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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2007年1月18日

丹羽さんの新作エッチング・キット。

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丹羽雄二さんから新作のエッチング・キット「森製作所の内燃機関車4・5トン」が送られてきたのは昨年暮れのことです。丹羽さんは社会システム工学・安全システムの専門家として大学で教鞭をとられる傍ら、古くからのナローゲージモデラーとして内外に知られていますが、数年前から“SEA Lion工房”の名でHOナローの精緻なエッチング・キットを頒布されてこられました。
▲いかにもな雰囲気を背景にした森製作所5tの完成サンプル(合成写真)。こうしてみるとその大きさは実感できないが、恐ろしく小さい。P:丹羽雄二

mori2n.jpg第4作目となる今回のエッチング板のプロトタイプは、1933(昭和8)年から戦後にかけて森製作所が生産し続けた同社のベストセラー・4t機。ほぼ同形態で台枠形状の変更・肉盛りによって5t機にもなる汎用機です。丹羽さんは拙著『森製作所の機関車たち』所収の写真と図を手がかりに原図を起こされたそうですが、現車は全長3mにも満たず、ホイールベースにいたっては800㎜とこの手の小型内燃機関車としても異例の小ささで、ソリッドモデルならともかく、HOスケールでの動力化はほとんど不可能に思われます。
▲前作「明延の赤金号」(左)とともに今回の森製作所4t(5t)エッチングキット(右)。フロッピーデスクほどのエッチング板にA4判2枚にびっしりと書かれたインストラクション・シートが添付されている。

mori3n.jpgその“不可能”にあえて挑戦され、シンプルながら意表をついた動力化を提案されるのも丹羽さんならではで、今回もインストラクション・シートのなかで“動力化のヒント”として「簡易スプリットシャシのスクラッチ方法」を懇切丁寧に説明しておられます。ただし、軌間9㎜とする場合は車体幅の関係から「モーターツールで車輪厚を0.8㎜以下にまで削り込む」など、安楽モデラーにとっては気の遠くなるような文言が並んでおり、ハイクオリティーながらこのエッチング板が“市販”に馴染まない理由がわかるような気がします。
▲エッチングの精度は極めて高い。拡大してみても主台枠側面の陽刻までくっきりと再現されているのがわかる。
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MAN3-22n.jpg丹羽さんは『RM MODELS』 分離以前のかつてのRM本誌上で「知られざるナローゲージワールド ?コテージインダストリーとガレージキットの世界?」(RM1993年2月/113号?5月/116号)と題して、連載で英国のガレージメーカー事情を初めてわが国にご紹介下さっていますが、その当時はまさかご自身が“送り手”の側に回ろうとは思ってもおられなかったのではないでしょうか。ただその後、かの地の“Narrow Gauge & Industrial Railway Modelling Review”誌などに簡易スプリットシャシを使ったスクラッチモデルを発表されてゆくなかで、むしろ英国のお仲間から“頒布”を希望される声が高まり、いつしか知る人ぞ知る“送り手”のお一人となっておられます。
▲第2作目となった大阪営林局山崎営林署「万ヶ谷」の奇怪な自家製内燃機関車(合成写真)。P:丹羽雄二

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▲SEA Lion工房の冠でリリースされたこれまでのラインナップ。奥が明延の「赤金」、加藤3t、手前が森4t、5t、そして「万ヶ谷」。いずれ劣らぬマニアックなラインナップである。P:丹羽雄二

Alan_Keef.n.jpgそれにしても丹羽さんのエッチング板を拝見すると、その精度の高さに改めて驚かされます。もちろんコンピュータ化された今日では烏口で原図を描いていた時代とは作業フローそのものが大きく異なりますが、20年ほど前までは、両面抜きのズレに象徴されるようにエッチング板には何かいかがわしい匂いが付きまとっていました。
あるお店で買ったエッチング板を「寸法が合わずに組めないんですけど…」と持っていったら、「え、本当に組もうとしたの! エッチング板は組むものじゃなくて完成時を夢見て見て楽しむものだよ」と諭されたという笑い話が伝わるような時代でした。丹羽さんの計算されつくした高精度のエッチング板を前に、隔世の感を抱くとともに、今度は自分の目の方が上がってしまって組めそうもない悲運を嘆くことしきりです。
▲丹羽さん最初のエッチング板で英国の“Railway Modeller”にも取り上げられたのがAlan-KeefのOスケールDL。これはそれを1/87にスケールダウンしたもので、小ブログの連載「アイルランドに欧州最大のナローゲージ網を訪ねる」で紹介したミッドランド・アイリッシュ・ピートがプロトタイプとのこと。P:丹羽雄二