鉄道ホビダス

2006年7月 2日アーカイブ

kasukawa4n.jpg
▲盛大な吊掛音を響かせてデハ81の牽く「貨物列車」がやってきた。右の側線には古典貨車ト22が留置され、駅前にはボンネットバス…。'76.5.16

粕川は全線25.4kmの上毛電気鉄道のほぼ真ん中、中央前橋起点13.3kmに位置する小さな交換駅です。お目当てのボンネットバスはこの粕川駅前から真北に位置する室沢集落を結ぶ路線で運用されていましたが、この粕川?室沢間というのが2キロちょっとしかない短距離で、わざわざ1系統を設定しているのには首を傾げざるをえませんでした。

kasukawafig.jpg室沢行きは粕川駅真正面から発車しますが、駅前横手には3車が格納できるバス車庫と給油所があり、どうやら粕川?室沢線のバスもここに駐泊して日々の運用をこなしているようでした。この駐泊設備のある駅前を出た室沢行きは一旦南へと向かい、古風な郵便局の角で県道にぶつかるとそこを左折、数十メートル県道を走って再び左折し、上毛電鉄本線の踏切を渡り、今度は真北を目指してひたすら田舎道を走ります。郵便局の角、さらには終点・室沢の折り返しなどに多少タイトなコーナーはあるものの、さりとてボンネット車でなければならない理由は見当たらず、いったいどうしてこの路線にボンネット車が残っていたのかは結局わからずじまいでした。
▲小さな貨物ホームとバス車庫がある粕川駅はモデラーにとっても充分魅力的だった。当時のフィールドノートにはそんな思いも込められている。
クリックするとポップアップします。

kasukawa26n.jpgkasukawa27n.jpg
▲ささやかな貨物側線には松葉スポークを持つト22と21が留置されていた。奥には3台が格納できるバス車庫が(左)。右は粕川駅本屋。'76.5.16

それにしても当時の粕川は地方電車の典型的小駅で、まさに模型にしたくなる要素がぎっしりと詰まっていました。木造上屋の島式ホームの端から構内踏切を渡って駅本屋に入ると、こんな小さな駅でもささやかな待合室と売店があり、正面入口にはボンネットバスが待っている…そして松葉スポークの古典無蓋車が停められた小さな貨物ホームの向こうにはバスの駐泊所が…。訪問時に描きなぐったフィールドノートを見ても、当時この駅を「模“景”を歩く」的シンパシーをもって見ていたことが伺い知れます。

kasukawa21n.jpg
▲粕川?室沢線は粕川駅を出ると180度転回して本線の踏切を渡る。折しもデハニ52の列車がボンネットの鼻先を通過してゆく。'76.5.16

kasukawa22n.jpg
▲何往復かすると車庫側にある給油所に入って運転手自らが給油をはじめた。奥にはお約束の「計量器」があるが、さすがに地下槽からの給油だ。'76.5.16

さて、この粕川?室沢線で運用されていたのは上毛電気鉄道(車体標記は上毛電鉄)No.113の日野自動車1966(昭和41)年製BH15型です。車体は帝国ボディー製で、誰が言ったか“バカボンおまわり”と通称された曲面ガラスを用いた正面連続窓が特徴でした。詳しいことは知りませんが、日野自動車としてもほとんど最終生産に近いボンネットバスだったはずです。

kasukawacolor1n.jpg今さら思えば、1966年製ということは訪問時でちょうど“10年落ち”ですから、ボンネットバスといえどもとんでもなく古いわけではなかったことになります。ちなみに、前橋市内の路線で運用されていた同系の僚車は、同じ1966年製のBX15型ながらボンネットバスには珍しい2扉ワンマン対応車で、こちらはその後メーカーの日野自動車に引き取られ、フルレストレーションのうえ現在でも保存されていると聞きます。
▲カラーで見るとなかなか凝った塗り分けであることがわかる。'76.5.16

kasukawa23n.jpgkasukawa24n.jpg
▲狭い駅前を出てゆくNo.113(右)。趣のある郵便局の角を曲がって県道に出る(左)。'76.5.16

たった一度の邂逅で、しかも通り一遍の興味であっただけに、その後この上毛電鉄No.113がどうなったのかは知りません。ただ、上毛電気鉄道自体、1995(平成7)年春でバス事業から完全撤退してしまいましたから、このささやかな粕川?室沢線ともども遠い過去へと消えてしまったことだけは確かです。

kasukawa25n.jpg
▲終点・室沢付近をのんびりと走るNo.113。これが上毛のボンネットバスの見納めとなった。'76.5.16

レイル・マガジン

2006年7月   

            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
「編集長敬白」が携帯電話でもご覧になれます。下記アドレスもしくはQRコードを読み取ってアクセスしてください。
http://rail.hobidas.com/blog/
natori/m/

ホビダス・マーケット新着MORE

  • 俺がイル
ネコ・パブリッシングCopyright © 2005-2018 NEKO PUBLISHING CO.,LTD. All right reserved.