鉄道ホビダス

年のはじめはドコービル詣で。

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あらためまして、新年あけましておめでとうございます。どうか本年も、RMと小ブログ「編集長敬白」をかわらぬお引き立てのほどお願い申し上げます。
▲荒川知水資料館二階「荒川を知るフロア」の一角、青山士コーナーにひっそりと置かれた正真正銘の“ドコービル”。'07.1.6

さて、新年早々でもありメジャーな話題をと思っていたのですが、のっけからかなりマニアックな題材となってしまうことをお許しください。実は昨年ぜひ訪問しようと思いながら、あまりの近さについつい後回しになり、年を越してしまった案件がありました。東京都北区の赤羽駅にほど近い「荒川知水資料館」に保存されているドコービル製の“ナベトロ”がそれです。

IMGP9210n.jpgあえてご紹介するまでもないかとは思いますが、ドコービルとはフランスの農園主ポル・ドコービルが1875年に発案した移設式軌道システムのことをさします。のちにこの移設式軌道システム=軌匡(ききょう)はそれこそ世界各地に伝播し、鉄道聯隊のような軍用軌道をはじめ、土木用、鉱山用、林業用等々ありとあらゆるインダストリアル・ナローゲージとして大発展を遂げます。言うなれば、恒久軌道としてのナローゲージが標準軌からダウンサイジングしてきたのに対し、ドコービル・システムはパリ郊外の農場に突如として“降臨”したわけです。十数年前、私はこの聖地=ドコービル家を訪ねてパリ郊外を旅したこともあり、ドコービルにはひとかたならぬ強い思い入れがあります。
▲いわゆる「一合積み」(0.6立方メートル)と呼ばれる“ナベトロ”としては最小サイズに属する。牽引用連結器は持たず手押し用。'07.1.6

IMGP9182n.jpg「荒川知水資料館」(愛称:amoa)は国土交通省荒川下流河川事務所と北区が、荒川に関する資料の収集展示と情報発信基地として1998(平成10)年3月に開館したもので、荒川放水路の岩淵水門横に位置します。この岩淵水門(旧)は明治期の高名な土木技術者で荒川放水路の父と呼ばれる青山 士(あおやま あきら)が工事責任者として施工したもので、この工事に際して使用された機材として、青山 士を顕彰するコーナーの一角に件のドコービル製“ナベトロ”が展示されているというわけです。
▲恐らく百年近くの歳月を経ているわりには極めて状態は良い。この端面の“ナベ”の左右幅は実測で1070㎜、台枠幅は同じく710㎜であった。'07.1.6

IMGP9205n.jpgただ、説明展示パネルをよく見ると、確かに岩淵水門工事で使用されているドコービル製同形車の写真はあるものの、欄外に「信濃川大河津資料館」なる文字が…。聞けば何とこの“ナベトロ”は信濃川大河津資料館から借用して展示しているものだというではないですか。てっきり荒川由来のものとばかり思っていたので、これにはちょっとびっくりです。荒川放水路工事は1911(明治44)年?1930(昭和5)年、内務省土木局が信濃川改修工事に着手したのが1876(明治9)年ですから、この“ナベトロ”恐らくは百年ほど前に作られた物と思われます。
▲台枠側面にかろうじて残る“DECAUVILLE”の銘。小さな、たかが“ナベトロ”ながら、ナローゲージャーにとってはまさに「ご本尊」である。'07.1.6

いずれにせよ、現在確認されているものとしては、わが国に残るドコービル製車輌として唯一無二の存在で、姿形こそたかが“ナベトロ”なれど、その価値は計り知れないと思われます。ちなみにドコービル社はあらゆる部材を品番管理しており、このメーカー形式「B112」と呼ばれる軸箱を持つナベトロは、昨年中国大陸でも同形品が“出土”し、1905年から鉱山で使われていた歴史的遺産として保存されたと伝えられています。

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▲軸受け部には“DECAUVILLE AINE PETIT BOURG B112”の陽刻が読み取れる(左)。プチ・ブールはドコービル社の所在地、B112は軸箱の品番。'07.1.6
荒川知水資料館案内図(右)
■荒川知水資料館
〒115-0042 東京都北区志茂5-41-1
http://www.ara.go.jp/amoa/
・JR赤羽駅東口より徒歩20分
・9:30?16:30(原則として月曜日休館)
・入場無料

※当初“このメーカー形式「B112」と呼ばれるナベトロ”と記述してアップいたしましたが、直後に今井 理さんより「B112」はナベトロそのものの品番ではなく軸箱の品番であるとのご指摘をいただきました。ここに訂正させていただくとともに、今井さんにお礼申し上げます。

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