鉄道ホビダス

2006年1月16日アーカイブ

ピントの“芯”。

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広田尚敬さんのご子息で、新進気鋭の写真家として活躍している広田 泉さんから、私の話をご自身のホームページ「鉄道写真.com」で紹介したので…とメールが入りました。いったいどんな話かと思ってさっそくHPを開いてみると、私が語った“ピント”の話を端緒に、もう一度写真のピントに関して再検証してみたという話でした。

実際、毎日膨大な量の鉄道写真に目を通している身からすると、「本当にピントが出ている」写真はそれほど多くないことに気づきます。これは銀塩、デジタルの別に限ったことではなく、例えば特集の写真募集にお寄せいただく作品にしても、極端な話、1?2割は本来のピント精度が出ていないといっても過言ではありません。ご本人はピントが出ていると確信してお送りくださるのでしょうが、残念ながら外れているのです。手ブレ、動体ブレ、レンズ固有の性能、銀塩の場合はさらにフィルムの平面性、等々、その直接の原因はいろいろと考えられますが、何よりも最大の“原因”は「本当にピントが出ている」生の写真をご覧になったことがない、つまりは本当にピントがあっている状態を体感的にご存知ないことにあります。

印刷媒体の誌面では写真はCMYKの4色の網点で再現されますから、誌面で「本当のピント」を伝えることはできません。ですからいくら力説しようとも説得力に欠け、結局は本当にピントの出ている原版を見ていただくしか方法はないのですが、それは物理的に無理というものです。

従来の銀塩、ことにポジ(スライド)の場合、精度の高いピントルーペは必需品です。本当にピントの出ているポジは、銀粒子をかき分けるが如くエッジが立っており、背筋がゾクゾクするほど切れ味が良いものです。ところがえてして多くの方がこのピントルーペを使っておられません。理想的には本当にピントの出ているポジをピントルーペで体感してから、ご自身の作品をルーペでのぞくのが一番なのですが…。
▲ピントルーペの数々。手前の万年筆型のものは製版用の25倍ルーペで、いつも持ち歩いている。上下逆像なので慣れるまではちょっと見にくいが、精度は高い。

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デジタルの場合も、広田 泉さんのHPから引用させていただくと、「本当にシャープな写真というのは100%表示してもピッチリと絹のように繊細な線が出ます。しかしほんの少しでもボケのあるものはシャープをかけても線が太くなるだけで本当のシャープにはなりません」。

では「本当にピントの出ている」写真はどうすれば得られるのか? まず言えることは被写界深度に頼らず、ピントの“芯”を出すことです。絞り込めば絞り込むほど被写界深度は深くなり、疑似的にピントが合う領域は増えます。ただ、本来のピントの“芯”は一点であるはずです。極端な話、絞れば絞るほどピントは良くなるかというと、そのレンズ固有の臨界点以上に絞ると回折現象によってかえってピントは悪くなります。どの絞り値の時にどんな描写をするのか、所有するレンズ本来の性能をあらかじめ知っておくことが不可欠です。
▲折しも広田尚敬さんの新刊『デジタルカメラを生かす鉄道写真』(東京堂出版)が届いた。これまで語られなかった撮影ノウハウも盛り込まれており、撮影ファンには必見。さらに鉄道六誌の顔写真付き編集長インタビューや各誌のインプレッションもあり、その内容は広田さんだからこそ許される辛辣(?)さで、これまた必読。

さらに、これは本当に書きにくいことですが、カメラとレンズの相性、さらには固有の性能にピントが左右されることが少なからずあります。世界に冠たる光学技術を誇る日本の製品だけに、表向きには個体差はないものとされていますが、どっこいこれが大有りなのです。鉄道写真では定番カメラとなっているある機種にしても、数多の作例を見てきた実感からすると「本当のピントが出る」のは3台に1台、残りの2台のうち1台はオーバーホールに入れれば直るものの、最後の1台はどうやっても本来のピントが出ない“ハズレ”です。蒸気機関車全盛期に何回修理に入っても蒸気の上がりの悪い個体を“ボロガマ”と呼んでいましたが、まさにその伝です。

昨今のデジタル一眼でも同じような事例はあり、さるプロの方から伺ったところでは、同一メーカーの専用レンズでさえ、同一機種のA、Bふたつのボディーに付けると明らかにピント精度が違うことがままあると言います。結局、このレンズはAボディー用、このレンズはBボディー用と組み合わせを決め、その組み合わせのままメーカーのプロサービスでピントの“芯出し”のキャリブレーションをしてから実用に供すると聞きます。
普段はなかなかそこまで気にしないピントですが、これを機会に撮りためた作品、そして愛用の機材と、もう一度点検してみては如何でしょうか。

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