鉄道ホビダス

たまには大きな機関車の話も…。

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どうも個人的嗜好から小さい車輌へ話が進んでしまいがちですので、たまには大きな車輌の話もということで、今日はどびきり大きい蒸気機関車、ご存知Big Boyのお話です。

ユニオン・パシフィック鉄道のこの巨大機関車「ビッグボーイ」はよく「世界で一番大きな機関車」であるとされ、日本でも昔から乗り物絵本の常連でしたが、実は単純に“世界で一番”とは言い切れません。試作的なものも含めれば、全長も運整重量もさらに上回る蒸気機関車は存在したからです。ただ、実際に量産され、後世に語り継がれる活躍をしたという面を含めれば、やはり世界一であることは揺るがないでしょう。
▲コロラド州デンバーの"Forney Transportation Museum"に保存されている4005号。一時、オイルバーニング化された経歴を持つ。どうもこの博物館周辺はあまり治安が良くなく、展示車輌も結構荒廃している。'94.9.4

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私がこのビッグボーイの実物を見たのは十数年前のコロラド州デンバーの博物館が最初でした。いや、噂には聞いていたものの、とにかくでかい。全長40.7mとC57の2倍、総重量は540t、エンジン部だけでも318tとC62の3.6倍もあります。直径68インチ(1727mm)の動輪さえも“短足”に見えてしまいます。そして何より驚いたのがそのキャブです。蒸気機関車のキャブといえば狭くて窮屈があたりまえですが、ビッグボーイのキャブは乗務員席が4脚もあり、ちょっとした居間ほどもあります。
▲恥ずかしながら記念写真。まさに小山のような巨躯である。

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ビッグボーイ、正確にはユニオン・パシフィック鉄道4000形は、ソルトレークのほとりのユタ州オグデンからワイオミング州グリーンリバーまでのロッキー山脈越えを補機なしで通し運転することを前提に開発されました。日本のように25‰?33‰といった急勾配ではありませんが、11.4‰の勾配が何と283kmも延々と続きます。東海道本線に例えれば、東京から豊橋の手前あたりまでひたすら登ってゆくわけです。しかも設計時のオーダーは牽引重量5000t、かつ最高運転速度は80マイル(129km/h)というとんでもないものでした。1941(昭和16)年9月、先行機種である「チャレンジャー」(軸配置4?6?6?4)の動軸を2軸増やした4?8?8?4軸配置でビッグボーイ試作機が誕生します。昭和16年9月といえば、わが国では「重要産業団体令」が施行されて、民需向け鉄道車輌も統制下に置かれる状況になった時分です。そんな同じ時に、対戦国は民間鉄道会社がこの巨大機関車を開発していたのですから恐れいります。

この試作機4000号の成功を受け、続いて1次型19輌が、さらに1944年に2次型5輌が増備され、合計25輌となった仲間は、時に現車100輌10000tのワンマイルトレインを牽いて有名なシャーマンヒルに挑みました。最終運用は1959(昭和34)年9月、アメリカのメインライン・ファンにとっては生涯忘れられない日となったはずです。

現在、25輌のうち8輌が各地で静態保存されており、幾度となく復活話が出ては消えています。若干小型の「チャレンジャー」は3985号機が一応動態にあり、数年前にはこれと対面させるためにも動態復活をと、かなり具体的なレベルまで計画が進んだようですが、結局これも頓挫、なおかつ同時多発テロ以降は噂すら出なくなってしまいました。
▲こちらはミズーリ州セントルイスの"Museum of Transportation"に保存されている4006号。UPのクレストも残っている。'00.8.31

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ところで、このビッグボーイ、よく「マレー式の…」と紹介されますが、正確にはマレー式ではありません。マレー式とは、アーティキュレーテッド(関節)式機関車の中にあって、複式膨張(コンパウンド・エキスパンション)シリンダーを持つものをさします。つまり、火室側に固定された高圧シリンダーで一度使った蒸気を、レシーバーパイプを介して前方の台車に付けられた低圧シリンダーに送り込んで再利用する方式で、スイス人のアナトール・マレーによって考案され、パテントとなっています。これに対してビッグボーイは4つのシリンダーすべてが高圧シリンダーであり、一気に全シリンダーに給気する単式膨張(シンプル・エキスパンション)となっています。まぁ、そこまで厳密に区別せずともとも思いますが…。
▲蔵書の中から伝説的な不朽の名著Lionel Wiener著"ARTICULATED LOCOMOTIVES"(1970年)。マレーをはじめとした様々な関節式機関車のバイブルである。

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