鉄道ホビダス

ナローゲージ・コンベンションの旅 (第6回)

レイアウトツアーのこと
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ナローゲージ・コンベンションの楽しみのひとつに「レイアウトツアー」があります。開催地周辺で我こそはと名乗りをあげたお宅のホームレイアウトを見に行くイベントで、私たち日本人にとっては実際に目にする機会のない彼の地のモデラーの“私生活”を垣間見れるめったにないチャンスでもあります。
▲どこまでが敷地なのか…広大な森の中にGゲージの巨大なレイアウトが広がる。これはもう「庭園」レイアウトなどというレベルをとっくに超えてしまっている。'06.8.23

DH000021n.jpgただ「ツアー」といっても誰かが連れていってくれるわけではなく、タイムスケジュール・ブックとともに渡されたレイアウトツアー・ガイドを見ながら自分でクルマを運転して「家庭訪問」せねばなりません。しかもこれがそう容易くはないのです。まずガイドブックの地図が毎回実に不親切、というかアメリカ人はあまり細かい地図を描き慣れていないらしく、まるで判じ物のようなマップです。幸いあちらのお宅はすべて「○○ドライブ○○○番」のように家屋番号がふられているので、最終的に間違えることはなさそうですが、例の“Freeze”を“Please”と聞き間違えて撃ち殺された事件もあり、住宅街をうろうろしているとちょっと緊張するのも事実です。
▲日本であればペンションかなんかに見えるログハウス調のグランフラテンさんのお宅。右手前に屋外ヤードの一部が見える。'06.8.23

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▲これが「レイアウトツアーガイド」。A4判40ページほどのこのガイドにはホームレイアウトの概要、公開日時、そして簡単なルートマップが掲載されている。

さて、今回は開催地が都市ではないため近隣の公開レイアウトも少なく、クルマで一時間以上かかるファーミントンやパゴサスプリングスまで含めて16軒ほど。それぞれ公開日時が決まっていますから、結局時間のやりくりがつかず、訪問できたのはデュランゴ郊外の1軒のみとなってしまいました。訪れたグランフラテンさんのお宅は例の判じ物のガイドブックによるとヘッドクォーターホテルからはクルマで30分とのこと。ところが地図を見る分にはとてもそんなに距離があるようには見えません。これは10分くらいで着くのではないの…とたかを括って走り始めたものの、これが走れど走れど辿り着きません。そのうち道路は簡易舗装になり、ついにはダートとなってしまいました。迷ったか、と思いきや、広大な森のなかになにやら時ならぬ駐車車輌の列が…。結局、まさに所要30分でお目当てのお宅に到着することができたのでした。いやはや、さんざんこき下ろしていたガイドブックもなかなか“正確”なのでした。

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▲正面の駐車スペース横のドアを入るとそこは工作室(左)。各種の工具に混じって、鴨居部の巨大な鋸のディスプレーが目をひく。右は室内にあるHOn3レイアウトに見入る訪問者たち。'06.8.23

ご主人のジムさんと奥様のドリスさんが運営(?)するのは“パインリバー・タッカービル&ノーサリー鉄道”と命名されたGスケールのアウトドアレイアウトと、7.6×4.2mのHOn3の屋内レイアウトです。なんと言っても圧巻はこの巨大なアウトドアレイアウトで、軌道延長約120m。すべて250番のアルミレールを使用して、レッドウッドの枕木にスパイクされています。着いた直後は実感が持てなかったのですが、周囲の森の中を見渡すと、まるで森に溶け込んでいるかのように敷き巡らされた線路に気づき圧倒される思いです。なかでも驚異的なのは全長7.6mにも及ぶ螺旋状のティンバートレッスルで、ここまでくるともう「庭園」鉄道などという規模ではありません。伺ったところでは、毎年降雪期前には全線を撤収し、また翌春に敷設しなおすのだそうですから、これまた尋常ではありません。

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▲森の中に縦横無尽に敷設されたGゲージトラックの中でも白眉はこのスパイラル・ティンバートレッスル。演出なのか現実なのか、焼け焦げて炭化した旧トレッスルの残骸が放置されているのも衝撃的! '06.8.23
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▲屋外の線路はレイアウトルームの裏手からこのトンネルを通って室内に引き込まれてくる。その日の運転が終わると、屋外の列車はすべて自走でこのトンネルを潜って室内のヤード(写真右)に戻ってくるという寸法。'06.8.23

緩い斜面状の森に建てられたログハウス調のお宅は、正面から見て右横に通用口があり、ここを入ると各種工具を揃えた工作室が待っています。さらにその奥がHOn3のレイアウトルームとなっていますが、驚いたことに斜面状の地形を巧みに利用して屋外のGスケールの線路が壁を貫いてこのレイアウトルームに入ってきています。室内から見るぶんには隠しヤードからのトンネルポータルのようにしか見えませんが、この貫通口を通って全ての車輌は屋内と屋外を行き来しているのでした。

DH000024n.jpgグランフラテンさんのお宅の公開は水曜日の朝9時から15時半まで。到着した時にはすでに終盤近くなっていたせいもあって、肝心のGスケールの車輌はほとんどがバッテリーフル消耗状態…残念ながら巨大ティンバートレッスルを走る姿は目にすることができませんでした。それでもご夫妻と大奥様は次々とやってくるエントラントの対応におおわらわ。奥様は屋外にしつらえたテーブルで自慢のレモネード(?)やらお菓子やらをふるまってくれていました。

ところで、ここでとんだ失敗をしでかしてしまいました。レイアウトツアーのお宅では入口に芳名帳が置いてあり、見学者はここに住所・氏名を書くのが一般的です。この芳名帳、次回地元にコンベンションが巡ってくるのが何十年後かわからないだけに、公開家族にとっては良き思い出のはずです。しかも東洋の島国からわざわざ見に来た人がいるというのは嬉しくなかろうはずがありません。そこで毎回あるものを用意しています。奥様に差し上げる小さな和紙の千代紙セットと筆ペンです。筆ペンはいったい何に使うのかというと、芳名帳に「漢字」で記帳しようというのです。「N.NATORI TOKYO JPN」に続けて彼らにとって神秘的に見える漢字で記帳するこのアイデアは、これまで各地で大好評をもって受け入れられてきました。そこで今回も意気揚揚と筆ペンを取り出して記帳しようとしたその時、ボタッとばかり墨が垂れてしまったのです! 思えばここは標高3300m、気圧の関係で筆ペンの墨がオーバーフローしてしまったのです。いやはや、ここで謝ってもせんないことですが、グランフラテンさんその節はたいへん失礼をいたしました。
▲WELCOMEボードに促されて工作室入口を入ると、そこはオーナーの趣味が凝縮した空間。工作台の上にはGスケールのグースが修理中。画面右の人が書き込んでいるのが問題の芳名帳である。'06.8.23

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