鉄道ホビダス

洪 致文さんの力作『台鐵花車百年史』を見る。

20141107193334-69111e72a5f95b278ea5722e258f6e319e408676.jpg
▲『台鐵花車百年史』(中華民國鐵道文化協會出版)の装丁。わが国のB5判より多少左右方向が大きい判型で、巻末付録の形式図を含めて216頁。袖折表紙に箔押しと「花車」に相応しい豪華な造本となっている。

台湾鉄道史研究の第一人者である洪 致文(Hung,Chih-wen)さんから、最新のご著書『台鐵花車百年史』をお送りいただきました。洪さんは現在、国立台湾師範大学地理学系教授をお務めで、これまでにも数多くの鉄道史関連の書籍を執筆されていますが、今回の新刊はその中でも二十年来構想を温めてきた渾身の一作だそうで、その完成度の高さは特筆に値します。

20141107193354-e5b27b2a6d37d29eb81dd8091d257c05f0c6f4c9.jpg
▲1904(明治37)年に鉄道部台北工場で製造された特別車1号(トク1)の竣工時の姿。台車は松葉スポークの台鉄形式TR10/TR11を履いており、日本時代は御料車と同様のため色に塗装されていたという。 (『台鐵花車百年史』より)

表題にある「花車」とはわが国では聞き慣れない言葉ですが、総統が乗るための特別車輌で、わが国で言えば御料車に当たります。もともとは日本統治時代の皇族用車輌に端を発し、機関車や客車が美しい花々によって飾りつけられていたことから「花車」と称されるようになったといいます。もちろんその性格上、一般の目に触れることはなく、従来この「花車」が体系的に語られ、その実像が詳らかにされることはありませんでした。

20141107193418-1b3353ebf8cf9a7d9951c93a145d11292724c471.jpg
▲十年ほど前、南港調車場の花車専用車庫に保管されていた当時のSA4102号(トク1)。'04.2 P:洪 致文 (『台鐵花車百年史』より)

洪さんは台鉄に残されている一次資料はもとより、わが国の御料車関連の資料を含めて悉皆調査を行われ、初出の写真・資料を多数盛り込んで本書を完成されました。写真と形式図を含めた図版の収録点数は実に500点余り、台湾のというよりも、日本の鉄道史の一翼としてもたいへん意義深い一冊となっています。

20141107193438-415721523d6919a3b0d5427a72c6bd8a9c9ea023.jpg現在台鉄には3輌の「花車」が残されており、そのうちの2輌は日本時代からのものです。1輌は御料車を参考に1904(明治37)年鉄道部台北工場で製造されたトク1(現SA4102)、もう1輌は1913(大正2)年同工場製のトク2(現SA4101)で、戦前、日本の皇族が訪台した際や、台湾総督や民政長官が島内を視察する際に使用された由緒ある車輌です。洪さんはこの2輌について内装を含めて徹底的な現車調査を行われ、本書にはその成果が多数の写真・図版とともに収録されています。
▲SA4102号(トク1)の側面に残る「貴賓門」と呼ばれる専用扉の痕跡。'04.2 P:洪 致文 (『台鐵花車百年史』より)

20141107193513-5ed22d10d90f329c04a5156856b1b9241bcb8137.jpg
▲SA4102号(トク1)車内もつぶさに紹介されている。同車の車内は一位側車端からこの供進室、次室(食堂)、主室、臥室(次室)、洗面所・便所で構成されている。なお、側面図などの図版も洪さん作図によるもの。 (『台鐵花車百年史』より)

20141107193535-f3a574cf7721cedc22db48cb9b31e943ef0679b3.jpg
▲もう1輌の「花車」、1913(大正2)年製のSA4101(トク2)。車輌中央部に首座が設けられており側窓も大きいのがわかる。'04.2 P:洪 致文 (『台鐵花車百年史』より)

20141107193554-52350de54d4ef840c2530555bbdd6b389abe5252.jpg20141107193614-75f44c0a4fd7e96f39f9a470f38c7ad99f30bd4a.jpg
▲SA4101(トク2)に残る「貴賓門」。円形の化粧窓は便洗室のもの(左)。右は表紙にもなっている次室のソファーで、側窓上部の明かり取り窓がステンドグラスのように装飾されているのがわかる。'04.2 P:洪 致文 (『台鐵花車百年史』より)

また、清国時代の貴賓車から、日本時代の台湾におけるお召列車、戦後の総統専用列車にいたるまでの運転史についても詳述されており、さらには台東線や阿里山森林鉄道、羅東森林鉄道の貴賓車にまで言及しておられます。わが国のお召列車、御料車に関する名著、星山一男さんの『お召列車百年』(1973年)と対をなす好著と言えましょう。
なお、日本での販売問い合わせはskytrain001@gmail.comまで。

20141024155953-13b50c8b8d46c8fbb8132e50eddd30121e63fdad.jpg

kokutetsu39_AD_520.jpg

kikansyahyoubn01.jpg

レイル・マガジン

2014年11月   

            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
「編集長敬白」が携帯電話でもご覧になれます。下記アドレスもしくはQRコードを読み取ってアクセスしてください。
http://rail.hobidas.com/blog/
natori/m/

ホビダス・マーケット新着MORE

  • 俺がイル
ネコ・パブリッシングCopyright © 2005-2016 NEKO PUBLISHING CO.,LTD. All right reserved.