鉄道ホビダス

2006年7月22日アーカイブ

sakuragichoufig1.jpg沢柳健一さんが解説しておられるように、鉄道監督局への連絡先は総裁室もしくは広報部であり、いずれも“車輌番号”とは直接関係ない部署です。つまり保安課なり修車課なりから入った連絡をとりまとめて上申したと考えられ、結局、この時点で書き間違え、読み間違えといったきわめて単純なミスが起こってしまったというのが真相のようです。当時は独自の電報略号(電略)に象徴されるように、重要かつ速報性が必要な情報は鉄道電報で伝達されるのが常でしたが、この電報そのものが湿式印字の、時として細部が読み取りにくいもので、ひょっとするとそんな事情も関係しているのかもしれません。誤謬の原因についての最終的な結論は出ませんでしたが、沖田さんがお送りくださった貴重な一次資料から、また一歩「桜木町事故報告書の謎」が解明に近づいたことだけは確かです。
▲「櫻木町驛における電車火災事故について」に添付されていた現場略図。これは謄写ではなくなんと手書きの原図。所蔵提供:沖田祐作
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今回の続報を締めくくるにあたり、沖田さんからお送りいただいたふたつの資料を転載させていただきたいと思います。

櫻木町驛における電車火災事故について
運輸省鐵道監督局 民營鐵道部運轉車輛課
昭和26年4月27日
事  所 国電、桜木町駅構内 横浜起点1粁764米500
発生日時 昭和26年4月24日 13時42分
列車番号 1271B 5輌編成(モハ63756・サハ78188・モハ63795・サハ78169・モハ63399)
電車所属 下十条電車区
消失電車 全焼モハ63756 一部焼損サハ78188
死  傷 死者105名(内米兵3名、重傷後死亡8名を含む) 負傷73名(内入院18名でその内4名は重傷) 死傷者合計178名 (4月25日16時現在)
事故概況
本電車横浜10分延発、桜木町9分延着の予定で約35K/Hの速度で進行中、場内信号機付近で上り線の架空線がたるんでいるのと、電力係員が数名おるのを認めたが、下り線の架線に異常を認めなかったのでそのまま進行し、第11号(イ)転てつ機が35K/Hの制限であるので制動し第11号(ニ)転てつ機上に差かかった。
偶然当日横浜桜木町駅間上り線の架線、碍子の取替作業を行い上記の分岐地点に於て作業を実施中誤ってメッセンジャーワイヤーを地気せしめ、メッセンジャーワイヤーが切断したためトロリー線が弛んだ為亘り線とのトロリー線の高さの差を生じた、そこで電力工手長はこの状態で電車を運転することは危険と感じ直ちに電車を止めるため付近にある桜木町駅信号扱所に赴えて連絡したが間に合わず最前部のパンタグラフが上り線のトロリー線に引かかりトロリー線は断線した そのとき電車の運転士は屋根上から大きな火花の発生するのを認めたので直ちに非常制動をかけ、パンタグラフを降下したが断線したトロリー線の一部分が電車の最前部のパンタグラフにからみついたために当該パンタグラフだけは降下せず破壊した碍子の部分より碍子台に地気しそのためアークが連続発生し付近の屋根木部等の可燃物に引火し運転台の天井から発火した、次に客室をみたところ天井付近一面火の海と化したので客室に入ることができないので運転台海側のドアーから降車して1・2輌目間の連結器上にのり2輌目のドアーを手動で開けた1輌目から2輌目に延焼してきたので折柄便乗中の東神奈川電車区員の協力で2・3輌目の連結器を開放して東京方に3輌を移動した
1輌目の電車は火の廻りが非常に早かったため多数の死傷者を生ずるに至った
原因
電力工手が吊架線の碍子を交換作業中に誤って吊架線を接地断線させこのため架線が弛緩したので電力工手が信号扱所に急報したが間に合わず、折から1271B電車が進入第11号転てつ器付近で前頭車のパンタグラフが架線に引掛り破倒し架線が車体に地気発火したものと認められる
事故の被害を大きくしたと思われる原因については尚疑問の点が多いので厳密な検討を要するが次のことが考えられる
(1)イ
トロリー線のアースと同様に横浜変電区の高速度遮断器は働いたが当時横浜鶴見両変電区から併列給電していたので遠距離の鶴見饋電室の高速度遮断器を操作するまで若干の時分を要し、その間電流が遮断できなかった

高架橋上を運転中で前方から約10米のかなり強い風が吹いたため火勢が強まった

車輌の内部には木造部分が多く不燃性になっていない
(2)
運転士は制動手配をとりパンタグラフを下した後黒煙と火勢が猛烈なため前部から赴いて客室内のドアー開放コックの取扱をすることは困難と認めた為か客室との連絡ドアーを開けず一旦下車し、一輌目の電車の電車の後部から客室内に入らうとしたが内開きのドアーを開けることが出来なかったので二輌目の電車に入りドアーを開けて二輌目の客を救い出した、然し1輌目のドアーはついに開けることができなかった、車掌は事故発生を知って直ちにドアースイッチを扱ったが既にドアーは作用しなかった
(3)
窓が三段式になっていたため乗客は窓を開けて逃げることがきわめて困難であった

日本国有鉄道における今後の対策
イ、
車輌間の往来が自由に出来るようにする、そのため普通の列車のように幌をつけてあぶなくないようにする
ロ、
左右両側の扉は各々単独に開けられるようになっているのでその表示をして乗客の協力を求めるようにしたい、又各電車には床下に一個のコックがあってこれを引くと電車の扉が全部手で開けられるようになっているので今後万一の場合には車の外に居るものが誰でも容易に操作できるように改善する
ハ、
出来るだけ早い機会に天井を鉄板で張ることにする
ニ、
非常の場合進行中でも乗客が運転士及び車掌え危険を知らせるためブザースイッチを設置する
ホ、
架線に電力を供給している饋電室又は変電区の高速遮断器の性能改良に一層力を入れる
ヘ、
列車運転に危険を及ぼすおそれのある工事を行う際は列車防護に万全の措置を講ずる
(漢字は新漢字に変換・句読点等原文ママ)

sakuragichofig2.jpg電車火災の場合処置について
鐵運第十九号
昭和二十六年四月二十五日
運輸省鐵道監督局長
各陸運局長殿・大阪府知事殿・京都府知事殿・兵庫縣知事殿
昭和二十六年四月二十四日國難(ママ)鐵道京濱線櫻木町驛構内で電車火災事故のため多數の死傷者を生じたが、今後かゝる事故の際の非常措置として自動戸閉装置のコックの位置及び取扱を乗客に知らせる等の適切な方法を講じ災害を防止するように至急官下の事業者(地下鐵道を除く)に通達されたい。なお、國有鐵道における措置を参考として添付する。
(原文ママ)
▲「電車火災の場合処置について」に添付された手書きの「非常の場合のドアーのあけ方」。いわゆる非常ドアコック表示の原点である。所蔵提供:沖田祐作
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