鉄道ホビダス

2006年6月10日アーカイブ

那覇市内の“加藤くん”。

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3年ほど前に「ゆいレール」こと沖縄都市モノレールが開業し、再び鉄軌道保有県となった沖縄県ですが、太平洋戦争末期までは沖縄県営鉄道や沖縄電気軌道といった鉄道・軌道がいくつか存在していました。さらに大東諸島と呼ばれる島々にもそれぞれ事業用の専用軌道が敷設されており、実はあなどれない鉄道王国だったのです。
▲繁華街の中に忽然と現れる“加藤くん”。雨ざらしのため状態はあまり良くない。'01.11.24 壺川東公園

okinawa3n.jpgそんな沖縄県ですが、太平洋戦争末期の筆舌に尽くしがたい空襲と地上戦の中で本島の軌道施設は破壊されつくし、1945(昭和20)年3月の沖縄県営鉄道の運行停止を最後に、以後、半世紀近くにわたって沖縄本島は鉄軌道のない地域となってしまいました。ところが、同じように壊滅的ダメージを被ったにも関わらず、戦後いち早く復興を遂げた鉄道もありました。大東製糖(もと大日本製糖)が運営する南大東島のサトウキビ運搬用の軌道です。
▲1913年ヘンシェル製蒸機(大日本製糖1号)の足回りも同じ線路に保存されている。右の説明碑文には沖縄県営鉄道のことばかり書かれており、しかも同じヘンシェル製の県鉄1号機の写真まで添えられている。この足回りが県鉄の1号と誤解されないか心配…。'01.11.24 壺川東公園
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▲“加藤くん”は大東製糖が最後に新製導入した5号機。1967(昭和42)年2月製の10t機(製番67215)で、加藤製作所としても機関車製造をやめる直前の生産機。'01.11.24 壺川東公園
daitoujimafign.jpg実は沖縄地区で最初に軌道が敷設されたのはこの南大東島です。大東諸島開発の祖・玉置半右衛門が軌間1'6"(457mm)の手押し軌道を建設したのが1902(明治35)年と言いますから、「ゆいレール」開業から101年も前のことになります。その後、玉置による軌道は北大東島(燐鉱石)、沖大東島(ラサ島/燐鉱石)にも敷設されています。戦後復興にあたり、砂糖(南大東島)より食料増産のための肥料(北大東島の燐鉱石)が優先されて大量の軌道用品が南大東から北大東へ送り込まれるなど、沖縄本島から鉄軌道が消えてからも、大東諸島の軌道群は活発な動きを見せますが、この辺の事情に関しては岡 雅行さんの力作「知られざる大東諸島 ?伊豆鳥島と大東諸島の軌道群の全貌に迫る?」(『トワイライトゾ?ン・マニュアル10』所収)をご覧ください。
国土地理院発行1:200000地勢図「那覇」(1973年発行)より。円周状の軌道がよくわかる。
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さて、長らく南海のシュガートレインとして多くのナローファンを魅了してきたその南大東島の軌道も、1983(昭和58)年の収穫期(1984年1月?)からはトラック輸送に切り替わり、この時点でついに沖縄県内から営業・非営業を問わず、システムとしての鉄軌道が消滅することとなりました。軌道廃止後も大東製糖の車輌の多くは、南大東村の旧機関庫跡に放置されていましたが、雨宮製の蒸気機関車2号をはじめとする何輌かが同村のふるさと文化センターに引き取られ、さらに加藤製の5号DLとヘンシェル製の1号蒸機の下回りだけが那覇市内の公園に運ばれて保存されています。
▲県鉄のレールとされる軌道(左)と5号機のキャブ内。機器類は残っているが
銘板は見当たらなかった。'01.11.24 壺川東公園

それにしてもなぜ那覇市内に南大東島の“加藤くん”がいるのか、いぶかしく思いながら現地を訪ねてみて概ねの状況が理解できました。保存場所の壺川東公園は旧沖縄県営鉄道那覇駅跡の那覇バスターミナルにほどちかく、地元としては沖縄県営鉄道を顕彰するモニュメントを作りたかったのが真相のようです。しかし県鉄の車輌はすでに影も形もなく、そこで南大東島の“加藤くん”に白羽の矢が立った…ということです。横に添えられた碑文にも、本島の地図と県鉄の解説が刻まれているものの、南大東の記述はほとんどなく、ちょっとかわいそうな“加藤くん”ではあります。

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