鉄道ホビダス

決して止まらない鉄道?

never1033n.jpg昨日の「エンドレス」の続きではないですが、世の中には不思議な鉄道があるものだという驚きの事例をひとつご紹介してみましょう。私も会員になっている英国のナローゲージ・レイルウェー・ソサエティーの会報、その名も“THE NARROW GAUGE”の193号にKelvin Parkesさんが紹介されている“Never‐Stop Railway”(決して止まらない鉄道)です。
▲Wembleyで行なわれた大英博覧会会場の“Never‐Stop Railway”。コンクリート製の“軌道”は2'10 1/2"ゲージだそう。背後に見えるのはLNERの博覧会駅。(“THE NARROW GAUGE”193号より)

なんとこの鉄道、エンドレスのようなロープどころか奇妙なスクリューによって動くシステムで、見れば見るほど破天荒な、言うなれば存在そのものがトワイライトゾ?ンな鉄道です。残念ながら昨日の“ENGINEERING”のようなテクニカルな図は残されていないようで、1923(大正12)年頃のドイツの少年向け科学誌“Das Neue Universum”(『新世界』)に掲載されていたイラスト(下記参照)が紹介されています。ところがこのイラストが実に良く描けており、解説とともに一枚でこの“Never‐Stop Railway”の概要を把握することができます。では、いったいどのようなシステムなのか、原本のドイツ語解説をParkesさんが英文に翻訳したものをさらに日本語に要約してご紹介してみましょう。

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まず基本的構造ですが、新交通システムのようなコンクリート製の軌道の下にスクリュー状の回転軸を設置し、この回転に従って車輌下部に取り付けられた案内輪が進むという仕掛けです。コンクリート軌道に載った車輪は鉄製ながら当然フランジレスです。スクリュー状の回転軸は末端でモーターに接続されており、軸全体は常時ぐりぐりと回転を続けています。つまりエンドレス軌道と同様に車輌にはなんの動力設備も不要なわけで、ここまで表面的に見てくると何だか説得力を持つシステムのように思えますが、問題はこの先です。実は掲載誌“Das Neue Universum”にも2つの大きな問題を抱えていると紹介されています。ひとつはカーブをどう通過するのか、もうひとつは速度の加減速、とりわけ停車場での乗降時にどう停めるのかです。

窮すれば通ず…この問題解決方法が実にユニークです。まずカーブですが、これはイラスト上段にあるように、シャフトにベベルギアを噛まして角度を変えています。ただ冷静に考えれば気がつきますが、これでは車輌はカーブを曲がりきれません。つまり曲線部にはいっさいスクリューがないからで、スクリューから外れた時点で車輌は自然停止してしまうことになります。ところが、ここからがスゴイ! ではどうするかというと、解説によれば「次々にやってくる続行車が押し出して」カーブを曲がるのだそうです。呆れ果ててものが言えない…と言ったら真面目に考えた発案者には失礼でしょうが、コロンブスの卵的発想ではあります。

では次なる難題、停車場ではどうするのか。イラスト最上部の絵にあるようにスクリューのピッチを変えてゆくのだそうです。高速(?)運転箇所では左端のようにスクリューのピッチを広く、駅に近づくにつれてピッチを狭め、駅構内では右端のように極端にピッチを細かくするわけです。でも停まらないではないか…確かにそのとおりですが、解説によれば駅では3km/hまでスピードが落ちるので、その際に乗り降りをするとあります。う?ん…。

Never‐Stop Railway=決して止まらない鉄道、とはいえ夜間など営業時間外はいったいどうしたのでしょう? 当然シャフトの回転を止めた時点で、例のカーブの部分をはじめ各所に車輌は取り残されてしまうわけで、他人事ながら心配です。
ちなみにこの“Never‐Stop Railway”、最終的には‘Never Stop’Railway Limitedなる会社まで設立され、1924(大正13)年から始まった大英博覧会の会場内輸送などに実用されたとありますが、当然ながらその後の“普及”はありませんでした。

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