鉄道ホビダス

「ばんえい競馬」存続の危機を耳にして。

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このところ新聞・テレビで「ばんえい競馬」存続の危機がたびたび報じられています。岩見沢・旭川・北見そして帯広と、道内4競馬場で開催されてきたこの北海道ならではの競馬が、採算の悪化から岩見沢・旭川・北見と次々と廃止、ついには現在開催中の帯広競馬場を残すのみとなってしまったというのです。私はギャンブルどころか宝くじさえ買いませんので、当然ながら競馬場とも縁がないのですが、なぜかこの「ばんえい競馬」にだけは行ったことがあります。しかも通常は絶対に入ることのできない馬場にまで入れてもらいました。それというのも「鉄道」見たさで、「ばんえい競馬」の置かれた厳しい状況を慮ると少々不謹慎ではありますが、今日はこの“ばんえい競馬軌道”(?)のお話をしてみたいと思います。
コースでは凄まじい迫力でレースが繰り広げられているが、何やら手前には機関車らしき異様な物体が…。'94.8.7 岩見沢競馬場

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▲ゴールを決めた馬たちは“そり”を曳いたまま次々と“列車”の待つプラットホームへとやってくる。'94.8.7 岩見沢競馬場

banei3n.jpgそもそもなぜ競馬場に軌道が敷設されているのか…そのわけは「ばんえい競馬」の「ばんえい」という言葉に隠されています。「ばんえい」は漢字で書くと「輓曳」、つまり騎手が馬に乗ってスピードを競う競馬ではなく、馬が“そり”を曳く力と速さを競う輓馬レースです。最低500kg、最大1tの“そり”を曳いた10頭の馬たちが、小山のような2ヶ所の障害が設けられた200mのコースで勝敗を競うのですが、問題はゴールしてからのこの“そり”です。いかんせん最大1tの重量ですから次のレースに備えてスタート地点に戻そうにも大事です。そこで登場するのが、この“そり”を回送するための軌道というわけです。
▲“そり”を無蓋車(?)上に解放した馬たちはようやく身軽になって「単機回送」してゆく。'94.8.7 岩見沢競馬場

banei5n.jpgいったいいつ頃からこの“ばんえい競馬軌道”が使われているのかはわかりませんが、とにかく開催される4競馬場にはことごとく軌道が敷設されています。いずれも馬場の裏側、つまり観覧スタンドからコースを挟んで逆側にあり、しかも植栽などで観客からは見えないように配慮されているため、なかなかその正体を見極めることはできません。
▲“ビリ”の馬も“そり”を載せ終わってようやく発車準備が整った。'94.8.7 岩見沢競馬場

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そんな状況なので、つぶさに軌道を見るには馬場に入れてもらうしかなく、十年以上前、意を決して「ばんえい競馬」を統括する北海道市営競馬組合に、軌道を見せてくれるよう頼んでみることにしました。最初はこちらがいったい何を言っているのかさえ理解していただけませんでしたが、結局、組合の担当者が立ち会う、レース中は絶対にコースには近づかない、競走馬には手を触れない…等々の条件で中に入れていただけることになりました。たしかに賞金の掛った真剣なレースですから、「機関車が…」などとわけのわからない輩が多少なりとも勝敗に影響するような所作をしようものなら一大事です。
▲コースと並行する軌道を推進でスタートラインへと戻る列車。天高く…人知れず競馬場にエンジン音が響く。'94.8.7 岩見沢競馬場

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▲これが岩見沢競馬場「無番」の正体。ベニア細工のような(もちろん鋼板製だが…)車体はもちろん手作りだ。'94.8.7 岩見沢競馬場

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▲スタート地点に戻った列車。自動車からの流用なのだろうか、正面には一応ヘッドライトとテールライトが備わる(左)。横向きのシートが窮屈そうに収まるキャブ(右)。'94.8.7 岩見沢競馬場

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▲ファイナルドライブはチェーンとスプロケット。それにしてもチェーンはちょっと弛み過ぎ?(左)。エンジンは日産の4気筒ディーゼルエンジンSD22(右)。'94.8.7 岩見沢競馬場

「ばんえい競馬」は4競馬場を巡回する形で開催されており、この時の会場は岩見沢。いったいどんな「鉄道」なのか実際に目にするまではまったくわからず、係の方に職員通路から馬場に案内していただいて初めてご対面…いや、とんでもないゲテモノ(失礼!)です。『トワイライトゾ?ン・マニュアル4』の表紙にもなっていますから見覚えのある方も少なくないと思いますが、とにかくなかなか衝撃的なスタイルではありました。ちなみに、4競馬場それぞれに「機関車」のスタイルは異なり、なかには旭川競馬場のように一応“メーカーもの”(日本車輌製UDL)を使っているケースもあるようですが、いまだにすべての「機関車」は解明されていません。

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▲新刊の『へんな乗り物』では旭川競馬場の“機関車”も紹介している。

北海道とは思えないほど暑い夏の日でしたが、厩舎で勧められてレースを終えた騎手の皆さんと一緒にご馳走になった麦茶の味が忘れられません。
今日現在の報道では、唯一残された帯広競馬場での「ばんえい競馬」は、民間企業の支援で単独存続の可能性が出てきたと伝えられています。公営競馬として60年、北海道遺産にも指定されているというこの「ばんえい競馬」の行く末を、陰ながら見守ってゆきたいと思います。

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