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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2006年7月 3日

武蔵野のデキカ。

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イングリッシュ・エレクトリックのE41形、ブラウンボベリーのE51形、ゼネラルエレクトリックのE61形と錚々たる面々が活躍してきた西武鉄道の電気機関車は、私にとっても幾度となく撮影に出かけた忘れられない思い出です。しかもその懐かしいほとんどの形式が、今でも横瀬にある車庫で保管されているのですから、こんなに嬉しいことはありません。現在、横瀬で保管されている電気機関車はE43、E52、E61、E71、そしてE854の5輌。「鉄道の日」のイベントなどで公開されるチャンスもあり、そんな時は旧友に再会したような感動さえ覚えます。
▲西日に照らし出される“デキカ”12とハフ。車体標記も武蔵野鉄道時代を模したものとなっている。'75.12.1

そんな横瀬の仲間たちと別に、公開される機会もなくひっそりと保管されているのがE12です。西武鉄道の前身の武蔵野鉄道が電化に際して米国ウェスチングハウスから輸入したデキカ10形3輌のうちの1輌で、戦後13号は弘南鉄道に、11号は越後交通へと転じ、このE12だけが西武鉄道を離れることなく働いてきました。ただ、後継のE21形等と比較して出力が小さいことなどもあって、1970年代に入るとほとんど使用されることもなくなり、結局1973(昭和48)年に廃車されてしまいました。

houyadekika3.jpg廃車処分にはなったものの、西武鉄道電化の立役者でもあり、当時の保谷車両管理所内で静態保存されることとなりました。保存にあたっては腐食が激しかった正面窓のHゴム化などが行われるとともに、塗色も武蔵野時代の茶色に戻され、社紋も武蔵野鉄道のものが描き込まれるなど、なかなか手のこんだ整備がなされています。ただ、保存場所は車両管理所内の乗務員養成施設とあって、一般人が容易く立ち入ることはかないませんでした。
▲同じ所内に保存されていた5号蒸機。英国ナスミスウィルソン製で1965(昭和40)年に廃車となっている。'75.12.1

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それでも1970年代中盤の保谷車両管理所は実におおらかで、電車を見学に来るファン用に見学ノートが備え付けられており、事務所で断ってノートに記入しさえすれば構内に立ち入ることが可能でした。私もとある冬の夕方、別の撮影の帰り道に保存されているはずのE12を撮影させてもらいに立ち寄ったことがあります。お目当てはE12と、一緒に保存されていると聞いたナスミスウィルソン製の5号蒸機だったのですが、現場にたどり着いてみるとなんと2軸の木造客車も連結されているではないですか。あとからわかったことですが、山形交通高畠線から引き取られてきた同社のハフ1とハフ2でした。といってもハフ2の方はすでに足回りだけとなってしまっていましたが、情報が溢れる現代と違って、これは思わぬ見っけモノと大喜びしたのを鮮明に覚えています。
▲モニタールーフにトルペードベンチレーターが魅力的なもと山形交通ハフ1。右はハフ2の足回りで、松葉スポークの車輪が見える。'75.12.1

しばらく経ってから、改めてこのハフだけ撮影に再訪しましたが、聞くところではその後ハフ1は現地であっけなく解体、ハフ2は大井川鉄道新金谷構内側線に移ったものの、結局解体されてしまったそうです。ちなみにE12と5号蒸機は現在も保谷(すでに車両管理所でも養成所でもなく、ただの電留線扱い)の地に保管されていますが、もちろん非公開(塗色はローズピンクに戻っている)で、周囲の建屋に阻まれてどこからもその姿を拝むことはできません。