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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2007年3月24日

西濃鉄道再訪。

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▲乙女坂駅にほど近い石引神社の境内を横切る市橋線の線路。かつては「B6の宮参り」として知られたポイントだが、現在でも現役で列車が行き来しているのがうれしい。もうしばらくたてばあたりは満開の桜に彩られるはず。'07.3.20

先日、西濃鉄道をのぞいてきました。“のぞいてきた”というのも、大阪へ往復する道すがら、ほんのわずかの時間立ち寄っただけですから、腰を据えて観察してきたわけではありません。ただ、幾度となく訪れているこの小さな貨物専業鉄道は、なぜかいつの時代にも心の片隅で気になる存在でした。

seinou3nn.jpg今から12年前、『RM MODELS』の月刊化とともにスタートを切った連載『模「景」を歩く』の第一回取材地に選んだのも、ここ西濃鉄道でした。旅客設備こそないものの、JR線との接続、昔ながらの機関区、各種の貨物施設、そして昼飯(ひるい)線のスイッチバックと、狭い範囲に模型的要素が凝縮されており、新しくスタートを切る連載の意図するところを実感として知っていただくうえにも最適と考えたからです。
▲JRの美濃赤坂駅はかつての栄華を物語るように広い構内を持つ。木造の駅舎も魅力的。'07.3.20

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今では全国的を見回しても指折り数えるほどになってしまった貨物輸送を行っている「私鉄」である西濃鉄道ですが、現在の運転区間は美濃赤坂?乙女坂間1.3kmのみ。しかも運転は平日の3往復(矢橋工業乙女坂工場出荷、JR・名古屋臨海鉄道経由で新日鐵名古屋製鉄所へ)しかないとあって、当然ながら時間のない今回は“列車”の姿を拝むことはできませんでした。
▲一面のみの旅客ホームの突き当たりに駅本屋がある。待合室にはいつの時代のものだろうか、磨きこまれた年代物の木製ベンチが置かれている。'07.3.20

seinou4nn.jpg西濃鉄道は今から80年前(1927年=昭和2年)に設立された由緒ある私鉄です。大垣市の背後に聳える金生山の石灰石を輸送することを主目的とし、起点の美濃赤坂から市橋へいたる「市橋線」(2.6km)と、難読の「昼飯(ひるい)線」1.9kmを擁していましたが、先述のように、現在では市橋線の一部区間、乙女坂までしか使用されていません。『模「景」を歩く』で取材した時点では、列車の運行こそないものの、まだ両線とも全線に渡って線路や周辺設備、建物が残っており、ことに特徴的な昼飯線美濃大久保駅のスイッチバックもしっかりと観察することができました。
▲美濃赤坂駅構内を終端部から見渡す。西濃鉄道市橋線は画面左端へとのびてゆく。'07.3.20

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▲給水塔の土台も残り蒸機時代と変わらない機関庫の表情。左側の側線には廃車となったDE10が留置されている。この側線の手前から画面左へと分岐してゆくのが昼飯線。画面右はJRの本線で、画面奥が美濃赤坂駅旅客ホームとなる。'07.3.20

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▲列車運行の終点である乙女坂駅構内。戦前は旅客営業を行っていたこともあるというが、現在では駅といっても側線があるのみ。'07.3.20

seinou22n.jpg市橋線の方は乙女坂の少し先の猿岩駅に簡易な車止めが設けられ、その先の終点市橋まではほとんど線路が確認できないような状態となってしまっています。市橋駅も構内に線路は残るものの、周辺建物も撤去が進んでしまっており、かつての貨物駅の面影はすっかり薄れてしまいました。一方の昼飯線はすでに廃止扱いとなっており、美濃大久保から先はまったく線路が確認できないほどに変貌してしまっています。
▲市橋駅構内の柵に用いられている軽レールを発見。断面から6kg/mレールと思われる。かつてホッパー上で使用されていた軌道のものだろうか…。'07.3.20

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▲かつて旅客駅があったという赤坂本町付近の線路を家並みの間から垣間見る。『模「景」を歩く』の出発点がこの西濃鉄道であったことを改めて思い起こさせるシーン。'07.3.20

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▲おなじく赤坂本町付近の表情。板塀の続く伝統的な家並みも一見の価値がある。'07.3.20

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▲『模「景」を歩く』の表紙にもなっている昼飯線の踏切警手小屋はかろうじて残っていたものの、すでにワイヤー巻き上げの踏切設備はすっかり姿を消してしまいっていた。線路敷そのものが更地となってしまうのも時間の問題かもしれない。'07.3.20

このようにほとんどトワイライトゾ?ンと化しつつある沿線ですが、それでもわずかな区間ながら“現役”として線路が使われているのは嬉しいかぎりです。ことにB6の時代から西濃鉄道の代表的シーンとして知られ、『模「景」を歩く』のオープニング扉にも使った石引神社の境内を横切る光景が今もって健在なのは感慨深いものがあります。もうすぐ参道の桜も満開。きっと素晴らしく魅力的なシーンが展開するに違いありません。