鉄道ホビダス

肥薩線視察記。(上)

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先週は熊本県球磨地域振興局のお招きで、肥薩線の視察および肥薩線開通100周年記念事業意見交換会に行ってまいりましたので、その様子をお伝えしてみることにしましょう。
▲あの大畑駅でエンド切り替え中の1255D「いさぶろう3号」。右側には人吉球磨地域特有の加久藤溶結凝灰石を積み上げた給水塔の遺構が見える。'07.3.7 大畑

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▲熊本駅で発車を待つ1071D「九州横断特急1号」(左)。別府から日豊・豊肥・鹿児島・肥薩線経由で人吉を目指す。右はすでに一部区間では完成間近となっている熊本付近の九州新幹線高架橋。'07.3.7

現在ではいちローカル線のイメージが強い肥薩線ですが、建設当時はこちらが鹿児島本線で、1909(明治42)年11月21日に未開通だった人吉~吉松間が完成し全通を果たしました。ただ、これは肥薩線(旧鹿児島本線)という地方線区の全通を意味するだけでなく、青森~鹿児島間(関門間は航路)の、いわば日本縦貫鉄道の全通をも意味していました。その肥薩線が再来年開通100周年を迎え、さらにそのほぼ一年後の2011(平成23)年春には九州新幹線博多~新八代間が開業し、これまた八戸~鹿児島間の日本縦貫新幹線鉄道が全通するとあって、地元・熊本県は今からさまざまなプロジェクトを立ち上げようとしています。

IMGP9805nn.jpgすでに発表となっているJR九州による58654号機の修復もこの肥薩線開通100周年記念事業を見据えてのことで、「川線」と通称される八代~人吉間はこのハチロクの運転によって一躍脚光を浴びるに違いありません。その一方で「山線」と称される人吉~吉松間は、かつて「日本三大車窓」に数えられたにも関わらず、九州新幹線部分(新八代~鹿児島中央間)開通後はいよいよ利用客が減少し、何らかの活性化対策が不可欠な状況に追い込まれてしまっています。
▲沿線に菜の花が咲き乱れる八代~人吉間の通称「川線」をゆく1071D。日本三大急流とされる球磨川に寄り添うように走る。'07.3.7

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そこで熊本県球磨地域振興局ではこの「山線」を含めた人吉球磨地域の鉄道の魅力をもう一度見直してもらおうと、今回の視察と意見交換会を催すこととなったわけです。興味深いのは従来のイベント性の強いプロジェクトと異なり、肥薩線にまつわる産業遺産・近代化遺産の見直しを大きな柱に据えている点で、スイッチバックやループ線から機関庫、転車台にいたるまでを、大きな意味での鉄道博物館と捉えてプロジェクトがスタートします。
▲蒸機時代は重装備D51の咆哮が絶えずこだましていた大畑スイッチバックも、今ではすっかり静まり返ってしまっている。'07.3.7 大畑

IMGP9842nn.jpg私が肥薩線山線を訪れるのは1972(昭和47)年以来ですから実に35年ぶり。あれだけ煙の絶えなかった吉松機関区がすっかり更地になってしまっているのに衝撃を受けましたが、それ以上に驚いたのは大畑ループの変貌ぶりです。もちろん線形も変わっていなければ沿線に建物ができたわけでもないのですが、とにかく“展望”がきかなくなってしまっています。ひとえに樹木が大きくなったことと、線路脇のブッシュなどが整備されていないことによるのでしょうが、これには少々がっかりでした。一緒に参加した大手旅行会社のマネージャーも同様の感想で、視察翌日に行われた意見交換会でも懸案事項として取り上げられることになります。
▲古き佳き面影を残す木造の大畑駅本屋。大畑・矢岳・真幸と3駅に残る木造駅舎も今後の利活用が期待される。'07.3.7 大畑

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▲標高1700mの韓国岳を中心にえびの高原から京町温泉街を見渡すシーニックポイント。「いさぶろう・しんぺい号」はこういった見所では減速のうえ車内放送で解説をしてくれる。ちなみにこの日は珍しく桜島まで遠望することができた。'07.3.7 真幸-吉松

エスコート役を務めてくださったJR九州によれば、昨年度の「山線」の平均乗降客数は一日あたり大畑7名(普通7・定期0)、矢岳16名(普通9・通学定期7)、真幸10名(普通10・定期0)とかなり深刻です。観光列車「いさぶろう・しんぺい号」の運転などJRもてこ入れ策を講じてはいるものの、九州新幹線全通後はさらに状況が悪化することも懸念され、開通100年を迎えようとする肥薩線は今まさに正念場に立たされています。

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2007年3月   

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