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“「SL甲組」の肖像”が単行本になって登場。

slkoukumi1n.jpgご好評をいただいている椎橋俊之さんの連載“「SL甲組」の肖像”がいよいよ単行本になります。2003(平成15)年2月号(N0.233)よりスタートしたこの連載は、「甲組」と呼ばれた腕利きの機関車乗務員へのインタビューをもとに、戦後から高度経済成長期にかけて日本の鉄道がどう守られ、運転されてきたのかを再発掘しようという試みです。思えば第一回の取材は今から5年前の2002(平成14)年5月14日、盛岡機関区からのスタートでした。あの奥中山で三重連を操った「甲組」の皆さんはすでに70代以上。真冬も信号確認のため窓から身を乗り出さざるをえない乗務環境から、今日でも左肩に故障を抱えている方が少なくなくありません。それでも蒸気機関車に乗務していた時代の話ともなると、まるで堰を切ったように貴重な証言が飛び出し、なおかつ皆さん口を揃えて、苦労は多かったものの、やり甲斐と誇りに満ちていた「甲組」時代を懐かしんでおられたのが印象的でした。

koukumi2ntobira.jpg表題こそ「SL甲組」を名乗ってはいますが、連載では蒸気機関車区のみならず、電気機関車を受け持つ機関区もたびたび取り上げています。今回の単行本化に際して収録した「東京機関区」もそのひとつ、いや最右翼と呼べるもので、きりりとネクタイをしめて「はと」や「つばめ」のマスコンを握る姿は、全国の機関車乗務員にとっても憧れの的だったに違いありません。東京区に限っては、「甲組」の上にさらに選りすぐりの乗務員のみがノミネートされる「特急組」があり、機関士、機関助士それぞれ6人の合計12人で4交番を回していたといいます。「はと」の回送時、有楽町手前の東京駅場内信号で停められると、幕間の日劇の踊子たちが機関車に向かって一斉に手を振ってくれる…純白の手袋をはめた“特急機関士”が憧れの象徴だった時代のそんな逸話も心ときめくものがあります。
▲単行本『「SL甲組」の肖像』より盛岡機関区(宮古機関区)。

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すでに連載は39回を数えておりますが、今回の単行本第一弾では6機関区1私鉄を収録いたしました。ラインナップは奥中山三重連の盛岡機関区、C53からD52まで山陽本線西部の守り神だった小郡機関区、日本一の重装備D51で大畑ループに挑んだ人吉機関区、花の東海道の看板・東京機関区、本州最北端を護る青森機関区、石炭産業とともにあった夕張鉄道、そして国鉄蒸機終焉の地・追分機関区と、どれも読み応えたっぷりです。
▲単行本『「SL甲組」の肖像』より「はつかり奥中山に挑む」(上)と「山陽本線のダイヤを護る誇り」(下)。

今回の単行本化にあたっては連載の再録にとどまらず、各区それぞれに資料等を追加収録するとともに、取材秘話も付け加えております。映画「大いなる旅路」のモチーフにもなった山田線雪崩遭難事故の際に実際に乗務されていた副機関士・前田悌二さんの手記は読後涙がとまりませんし、東京機関区・石田丑之助さんの「特急列車運転の“こつ”」は、アナログな時代だからこその技量と研鑽が垣間見られて、これまた心を打ちます。

koukumiatotobira3n.jpgこの『「SL甲組」の肖像』第一巻、来週中には書店店頭に並ぶはずですので、どうかぜひお買い求めいただき、「甲組」の“矜持”に触れていただければと思います。そう、どの機関区でお話を伺っていても、まるで申し合わせたようにOBの皆さんが口にする言葉は「恥」でした。機関車乗務員としての「恥」、甲組としての「恥」、そして国鉄マンとしての「恥」…指示されたからとか、叱責されるからとかではなく、自分の仕事に対する“矜持”こそがレギュレータを引かせ、ブレーキ弁を扱わせ、ひいては事故を未然に防ぎ、定時運行を確保してきたに違いありません。前述の「特急列車運転の“こつ”」のなかで石田さんが、同じ定時でも自分の納得できる運転が出来た時は「定時」の喚呼も思わず声を大とし、逆に納得のゆかない時はどことなく声も張りがなく「うら恥ずかしい」と書かれていますが、まさにこういった思いこそが日本の鉄道を、いや日本そのものを支えてきた牽引力だったに違いありません。

『「SL甲組」の肖像』 第一巻
(A4版変形=本誌同寸・244ページ)
定価2800円(税込)
※3月22日発売

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