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2006年7月20日アーカイブ

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戦後の復興もままならない1951(昭和26)年4月24日13時40分頃、京浜線桜木町駅構内で発生したモハ63形による電車火災事故、いわゆる「桜木町事故」は死者106名、重傷者92名を数える未曾有の大惨事となり、以後、国鉄の通勤電車設計を根本から変えることとなりますが、この事故車輌をめぐって思いもかけなかった疑問が持ち上がり、本誌先月号で浅原信彦さんが「桜木町事故報告書の謎」としてその顛末を発表してくださいました。
▲事故のわずか3日後に運輸省鉄道監督局民営鉄道部運転車輌課名で出された「櫻木町驛における電車火災事故について」原本。「サハ78188」の文字がはっきりと読み取れる。所蔵提供:沖田祐作

お読みになっていない方のために概略をご説明しますと、疑問の発端は本誌誌上での緻密なレポートでおなじみの梅原 淳さんからの一通のお手紙でした。『国鉄形車両事故の謎とゆくえ』(2005年 東京堂出版刊)を上梓されたばかりの梅原さんのもとに読者の方から、桜木町事故の車輌のうちの1輌が「サハ78188」となっているが、浅原さんの『ガイドブック 最盛期の国鉄車輌』(第2巻)には「サハ78144」と記載されており、どちらが正しいのか…と問い合わせあったのだそうです。梅原さんは執筆にあたって一次資料である昭和26年6月18日運輸省鉄道監督局作成「桜木町駅における国鉄電車火災事故調査報告書」(昭和26年5月、山崎運輸大臣による第10回衆参両議院国会における事故の国会報告書でもある)に基づいて「サハ78188」としたのだそうですが、では一方の「サハ78144」説の出所はどこなのでしょうか。梅原さんのお手紙を受け取った浅原さんは、国電研究の泰斗・沢柳健一さんの協力を得て真相究明に乗り出しました。

sakuragityoun21.jpg沢柳さんの検証によれば、「サハ78144」の記述があるのは『運転事故写真解説』(昭和31年2月運転局保安課監修)、『国鉄重大運転事故記録』(運転局保安課)、『国鉄事故分類表』(平成元年)の3点。逆に「サハ78188」としているのは『大井工場80年史』(昭和28年)、『鉄道事故三代事故録』(沖田佑作著/平成7年)等ですが、不思議なことに前者は10年後に編纂された『大井工場90年史』では車号が省かれてしまっています。沢柳さんはさらに事故当日現場へ赴いて視認した長谷川弘和さんからの聞き取りや、事故後、大井工場収容線に留置されていた現車を確認した長谷川 明さんの証言、それに万一車体振り替えが行われた場合の両車の形態差まで検証したうえで、最終的な結論として「サハ78144」が正当であろうと結論づけられています。
▲本誌先月号(No.275)掲載の「桜木町事故報告書の謎」。

ただ、「サハ78144」が正しかったとすると運輸省の一次資料そのものが間違っていたことになります。しかもいったいどうしてふたつの番号が長年にわたって一人歩きをすることとなったのでしょうか? 浅原さんも記事のあとがきで「しかし、運輸省の資料が間違っている理由は私と沢柳氏の想像でしかなく、残念ながら不明のままである。」と結んでおられますが、本誌発売後、「サハ78188」と記載された資料のひとつである『鉄道事故三代事故録』の著者・沖田祐作さんから私宛にとんでもない一次資料、しかも原本が送られてきました。事故のわずか3日後に運輸省鉄道監督局民営鉄道部運転車輌課名で出された「櫻木町驛における電車火災事故について」と題された文書で、和文タイプの謄写の中紙、つまりは校正用の原紙そのものです。ホチキスなどなかった時代ゆえ、止めてある“虫ピン”も55年の歳月ですっかり錆びついてしまっています。せっかくの沖田さんのご厚意ゆえ、今日は沢柳さん、浅原さん、それに梅原さんにお集まりいただき、この貴重な資料の謎解きに挑戦してみることにしました。果たしてそこから見えてきたものは…つづきはまた明日お話することにしたいと思います。

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