鉄道ホビダス

知られざるアプト式鉄道。

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那須高原を走るアプト式鉄道をご存知でしょうか。もちろん鉄道事業法に則った正規の「鉄道」ではなく、いわゆる遊園地鉄道に属するものですが、写真のようにこれがなかなかどうして良い雰囲気を醸し出しています。

東北自動車道那須ICから10分ほどのところにある「りんどう湖ファミリー牧場」を走るその名も“スイス鉄道”がそれで、ゲージは2’6”(762㎜)、軌道延長は600mほど。定員30名の小さな電車2輌が長閑に走り回っています。園内最初の区間の開通が1986(昭和61)年夏といいますから、来年で開通20周年を迎えるわけですが、その割にはあまり趣味誌上にも登場しません。
▲R10の急曲線を半周し「ホルンの森」駅を出る1号。晩秋の木立の中、赤い車体が落ち葉を踏みしめるようにゆっくりと「牧場」駅を目指す。なにか北海道の簡易軌道を見ているような錯覚に陥る。'92.11.29

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路線は、パーク名ともなっている「りんどう湖」(正式名称は「江戸川用水土地改良区農業用温水溜池」といういかめしいもの)の「湖畔」駅を出て、途中駅の「ホルンの森」からラック・レール区間に入って終点の「牧場駅」に至るU字型をしており、ラック区間は延長120mほどとなっています。アプト式というとすぐに碓氷峠旧線の66.7‰が思い浮かびますが、ここ“スイス鉄道”の最急勾配は38‰と控えめです。通常の粘着式でもクリアできる勾配ですが、雰囲気作りも兼ねてあえてアプト式を採用したところにひとかたならぬ拘りが感じられます。
▲「牧場」駅側からラック区間を見る。走行レールの右側に敷設されているのが通電用第3軌条。

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ところでこの車輌、北海道の簡易軌道の気動車のような外観ですが、もちろん気動車ではなく歴とした電車です。では集電はどうしているのかというと、これが面白い。いわゆるサード・レール式、第3軌条式なのですが、通電レールは走行軌条の横にむき出しで敷設されています。途中には踏切もあるのにむき出しの通電レールではあまりに危険…と思われるでしょうが、さにあらず。実はこの電車は低電圧モーターを使用しており、そのスペックは48V8kW。つまり軌道電圧も50ボルト程度で、感電の危険はないのです。
▲全長7.5mのこの電車は“単端式”。運転台は1エンドにしかないため路線の両端で転向しなければならない。始発の「湖畔」駅にはループ線が設けられているが、終端の「牧場」駅の転向方法がふるっている。何と駅そのものがターンテーブルになっているのだ。プランターの花で埋め尽くされた転車台が乗降ホームごとくるりと一回転する。

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さて問題のラック・レールですが、碓氷峠の3枚歯などと違い、極めてシンプルな1枚歯方式です。一見アプト式ではなくシュトループ式のようにも見えますが、歯そのものは板状で、軌条のように底面のある断面のシュトループ式とは異なります。勾配もさほどではなく、車輌重量も控えめ(自重5.3t)なため、1枚歯で充分なのでしょうが、それでもバネ式のエントランスを越えてラック区間に入ると、アプト式特有のカタカタという走行音を体感することができます。
▲「湖畔」駅からしばらくは湖に沿った遊歩道脇を走る。何箇所かある踏切は通常軌道側に柵が閉じられている。
▼バネ式のエントランスからラック区間に入って「牧場」駅を目指す1号車。走行速度は歩いて追いつくほど遅い。
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