鉄道ホビダス

“UDL”のストックヤード。

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“TDL”ならともかく、“UDL”と聞いただけで日本車輌のベストセラー防爆型ディーゼル機関車を思い浮かべる方は極めて少ないと思います。語源の“Underground Diesel Locomotive”が示すとおり、地下坑道での使用を前提とした機関車で、さりとてマイニング・ユースではなく、高度経済成長下の建設需要を下支えしてきた陰の功労者でした。
▲見渡す限りの“UDL”の海。フェンスがあるだけで隣は住宅地というシチュエーションもいまさら考えれば隔世の感がある。'78.1.18

nitiyuu4a.jpg南武線の南多摩駅のすぐ近くに、この“UDL”が山となっている(?)と聞いたのは1970年代も後半になってからのことでした。南多摩といえば多摩川右岸の、ちょうど西武多摩川線是政駅の対岸。是政側はつい十数年前までは西武建設や田村石材の砂利採取軌道が縦横無尽に敷きめぐらされ、何輌もの小型ディーゼル機関車が目撃されてきた地域でもあります。UDLばかりでなく、ひょっとするととんでもない“お宝”もいるのではないか…場所柄はそんな過大な期待を抱かせるに充分でした。
▲修理に戻ってきたと思しき蓄電池機関車が積み上げられている。写真は大成建設へのリース車らしい。'78.1.18

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最初の下見でわかったのは、件の場所は「日熊工機」という会社の東京工場敷地であるということ。今にして思えばさほど厳重でもない鉄条網で囲われただけのようなストックヤードでしたが、もちろん黙って立ち入るわけにはゆきません。そこで見学させてもらえるものかどうか電話で聞いてみることにしました。はじめは訝しく思われたようですが、結局さほど他意はないことを理解していただいたのでしょうか、見せていただけることになりました。
▲「日熊工機東京工場」の建屋をバックにずらりと並んだ各種UDLたち。画面左手の柵の向こうを南武線が走っている。'78.1.18

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▲1965(昭和40)年製の超小型「UDL6N」(左)。台枠まわりの造作が古さを感じさせる。連結器はウィリソン簡易自連が付いている。右は1964(昭和39)年製と当日いた中では最古参のUDL12(製番2063)。なんとロッド式である。'78.1.18

この「日熊(にちゆう)工機」という会社、日本車輌とゼネコンの熊谷組が共同出資して1959(昭和34)年6月に設立した会社で、定款によれば建設用・鉱山用機械の設計製作ならびに販売、産業用資材の販売または納入の代行などを目的としています。社長は日本車輌社長が兼任する形で、いわば日本車輌の建設機械部(同年1月発足)の販社的性格を持った会社でした。“UDL”はその一連のなかで開発された防爆機能を持つ汎用型小型ディーゼル機関車でした。製造初年は1960(昭和35)年(1958年に試作機が完成との説もあり)。以後、1960?1970年代を通して、D51の1115輌にはわずかに及ばない1052輌が生産された、わが国屈指の「量産機」なのです。

nitiyuufign.jpg訪問時の日熊工機東京工場には実に32輌もの“UDL”が所狭しと並んでいました。残念ながら会社が会社ですから“加藤くん”あたりがいようはずもなく、その面ではがっかりでしたが、ロッド式の初期タイプから4年落ちの最新型まで実にバラエティーに富んだ“UDL”を目にすることができました。狭いキャブに潜り込んで真鍮製のワイヤーブラシで銘板をこすって刻印を読み取ってゆく作業を繰り返す姿に、立ちあってくれた掛の人が呆れ顔だったのを覚えています。今さら思えば、この“UDL”のレンタル料金を聞いておかなかったのが悔やまれます。果たして一ヶ月借りていくらぐらいだったのでしょうか…ちょっと気になります。
▲車輌番号がないため、便宜的に位置関係に基づいた整理番号をふって調査した当時のノート。1輌1輌銘板を調べて形式・製造年・製造番号を記録した。
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一般鉄道車輌の豊川蕨工場に対して鳴海工場で生産されたこの“UDL”は、1980(昭和55)年を境に生産を打ち切られます。軌道を使った隧道工事が減少し、地下鉄や共同溝建設工事の主力は高性能化の一途をたどる蓄電池=バッテリー機関車になりつつあったのです。その後、あの南多摩の日熊工機東京工場がどうなったのかは確認していませんが、日本車輌のホームページによれば、日熊工機(株)は1999(平成11)年1月に日本車輌に吸収合併されて、今では会社そのものが存在しないようです。

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