこのたび貨物鉄道博物館に運ばれることとなり、7月4日朝から大掛かりな搬出作業が行われました。貨物鉄道博物館からは岩沙克次館長・吉岡心平副館長をはじめ多くのメンバーが駆けつけ、めったに見られない大物車の分解を固唾をのんで見守りました。
▲吊掛式大物車としては小ぶりな方とはいえ、3軸台車4連の足回りは実際に目にすると圧倒される。ちなみに前回の全検入場まではスポーク車輪だったそうで、その点はちょっと残念…。'07.7.4
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IMGP2215n.jpgシキ160は1955(昭和30)年3月に日本車輌東京支店が富士電機製造株式会社向けに製作した130トン積吊掛式大物車で、全体の構成としては3軸台車4台とまくら枠2組、そして吊掛式の荷受梁からなっています。空車時の車体長さは22,626㎜。大型変圧器の輸送用として落成時は鶴見線安善駅に常備されましたが、工場の移転にともなって1963(昭和38)年9月に京葉臨海鉄道の京葉市原駅常備に変更となり、2002(平成14)年12月に廃車となるまで全国各地に変圧器を送り届けてきました。詳しくは先般3巻が揃ったばかりの吉岡心平さんのRMライブラリー『大物車のすべて』をご覧いただくとして、このシキ160が貨物鉄道博物館入りするにいたった経緯をかいつまんでご紹介してみましょう。
▲正面から見たシキ160の表情。短軸車輪のきりりと締った足回りがよくわかる。1/80スケール16.5㎜では再現できない狭軌感だ。荷受梁幅はほとんど車輌限界一杯に近い。'07.7.4

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▲トラス橋を連想させるシュナーベル式荷受梁と、ずらりと並んだ担いばね式の台車が後年の大物車にはない機能美を感じさせる。端梁間長さは22mほどと吊掛式大物車としては大きい方ではない。'07.7.4
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IMGP2171n.jpg株式会社日本AEパワーシステムズは富士電機・日立製作所・明電舎の3社の出資によって設立された重電メーカーで、シキ160を引き継いだ同社としては歴史的価値のあるこの貨車を何とか解体せずに後世に残せないかと模索していたそうです。そこに名乗りを上げたのが三岐鉄道丹生川駅に隣接する貨物鉄道博物館です。ただ、モノは貨車の王様・大物車、そう簡単には運べません。そんななか、今回は日本AEパワーシステムズのご好意で、搬出・運搬・搬入まですべて面倒を見てくださるという素晴らしい条件での「寄贈」となったのは、なにを置いても特筆せねばならないでしょう。
▲分解前のシキ160の横でテレビのインタビューに応える“プロフェッサー吉岡”こと吉岡心平さん。'07.7.4

貨物鉄道博物館では、このシキ160は鉄道貨物輸送の一分野である特大貨物輸送を象徴する貨車で、現存する吊掛式大物車では国内最古であり、世界的に見ても大物車の博物館での保存例はきわめて少ないことを考えあわせれば、産業遺産保存の観点からも貴重な事例となると、この寄贈をたいへんありがたく受けとめています。

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▲作業は日本通運の特殊輸送チームがあたる。いよいよ50トンクレーンが到着(左)し搬出準備作業が始まる。ただモノがモノだけに荷受梁を吊る準備だけでも2時間近くを要した。'07.7.4

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▲左右の荷受梁はピンで結合されており、まずはこれを抜かねばならない。ようやく抜けはじめたピン(左)と、内側からこのピンを止めていた巨大なナット(右)。'07.7.4

搬出は50トンクレーンとトラック7台によって行われましたが、荷受梁はともかく、まくら枠などまで分解されることは全般検査で車輌メーカーに入場した時以外にはありえず、非常に貴重なシーンの連続でした。ことに左右の荷受梁を繋いでいるピンを抜く作業は手に汗握る緊張感漲るもので、見ている私も思わず力んでしまったほどです。聞けばこのピン、クリアランス0.2㎜で挿入されており、抜く時にもたいへん神経を遣う吊掛式大物車のアキレス腱のような部分だそうです。

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▲しばらく稼動していなかったこともあって結合部が外れにくく、ようやく最初の荷受梁がクレーンで吊りあがったのは作業開始から3時間近く経ってから…。これから7台のトラックに載せられたシキは、さながらコンボイのごとく貨物鉄道博物館を目指して東海道を下ってゆく。'07.7.4
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今回のこのシキ160搬出・搬入の様子は今月発売のRM本誌でたっぷりとご覧いただく予定となっていますが、実は当日はNHKテレビも取材に来ており、後日番組として放映される予定だそうです。詳しくはまたお知らせできると思いますので、どうかこちらもお見逃しなく。

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▲早朝の丹生川に巨大なトラックが続々と到着する。荷受梁は車体幅の関係もあって横に寝かせて運搬されている(左)。そしていよいよクレーンで組立開始(右)。'07.7.6 P:南野哲志
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▲いよいよ組立完成。工場内とはうってかわってのんびりとした田園風景の中で恵まれた余生を送ることになったシキ160。'07.7.7 P:南野哲志
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なお、貨物鉄道博物館ではこのシキ160を8月5日(定例開館日)から一般に公開する予定だそうです。8月5日の初日には10時30分から譲渡式を行なうほか、大物車に関する講演を計画、NHKのテレビ取材も予定されているそうです。また鉄道部品や関連書籍などの即売会も開催されますので、夏休みの一日、シキ160に会いに貨鉄博にお出でになってみては如何でしょうか。

※本エントリーは搬出当日の7月4日に数時間アップいたしましたが、貨鉄博への搬入・設置が安全に完了するまで一時閉じさせていただきました。設置・整備が無事終了いたしましたので、改めてご紹介申し上げる次第です。

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