鉄道ホビダス

2006年6月14日アーカイブ

本州最北端の鉄道。

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本州の北のはずれ下北半島のそのまた突端に位置する尻屋崎に、かつて「日鉄鉱業尻屋鉱業所」の軌道がありました。鉱業所事務所の緯度を地形図から算出すると北緯41度24分46秒。本州最北端の営業鉄道だった下北交通(旧国鉄大畑線)の終点・大畑駅本屋が北緯41度24分20秒ですから、わずかに日鉄鉱業の軌道の方が北に位置することになり、1970?80年代に限っては、本州最北の鉄道だったことになります。蛇足ながら“1970?80年代に限っては”とあえて注釈をつけたのは、1960年代までは青森営林局大畑営林署の大畑森林鉄道をはじめとした森林軌道網が下北半島北西部に張り巡らされており、緯度的にはこちらの方が北に位置していたからです。
▲坑口から尻屋崎港の積出設備(画面左奥)までは2キロほど。誰が呼んだか“尻屋ドラゴン”という名のとおり、防爆排気装置から龍のようにエキゾーストを吐きながら日輸製15t機がゆく。'81.3.20

shiriyazaki1972map.jpgさて、この日鉄鉱業尻屋鉱業所の軌道の存在を知ったのは1970年代中ごろのことでした。日本輸送機製の坑内用DLに混じって、まだ加藤製作所製の機関車(D10-1)が使われていた頃で、見せていただいた津軽海峡をバックに走る加藤くんの写真に衝撃を受けたのをよく覚えています。ただ、この日鉄鉱業尻屋鉱業所、わざわざ訪問するにはあまりに足の弁が悪く、ようやく訪れることができたのは1970年代も押し迫ってからでした。
▲国土地理院発行1:50000地形図「尻屋崎」(1972年発行)より。
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大湊線から大畑線に乗り換えて田名部へ。さらに田名部にある「むつバスセンター」から尻屋崎行きの下北バスに揺られること50分ほど、その名も「日鉄鉱業所前」というバス停で降りると、外は立っていられないほどの強風と寒さでした。なんでも尻屋崎は津軽海峡から吹き込む強風で昔から有名だそうで、この日も例外ではなく、おまけに氷雨まで叩きつけてくる始末。事務所に避難されていただいて天候が回復するのを待ちましたが、結局この最初の訪問時にはたいした撮影もできずふたたび「むつバスセンター」へと引き返すハメとなったのです。
▲国鉄の初代DF91をおもちゃにしたような協三工業製4号機(1973年4月製/製番15853)。形式写真を撮りたくて本線上で停止してもらって撮ったひとコマ。'81.3.20

shiriya3019n.jpg2回目の訪問は数年後の1981(昭和56)年3月のことです。例によって軌道上は海峡からの強風が荒れ狂っていましたが、幸い天候はまずまず。気温こそ低いものの撮影には問題ないコンディションです。今回のお目当てはアメリカンスタイル(?)が目を引く協三工業製の4号機。1973(昭和48)年4月製とまだ“8年落ち”の新鋭機で、日輸製ばかりの中で唯一の協三製でもあります。
ところでこの尻屋鉱業所の軌道、一見複線のように見えますが、実は坑道内と積出港側でドッグボーン型のエンドレス状となっており、列車は機回しや入換えをすることなく走り続けます。つまり坑内ポケットと積み下ろし場以外では一切停車することはないわけで、機関車の形式写真を撮ろうにもどうにも撮りようがありません。そこで無理をお願いして本線上で一時停車してもらい、ようやくお目当ての4号機をペンタックス67に収めることができました。
▲4号機の前位側。こちらから見ると何とも味気ない。'81.3.20

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▲尻屋鉱業所でコピーしてもらった4号機の竣功図(一部詳細は画像処理で消してあります)。なぜかキャブの位置が現車とまったく異なる。
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この訪問の直後、同じ日鉄鉱業津久見鉱業所(大分)から余剰となった日輸製15t機2輌(No.5/No.6)が転入し、在籍機関車輌数7輌とこの手の軌道としては異例の大世帯となりました。結局その後は訪問する機会はありませんでしたが、1994(平成6)年6月にベルトコンベヤー化され、軌道はすっかり撤去されてしまったと聞きます。いまさら思えば、「日鉄鉱業所前」バス停まで2度も行きながら、あとちょっとの尻屋崎には行かずじまいとなってしまいました。「寒立馬(かんだちめ)」で知られる観光名所ですが、日鉄鉱業の軌道が過去のものとなってしまった今となっては、もはや再び足を向けることもないでしょう。

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