鉄道ホビダス

2006年1月31日アーカイブ

均一周遊券の時代。(下)

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この均一周遊券の楽しみのひとつが、色鮮やかなカラー刷りの表紙でした。周遊地域を象徴する民芸品をあしらった12種類12色の表紙と裏表紙の地図は、まだ見ぬ旅先への想いをかき立ててくれ、来るべき幾日間への期待を育んでくれる何ものにも代えがたいものでした。学割証明書を添えて出札窓口で周遊券を購入すると、A券B券を重ね合わせ、やおら引き出しからこの表紙を取り出してくるんだのち、パチンとホチキスで留めてくれる…あの一瞬こそが、「いよいよだな!」という高揚を感じさせる至福の瞬間でした。

ところが、1970年代中盤頃からこの表紙が省略されることが多くなってしまいました。ことに国鉄窓口では表紙を付けてくれないことが多く、仲間は表紙欲しさに、“マルコー”こと日本交通公社や、“近ツリ”こと近畿日本ツーリストの旅行代理店窓口に買いに走ったものです。しかしながら、旅行代理店窓口で購入すると、絵柄こそ同じものの、表紙下には「日本国有鉄道」の文字ではなく、その取り扱い旅行代理店名が入ってしまい、これが何とも残念でした。それだけに、ここに掲げたような「日本国有鉄道」名の表紙は私たちにとっていつも垂涎の的だったのです。
▲12種類の均一周遊券の残りの南半分。「南近畿周遊券」は同デザインで「南近周遊券」と表記されたものもあった。「四国周遊券」は往路か復路に関西汽船の大阪(神戸)?小豆島?高松航路を利用することも可能。

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ところで、この均一周遊券の周遊エリアと出発地の関係について考えてみたことがあるでしょうか。言い代えれば周遊エリアに最も近い出発地はどこか…という問題です。北海道周遊券を北海道内で購入する、つまり北海道内を出発地とすることはもちろんできませんが、青森では購入することができます。同様に九州周遊券の場合は三原が西限。岩国では購入することはできません。当然といえば当然ですが、このことに気づいた時、ある面白い計画を思いつきました。
▲1972(昭和47)年夏の九州均一周遊券B券。闘いの跡。

その計画とは東京発の周遊券で出発し、その周遊エリアを直近出発地とする別の周遊券を買い足すというプランです。当然、周遊エリアに最も近い出発地での発売価格は一番安いはず。つまり2枚の周遊券を持ってふたつの周遊エリアを回ろうというわけです。ただし、この計画には大きな難点があります。東京発の周遊券の有効期限内に戻ってこなければならないのです。コストパフォーマンスから考えると一体良いのか悪いのか…。

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いろいろと下調べしていた甲斐あって、ついにこの計画を実行できる日がやってきました。時に1980(昭和55)年9月。北陸方面の撮影行の後、広島へ行かねばならぬ用件があり、ならばついでに山陰も回ってしまおうと「北陸均一周遊券」+「山陰均一周遊券」のダブル周遊券作戦を企てたのです。ちなみに北陸周遊券で移動できる範囲内での山陰周遊券発売駅の西限は福井。東京で北陸周遊券を買い、信越本線経由で周遊エリアに入り、ひとわたり撮影した後、福井で山陰周遊券を購入、山陰本線経由で山陰の周遊エリアを回り、今度は往復行路として認められている山陽本線で広島へ。広島で途中下車して撮影した後、米原で福井発山陰周遊券の復路を途中放棄して東京発北陸周遊券の復路に入って東海道を一路東京へ…という寸法です。当然、全行程を東京発の北陸周遊券の有効期限の10日(福井発の山陰周遊券の有効期限は14日)内に終えねばならないものの、学割7120円(北陸)+9760円(山陰)=合計16880円也で、往復の行路を含めると、東海道・山陽の全区間、日本海縦貫の宮内・柏崎以西下関までが行動範囲となるわけですからこれは画期的でした。
▲東京発北陸周遊券B券と福井発山陰周遊券A券。復路では東海道を上り、富士の「富士運送」に寄っているため「ふじ」の下車印がある。

ご多分にもれず、社会人となると「均一周遊券」などという悠長なものを使って旅をすることなど不可能となり、いつしかあれほどお世話になった周遊券のことを思い出すこともなくなってしまいました。JR化後もしぶとく生き残っていた均一周遊券がついに廃止となったのは1998(平成10)年のことだったと聞きます。

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