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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2006年4月19日

「エンドレス」続報。

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4月9日付けの本欄「三峰石灰、桜咲く。」でご紹介した「エンドレス」軌道に関して、興味深いお便りを頂戴しましたのでご紹介してみたいと思います。お便りを下さったのは科学技術振興機構の寺岡総一郎さんです。
▲極めて初期のサンフランシスコ・ケーブル(Geary Street線)の銅版画。先頭車(?)がケーブルグリップ機構を持ち、操作する運転士(?)が乗っている。(“A TREATISE UPON CABLE OR ROPE TRACTION
AS APPIED TO THE WORKING OF STREET AND OTHER RAILWAYS”より=以下同様)

cover_1nn.jpg「編集長敬白」毎日楽しみに拝見しています。ケーブルカーといえば“つるべ”式のものしか念頭になく、低速とはいえエンドレスケーブルが常時回転してそれを掴んで走る方式があるとは恥ずかしながら最近まで知りませんでした。考えてみれば、併用軌道で“つるべ”方式ではいろいろと具合が悪いことは明らかなのですが…。
さて、1月にサンフランシスコに出張した折りに有名なケーブルカーを見てきました。舗装併用軌道の地中に索を埋め込む大胆な方式は強く印象に残り、エンジンハウス兼博物館の売店で“A TREATISE UPON CABLE OR ROPE TRACTION
AS APPIED TO THE WORKING OF STREET AND OTHER RAILWAYS”と題する書物(Owlswick Press刊)を買い求めました。この本は有名な“ENGINEERING”から鋼索鉄道を抜粋して加筆修正した専門書で、タイトルにあるように“TREATISE”つまり学術論文だけに、記述はもっぱら技術的(採算も含めて…)な内容となっています。残念ながら写真はいっさいなく、特許図面風の図版と銅版画によって解説されています。まぁ、「欲しい」と思う方は愛好者でもごく少数だと思われますが、古い時代らしく凝った図版が楽しく、機構好きにはなかなか面白い一冊です。
▲アンチークな雰囲気の“A TREATISE UPON CABLE OR ROPE TRACTION
AS APPIED TO THE WORKING OF STREET AND OTHER RAILWAYS”表紙。

clay_cable_1nn.jpg第Ⅱ章の“STREET CABLE TRAMWAYS IN CAL.USA”では観光資源としてすっかり有名なサンフランシスコのケーブルカーが詳しく解説されています。実は現在でも軌道の一部が“陥没”している箇所があり、なぜ修復しないのだろうと不思議に思っていたのですが、この章を読んで疑問が氷解しました。平面交差やエンジンルームへの引き込みでは必然的にケーブルをリリースせねばならず、それを再びキャッチするために設けられているのだそうです。なるほどと思いました。
▲Clay Street線(現在はトロリーバス)のエンドレス模式図。テンショナーは錘で、終点にあるのがわかる。

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▲Clay Street線の編成。左側がグリップ機構を持つ先頭車で、右は付随車。

clay_cable_1n.jpg私はこの第Ⅱ章しか読んでいないのですが、ご参考までにほかの章の題目だけあげてみると…
Ⅰ:Mining and Railway Rope-Haulage.
Ⅲ:The Chicago, Philadelphia, New York, &c. Cable Lines
Ⅳ:New Zealand Cable Tramway
Ⅴ:Cable Traction in Europe and Australia
Ⅵ:The Cost of Construction and Working the System
Ⅶ:Considerations in Tramway Working
Ⅷ:The Manufacture of Wire and Wire Ropes, and their Applications
Appendix:The City of London and Southwark Cable Traction Subway;
the Glasgow Underground Rope Railway
となっています。ほとんどが地中のスロットに通したケーブルをグリップする方式のようでが、なかには撚線機(?)など非常に凝った図も添えられており、興味は尽きません。
▲常設軌道の透視図。路面に埋め込まれたスロットの中にケーブルが通っているのが良くわかる。

clay_cable_3n.jpgclay_cable_3nn.jpg
▲グリップ車断面(左)とケーブルグリップ機構(右)。ネジを用いたのは極めて初期のようで、その後はレバーとラチェット式に変わってゆく。ちなみにClay Street線は3'6"ゲージ。
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▲Clay Street線の動力室断面。動力には蒸気エンジンが用いられていた。

寺岡さん、ありがとうございました。“ENGINEERING”は19世紀から続く由緒ある技術誌で、写真製版技術が未発達だった時代には、ここに見られるような銅版画による図版が多用されていました。デジカメで撮った画像を瞬時にHTML化してウェッブ上にアップする今日ではとても信じられないことですが、この図版一枚描く、いや彫るのにいったいどれほどの時間が掛かったのでしょう…。

それにしても、知っているようで知らなかったエンドレスの仕組みが今回たいへんよくわかりました。常時回転する曳索をキャッチ&リリースすることによって運転・停止を可能にしているわけですが、インダストリアル・ユースならともかく、街中の併用軌道ともなるとそのスロットの保守は尋常でなく大変そうです。サンフランシスコに行く機会があれば、この仕組みを踏まえたうえでじっくりと観察してみたいものです。