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新緑の黒部峡谷鉄道を行く。(上)

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連休の一日、ひさしぶりに黒部峡谷鉄道を訪ねました。十年ほど前に黒部峡谷鉄道→関西電力専用軌道(いわゆる上部軌道)→黒部ケーブルカー→立山ロープウェイ→立山トンネルトロリーバス→立山高原バス→立山ケーブルカーを経て富山地方鉄道立山駅に至る大ラウンドトリップをしたことがありますが、思い返せばそれ以来ですから、宇奈月駅に降り立つのも本当にひさしぶりです。
▲黒部峡谷鉄道本線きっての峻険な谷に架かる後曳(あとびき)橋をゆく上り列車。かつて入山者があまりの谷の深さに後ずさりしたことから“後曳”と名づけられたという。高さ60m、長さ64mのアーチ鋼橋で、画面左へR21.5mの急カーブ(同線最急曲線)を曲がって黒薙駅に到着する。'07.4.29 黒薙
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kurobe8n.jpg今年は例年になく雪解けが早く、春の訪れとともに部分開通をくりかえして全線開通にいたる黒部峡谷鉄道も4月28日に全線開通、訪れたのはその翌日でした。
ところで、鉄道誌編集者としても、またナローゲージャーの端くれとしても、申しわけない思いでいつも心の隅に引っかかっているのがこの黒部峡谷鉄道です。というのも、世界的に見ても稀有なスケールのナローゲージ鉄道、しかも営業鉄道であるにも関わらず、趣味の世界ではどうも冷遇されているような気がしてならないからです。一日に20往復以上の列車密度の2フィート6インチ営業鉄道、在籍車輌数は350輌近く大手を除けば私鉄最多、しかも全列車が機関車牽引(!)というのに、誌面に登場する機会も少なく、私鉄ファンはもとより、ナローファンの話題にのぼることさえあまりありません。改めて懺悔してしまえば、RM本誌にしても、「※ただし黒部峡谷鉄道を除く」と脚注を付して“逃げて”しまうことが少なくなくないのですから、反省しきりです。
▲黒部川に寄り添うように走る。近年は韓国や台湾からの団体客が急増しているそうで、この日も多くの海外観光客の姿が見られた。'07.4.29 森石ー柳橋
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▲車窓から残雪の立山連峰をのぞむ。沿線すべてがシーニックポイントといっても良い黒部峡谷鉄道だが、車窓展望ではなく列車の写真を撮影しようとすると意外にポイントは少ない。'07.4.29 森石ー黒薙

kurobe4n.jpg黒部峡谷鉄道がいまひとつファンの話題になりにくい要因のひとつが、撮影のしにくさにあるのかも知れません。屈指のロケーションの中を走りながらも、いざ撮影しようと思うとポジションはほとんど数箇所に限定されてしまいます。というのも並行道路がまったくないためで、しかも10駅あるうち一般客の下車が認められている途中駅は黒薙と鐘釣の2駅のみ。結局のところ列車写真が撮影できるのは宇奈月を発車したところに架かる有名な新山彦橋や、黒薙駅ホームに隣接する後曳橋程度ということになります。
▲新緑の中を絶妙な曲線を描いて進む762㎜ゲージの軌道…ただよく見ると架線がない。そう、これがほとんど知られていない黒薙支線の軌道。'07.4.29
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▲黒薙支線は黒薙駅構内の本線からいきなり分岐して隧道(画面左)へと入ってゆく。かつては黒薙温泉の利用客はトンネル内を通行できたが、現在は急な階段を経て20分ほど山歩きをしなければならない。右はその黒薙温泉の露天風呂。'07.4.29

kurobe7n.jpg宇奈月起点6.5kmに位置する黒薙駅はそれこそ文字通りの“峡谷”にへばりつくように設けられた小駅で、交換設備はなく片面ホームと待合室だけの簡素な設備です。なぜこんな業務駅のような所が乗客扱いをしているのかというと、駅から20分ほどのところに「黒薙温泉」という歴史ある温泉があるからです。あまり知られてはいませんが、実は宇奈月温泉の湯もすべてパイプラインでこの黒薙温泉から供給されており、その量たるや100℃のお湯が1分間に2000リットル! 今もって列車でしか訪れることのできないたった一軒のこの温泉宿目当てに黒薙駅に降りる人は少なくありません。
▲黒薙温泉から黒薙支線をのぞむ。画面左下が露天風呂で、画面中央の山腹に黒薙支線の路盤が見える。運が良ければこの露天風呂につかりながら“ディーゼル機関車の牽くナロー列車”が遠望できるはず。'07.4.29
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ところでこの黒薙駅にはもうひとつの役目があります。それはここから分岐する黒薙支線のジャンクションとしての役割です。この支線は黒部川の支流・黒薙川の上流にある黒薙第二発電所への資材運搬のために設けられた非電化線で、現在でも週に数回ディーゼル機関車の牽く専用列車が行き来しているそうです。

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