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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2007年4月23日

『軽便追想』ふたたび。

tuisou1n.jpgちょうど十年前の春に初版を出版し、たいへんなご好評をいただいた高井薫平さんの『軽便追想』をこのたび再版いたしました。再版と言っても初版は発売直後に売り切れとなってしまい、半年後には再版しておりますから、正確には第三刷ということになります。現在は慶應義塾大学の鉄道研究会OB会=鉄研三田会の会長をお務めで、本誌増刊『国鉄時代』でも「私鉄めぐりの旅すがら」を連載いただいている高井薫平さんは、古くから知られた軽便鉄道ファン。本書は昭和20年代後半からの十年あまり、全国に残された軽便鉄道を訪ね歩かれた、まさに情熱の記録です。

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本書には、戦後残った軽便鉄道としては、赤穂鉄道、大分交通豊州線、鞆鉄道、そして士別軌道を除く下記20社22線のありし日の姿が、高井さんならではのあたたかいカメラアイで綴られています。落ち着いたダブルトーン印刷とあいまって、軽便ファンの皆さんにとってはまさに時代を超えた座右の一冊と称せましょう。
▲本書の「花巻電鉄」の項より。大判の誌面にダブルトーンの美しい写真が映える。

〔掲載路線〕
根室拓殖鉄道、十勝鉄道、花巻電鉄、小坂鉄道、仙台鉄道、仙北鉄道、日本硫黄沼尻鉄道、九十九里鉄道、草軽電気鉄道、栃尾電鉄(越後交通栃尾線)、頸城鉄道、静岡交通駿遠線、遠州鉄道奥山線、三重交通三重線・北勢線・松坂線、尾小屋鉄道、三井鉱山神岡鉄道、下津井電鉄、両備バス西大寺鉄道、井笠鉄道、日本鉱業佐賀関鉄道、(付・木曽森林鉄道)

tuisou3n.jpgまえがきにもお書きになっていますが、実は高井さんのこの軽便行脚の根底には模型製作がありました。「なめとこ軌道」と名づけられた高井さんの模型鉄道は昭和30年に開業、TMS誌上でその名をご記憶の方もおられるのではないでしょうか。以後その“心象スケッチ”(まえがきより)のために夜行を乗り継ぎ、北海道から九州までをくまなく回られることになります。ほとんど情報もなく、なによりも旅行自体が今日では考えられないような苦難を伴っていた時代だけに、その情熱には改めて胸打たれる思いです。
▲本書収録の「軽便」分布図。写真は軽便行脚をともにした高井さん愛用のカメラとレンズ。
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ところで以前このブログでもご紹介したように、ここ十年ほどでこの時代の高井さんのネガは急速に加水分解現象に襲われ、今日ではプリントはおろかスキャニングするのも困難なものが少なくありません。それだけに本書の再版を手にすると、あの時、印刷用原画として紙焼きを作っておいて良かった…そんな感慨にもとらわれます。

『軽便追想』
・A4判変形224ページ/ダブルトーン印刷/上製本カラーカバー
・定価:5000円(税込)