鉄道ホビダス

アイルランドに欧州最大のナローゲージ網を訪ねる。(12)

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第十二回:苦難の交渉ようやく成功。
ラスゥエンの町で探しはじめてからかれこれ2時間近く、ようやくお目当てのミッドランド・アイリッシュ・ピート社にたどり着くことができました。会社といっても、小学校くらいの敷地に体育館程度の大きさのミルと何棟かの平屋の建物があるだけで、ボード・ナ・モナのスケールの大きさとは比べものになりません。

これまた小学校の正門ほどのゲートには例によって「立入禁止」の看板が…。この「立入禁止」、“入らないでください”なのか“立入厳禁”なのか、そのニュアンスの強弱が問題です。ことにアメリカでの撮影の場合は、このニュアンスを勘違いするとそれこそ命取りにもなりかねません。ところがこの門に掲げられているのは“WARNING”(警告)。まさに立入厳禁です。しかもその後に続くのは“UNAUTHORISED ENTRY IS PROHIBITED. IF YOU PASS BEYOND THIS POINT YOU ARE ON A PREMISES TAKE NOTICE THAT?”、つまり「許可なく、もしここから一歩たりとも入ろうものなら以下の処罰を?」と極めて強い調子です。これがアメリカならさすがに躊躇する文言ですが、ここはアイルランドですから、まぁ途端に撃たれることもあるまいと、ダメもとで撮影許可を得にゆくことにしました。
▲ようやく目にすることのできたミッドランド・アイリッシュ・ピートのフィールドは垂れ込めた寒空の下に広がっていた。ランソン・ラピィアの2号機が置き忘れられたように待機している。'02.10.22

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▲目の前に広がるピート・ボグはまさに底なし沼状態。キャタピラの化け物のようなエキスカベーターが黙々と作業を続ける。'02.10.22
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▲軌道によって工場に運び込まれたピートは一旦貯留槽などに集められたのち、ベルトコンベヤーで乾燥室へと送り込まれる。'02.10.22

職員駐車場らしき所にレンタカーを停めてクルマから降りてきたその時でした。正門から入ってきたのは、ついさっき擦れ違い時に怒鳴っていたトラック! 何とあのトラックはこの会社のトラックだったのです。初老の運ちゃんはトラックから降りるやいなや、またしても大仰な身振りで怒鳴り始めました。いや、今度ばかりは逃げようもありません。とにかく何を言っているのかさっぱりわからず(ゲール語=アイルランドの第一公用語だったのかも)、勝手に構内に入ってきてしまった負い目もあって、もうひたすら謝るしかありません。「すいません、すいません」と日本語で謝りたおし、そのうち言葉が通じないもどかしさもあってか、欧米人特有の手のひらを上に向けて両肩をすぼめる諦めのポーズ(?)を残して詰所の方に去っていってしまいました。

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一難去ったものの、今度は撮影許可を得ねばなりません。見回すとプレハブ平屋の事務棟らしきものが…。ドアを開けると5?6卓の事務机とパソコンが並び、おばさんが何やら事務作業の最中です。「機関車を見せてもらいたくて日本から来た」と説明するのですが、どうも話が通じません。そのうち「あぁ、トラクターね」とようやく理解。なんとこの会社のフツーのおばさんにとっては“locomotive”ではなく“tractor”として認識されているようです。
▲とても機関車とは思えない形態の6号機はモーターレール製のいわゆるシンプレックスの一族だが、すでに原形は見る影もない。'02.10.22

ややあって奥から出てきたのはスーツを着た30代中盤くらいの紳士。社長さんなのかどうかはわかりませんが、とにかくこの人は“locomotive”で話は通じたものの、撮影はダメの一点張り。せっかく日本から来たのだからちょっとだけでもと食い下がりますが、どうやらフィールドが危険だから入ってはだめだと言っているようです。それではとフィールドには入らないからミルの周囲だけでもとお願いすると、今度は私の足下を見て“boots”(長靴)がないからダメと言いはじめました。これはしめたものです。実は今回の撮影行、場所が場所だけに日本からゴム長を持ってきており、私がクルマのトランクから長靴を持ってくると流石にこの紳士も目が点。わかったわかった、見せてあげるよ、とばかり、この紳士も長靴に履き替えて自ら案内してくれることになりました。

レイル・マガジン

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