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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2006年9月23日

軽便鉄道模型祭に見る“情念”。

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今日は東京中野サンプラザで第2回となる「軽便鉄道模型祭」が開催されました。昨年池袋で行われて好評を博したのを受け、今年は中野サンプラザに会場を移しての開催です。
▲薄暮の併用軌道を家路につく人々を横目に、ガソリンカーが走り去ってゆく…今年は沼尻鉄道をフィーチャーしたモジュールが圧巻だった。

IMGP8851.jpgこの「軽便鉄道模型祭」はメーカーや媒体主導ではなく、「木曽モジュール倶楽部」をはじめとしたサークルが中心となって自主発生的にスタートしたものですが、開催2年目にしてその密度の濃さは尋常ではない域にまで達したといえましょう。今回、施設の関係から通路を挟んで左右2部屋に分かれて会場が設営され、ひと部屋がメーカーや個人出店のブース、もうひと部屋がモジュールレイアウトの運転会場と分かれましたが、一時はどちらも満員状態の大盛況でした。
▲「軽便モジュール倶楽部」のモジュールはストラクチャーも秀逸。さまざまなギミックが見る者を引きつける。

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▲一方、ますます磨きがかかるのは「木曽モジュール倶楽部」のモジュール。新作はほとんどがコード40の引き抜きウェザードレールをハンドスパイクしており、それにも関わらず走行は極めて安定している。
IMGP8858.jpgモジュールレイアウトは「軽便モジュール倶楽部」が今年のテーマに据えた沼尻鉄道を競作。メンバーが現地に赴いてイメージを培ったというだけあって、四季を表現したまさに沼尻らしいハイライトシーンが並びました。モジュールひとつひとつに目をこらして見てゆくと、あらゆるマテリアルを利用したシーナリーやストラクチャー製作の技法に唸らされます。とりわけ、いかにも日本的風景の中をゆく沼尻だけに、刈り取りの終わった田圃、線路脇のたわわに実った柿の木…等々といったシーナリーが実に秀逸で、日本の情景表現もここまで来たか、と実に感慨深いものがありました。
もう一方の雄「木曽モジュール倶楽部」は“助六作業線”の情景を中心にモジュールを拡張、こちらも今やモジュールの概念を超えて、圧倒的な密度と規模に成長しています。
▲集材機の音さえ聞こえてこそうな「助六」のワンシーン。植生の表現なども間違いなくトップレベルといえる。

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個人やサークルのテーブルも目をこらせば目をこらすほど、そのレベルの高さに唸らされます。これまでにも究極の“ミクロ”の世界に挑戦し続け、アメリカのかの『ガゼット』誌にも登場したことのある眞崎弘海さんは、サークルレイアウトの上にさりげなく新作のホイットコムを展示。紀ノ川堤防沿いの建設会社倉庫で発見され、『トワイライトゾ?ン・マニュアル12』で詳しくご紹介した機関車で、全長3mにも満たない超小型機です。この機関車をフルスクラッチで、しかもモーターを露出させることなく動力化…さすがです。しかも仕上げのメーキャップもばっちり決まっているから言葉がありません。
▲『トワイライトゾ?ン・マニュアル12』の巻頭でレポートしたばかりの紀ノ川堤防脇で発見されたホイットコムをスクラッチしたのは眞崎弘海さん。“ミクロ”の世界の達人だけにその仕上がりには脱帽。

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▲リヤカー屋台やアイスクリームケースに目一杯の遊び心を詰め込みながらも、スケールへの究極の拘りを見せるエコーモデルの新作アクセサリーたち。アイスクリームケースは発売中、屋台は間もなく発売予定とのこと。
IMGP8829.jpgミクロの世界といえば、アイスクリームケースやら昔風のコーラの保冷機やらの小物を陳列して目を引いていたのがエコーモデルさん。店主の阿部敏幸さんはほとんどの鉄道模型イベントに必ず顔を出されるだけに、会場におられても何の不思議もなく感じますが、お店としてこういったイベントに“出店”されるのは二十数年ぶり、実に稀有なことなのです。ご自身も高名な軽便ファンだけに、今回の会場の雰囲気にはたいへんシンパシーを感じられたようで、しきりにいいね、いいねと連発されていました。ところで近日発売のアクセサリー“新製品”はリヤカー屋台で、かわいいサンプルが並んでいました。おでんやらなにやら各バージョンができるキットとのことですが、そのスケール感たるやさすがです。「一見“食玩”みたいに見えるかもしれないけど、きっちりとスケールになっていて“食玩”とはまったく違いますから! それがエコーモデルの拘りです」と阿部さん。これまたさすがです。
▲めずらしくも出店されたエコーモデル店主の阿部さん。記念製品は午前中で売り切れてしまったという。

会場内の数多の車輌の中で一番度肝を抜かれたのは、新井一雄さんの日本輸送機(ニチユ)製バッテリー機関車です。プロトタイプは台枠側面に旧ロゴのウイングマークの陽刻を持つ2t機で、メーカー形式からFと通称される「折畳み型」。これは竪坑ケージ(エレベーター)で坑内に下ろす必要から、ケージに入る大きさに運転台部が折畳める(“F”はFold=折畳みのF)ように設計されたもので、現車は極小中の極小です。これをスケールモデルとして動力化しただけでも驚きですが、まだその先があったのです。「実はコレ、実際に折畳めるんですよ、やってみますか」…う?ん、まいりました。

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▲あっけにとられたのは新井一雄さんのニチユ製バッテリー機関車。洋白でスクラッチされた車体は究極の小ささ。しかも何と運転席部分が実物さながらに折畳める。これでは走行性能は期待できないだろうと思いきや、これが実にスムースに走るからさらに驚異的!

ちょうど一ヶ月前の今日は、アメリカのナローゲージ・コンベンションに参加していたわけですが、今回の「軽便鉄道模型祭」は、間違いなく彼の地のコンベンションと比肩できるまでに成長したと評せましょう。もちろんその規模や会期、実物とのタイアップやレイアウトツアーといったいわば横展開ではまだまだ発展途上といえるでしょうが、モジュールをはじめとした地面系の質の高さ、車輌工作の卓越さ等々は、決して優るとも劣らないものです。

そして何よりも、たった一日限りのあの会場に渦巻いていた物欲とは対極の“情念”はまさに国際レベルで、それこそが必ずやこの「軽便鉄道模型祭」をさらなるステージへと導く原動力となってくれるに違いありません