鉄道ホビダス

2006年4月30日アーカイブ

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写真の“方向性”。
ピントや被写界深度、それに季節感など、これまでの話はどれもご納得いただけるかと思いますが、実はこれから先があまり語りたくない雑誌編集ならではの紆余曲折です。
まず、『レイル・マガジン』をはじめ多くの鉄道誌は左綴じである点を思い起こしてください。ちょっと考えれば当たり前のことですが、横書きの本文の場合、当然本は左綴じ、縦書きの本文の場合は右綴じとなります。形式番号などの記号や数字が多い鉄道誌の場合は横書きの方が編集しやすいために横書き=左綴じが主流となっていますが、紀行文的な散文の場合は縦書き=右綴じの方が読みやすく、かつ誌面デザインの自由度も高くなります。増刊『国鉄時代』が鉄道誌で唯一縦書き=右綴じなのはそんな理由からです。
▲前号272号巻頭の広田尚敬さんの交通博物館特撮の際の色調見本。デジタル化して以降、広田さんは必ずキーになる写真のA4判カラー出力を添付してくれる。

さて、左綴じ・右綴じと写真の選択に何の関係があるのかと訝しく思われるかもしれませんが、これはベクトル、つまり絵柄の方向性の問題に関わってくるのです。単純に言えば本誌のような横書き=左綴じの本の場合、表紙の写真は小口(開く方)側に動きがある、つまりは右頭の写真の方がしっくりきますし、逆に『国鉄時代』のように縦書き=右綴じの場合は左頭の方が馴染みます(『国鉄時代』の場合は矩形のロゴが左上にあるために、現在までの5巻中右頭の表紙が4、左頭のものが1となっていますが…)。編集者は常にこの誌面のベクトルを気にしながら写真を選択しがちなのです。“流し撮り”の場合もそうです。ページのめくり順に逆らう左頭よりは動きに合った右頭の方が“使い勝手”が良いのです。たまには、ライトテーブルの上でわざわざポジを逆版に置いて「こっち向きだったら良かったのになぁ?」などとぼやくことさえあります。

IMGP6504n.jpg余談ながら、皆さんはご自分が撮った写真に“右頭”が多いか“左頭”が多いか気にしてみたことはあるでしょうか。もちろん、車輌のメーカー公式写真をはじめとしたいわゆる「形式写真」が“左頭”ですから、車輌そのものを撮影する場合は意図的に“左頭”が多くなるかも知れませんが、走行写真となるとどうでしょう。一見、光線状態などの撮影条件次第で左右均等のように思いがちですが、実際は右利き・左利きのように結構“癖”があるものです。
▲同じく272号巻頭のラフスケッチ。写真の方向性、寄り・引き、動き…等々、全体の“流れ”をこのラフ上で検討しつつ、文章やロゴの位置などデザイナーへの細かい指示を書き込んでゆく。

話を本題に戻しましょう。限られたページ数の中で企画を展開してゆくうえでは、この写真の“方向性”をはじめとして、全体のいわばリズムが欠かせません。編集の実作業では、あら選びした写真の山を前に“ラフ”と通称している誌面展開のラフスケッチを描き、誌面の流れを決めてゆきます。このなかでは形式や撮影場所に偏りがないかどうかはもとより、“寄り”に対して“引き”、“動”に対して“静”…と誌面全体としての高揚感をなによりも大事にします。つまり「単写真」としていかに優れていても、誌面全体の流れのなかで残念ながら採用に至らないケースも多いのです。端的な例を挙げるといわゆる俯瞰写真がそのひとつで、絵柄が絵柄だけに掲載面積を大きくとらねば効果が薄く、逆にそれが複数枚数続くと相殺してインパクトがなくなってしまいかねません。それだけに俯瞰写真は“狭き門”の代表格といえましょう。

写真の選考過程の最後に、もう一度トップの写真をご覧ください。前号272号の交通博物館惜別特集の際に広田尚敬さんに特写していただいた写真の数々です。完全にデジタル化している広田さんが“納品”してくださるのは本来、画像データが入ったCD?Rのみで済むはずです。ところが、毎回頭が下がることに、中一日ほどで「実画像のCD?R」、「デザイナー用の軽いデータのCD?R」、「全画像のサムネールプリント」、そしてご自身が推薦する20?30枚の「A4判カラープリント(色調見本)」をまとめて渡してくださいます。そう、あの広田さんにして、撮った写真=自分の“作品”を見せる=プレゼンテーションするうえで、考えられる最大限の努力をされているのです。ひるがえって、お送りいただく読者の皆さんの作品の中には、まだまだ「えっ!」と驚くような送り方をされる方もおられます。絵柄のよしあしの前に、なによりも自分の写真=作品を大事にしてほしいと願わずにはいられません。

レイル・マガジン

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