鉄道ホビダス

ナローゲージ・コンベンションの旅 (第11回)

サウンド・トラックス社を訪ねる。
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「せっかくですからサウンド・トラックスさんの工場見学に行きませんか」とご一緒した関水金属の加藤 浩社長からメールでお誘いをいただいたのは、出発2週間ほど前のことでした。なんでも7月に行われたNMRAコンベンションの際に、加藤さんが8月にプライベートでデュランゴのナローゲージ・コンベンションに行く…と話をしたところ、ウチの会社はデュランゴにあるので是非寄ってくれとお誘いを受けたのだそうです。加藤さんは永年KATOブランドの現地法人KATO USAの社長さんも務めておられますので、サウンド・トラックス社としても世界に冠たる鉄道模型メーカーKATO(彼らの発音ではケィトゥ)の社長さんを是非お招きしたかったのに違いありません。
▲共同経営のサウンド・トラックス社には“社長室”に相当する部屋がふたつある。こちらはセールスとマーケティングを担当するナンシー・ウォークマンさんの“社長室”。お土産にお渡したRMM誌をしきりに“Beautiful”と賞賛してくれた。'06.8.24

soundtraxx2.jpg驚いたことに、サウンド・トラックス社は私たちが宿泊しているホテルからクルマでものの10分ほどのところにありました。“Tech Center Drive”などという街路名からして近年開発された工業団地のようですが、日本のそれを想像するとまったく別物。大自然に抱かれて工場とも思えない小綺麗な建物が“点在”するといった感じでしょうか。せっかくの機会だからとお招きに甘えて集まった“日本人チーム”は合計7人。女性経営者のナンシーさんにご案内いただいて工場内をつぶさに見せていただきました。
▲デュランゴ郊外の工業団地といったエリアにあるサウンド・トラックス社だが、広々として周囲の環境は抜群。'06.8.24

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DCC(デジタル・コマンド・コントロール)システムとデジタル・サウンド・デコーダーの組み合わせによって、かつてなしえなかった高度なサウンドシステムを構築しようという試みは、これまでにも多くのメーカーによって製品化されてきました。そんな中、サウンド・トラックス社が昨年発表した新システム“TUNAMI”(語源は日本語の「津波」)は、実に20種類以上のサウンドを使い分けられる最新テクノロジーです。
▲自社のサウンドデコーダーを組み込んだ機関車たちがディスプレーされた本社入り口(左)と、ナンシーさんの“社長室”ベランダからの眺望(右)。ちょうど野生のリスが遊びにきていた。'06.8.24

soundtraxx5.jpgサウンドはすべて実車から採録された音源をもとにデジタル化されたもので、その細かさは驚異的です。現在レディーメードではD&RGW鉄道Kクラス(ミカド)や3トラック・シェ-などいくつかのカテゴリーがリリースされていますが、一例をあげると以下のような芸の細かさです。
Steam Decoders Function Key Effect ※Fはファンクションキー
F0 Headlight/Backup Light/Dynamo
F1 Bell
F2 Whistle
F3 Short Whistle
F4 Steam Release
F5 FX5 Output
F6 FX6 Output
F7 Dimmer
F8 Mute the Sound
F9 Water Stop
F10 Injectors
F11 Brake Squeal/Release
F12 Coupler Clank
…etc.
ブラスト音などという生易しいものではなく、インジェクタ作動音からブレーキ音、果ては連結器のナックルを外す音まで再現され、例えばヘッドライトを点灯すると発電タービン音も出るといった“小技”もふんだんに盛り込まれています。DCCと組み合わせることによって、コンプレッサー音とタービン音だけを響かせながら待機する機関車の横を、フルスロットルの蒸機が通過してゆくなどという“音響効果”も演出できるわけで、実際にデモ運転を目にすると模型観そのものが塗り替えられるほどのインパクトがあります。
▲心臓部ともいえる基板部分もすべて自社内で生産している。工程各所でコンピュータによる自己診断チェックが行われ、最終的には熟練工によって念入りな検査が施される。'06.8.24

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サウンド・トラックス社では4層レイヤーの基板まで自社工場で一環生産しています。もちろんデジタル化する“音源”さえあればオーダーメードも可能だそうで、C62 2+C62 3の重連が微妙な汽笛音の違いで合図汽笛を交わし、走行途中で排気が揃わなくなって終いには前補機が空転…などという芸当も不可能ではないわけです。同社では車載の超小型スピーカーでの再生音にも十分気を使っており、最終的なテストで確認するための小型スピーカーが各種揃えられていたのも印象的でした。
▲案内してくださったナンシーさんに熱心に質問を繰り返す関水金属の加藤 浩社長(右端)とJAMの古川 享会長(中央)。古川さんはビル・ゲイツとともにマイクロソフト社副社長として世界のパソコン市場を育て上げてきた方だけに、質問内容も超専門的。'06.8.24

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将来的にはNスケールのレイアウトの各所にスピーカーを埋め込み、列車の動きとシンクロさせながらさらに音の奥行感を追求したサラウンド・システム化なども検討されているそうです。埋め込み式となればスピーカーの大きさも格段に自由度を増しますから、その臨場感たるやまた格別のものがありそうです。

ところで、ふと気がついたのは、このようにサウンドに熱心なアメリカにもかかわらず、なぜかトレインスコープ(車載カメラ)にはほとんど興味がないように見える点です。極めて限られた都市部以外「動力分散」というシステムがなく、いわばかぶりつきで前面展望を見る“原体験”が根本的にないからなのでしょうか…。そういえば「前面展望ビデオ」的なものもとんと見かけませんでした。
▲実車から採取された“音源”はこのミキシングルームでデジタル化され、より効果的なサウンドに昇華されてゆく。設備はほとんど放送局並み。'06.8.24

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