鉄道ホビダス

タスマニアの保存鉄道を訪ねて。(上)

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140525n703.jpg一昨年のJAM(国際鉄道模型コンベンション)でペーパー製の鉄道聯隊Eタンク(1/48スケール)を発表され(『ナローゲージ模型入門』参照)、同年の軽便鉄道模型祭では小ブログで紹介した北ドイツの島軌道の"ウシ"(編集長敬白アーカイブ「北ドイツのナローを巡る ~「ウシ」のこと~」参照→こちら)をいち早く模型化される(→こちら)など、若手モデラーとしても注目を浴びる谷川雄介さんから、タスマニアの保存鉄道のレポートを頂戴しました。谷川さんもこの春、社会人となられたそうで、いわば卒業旅行。カウンタープレッシャー・ブレーキや水面計の考察など、お若い(失礼...)のに見事な慧眼をお持ちです。
▲タスマニアといえばガラット。今回のレポートの範疇ではないが、パッフィングビリー鉄道では1926年ピーコック製のGクラス・ガラットが動態で活躍中。'14.3 P:谷川雄介
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3月にオーストラリアのタスマニア島にある保存鉄道に行ってきましたのでレポートします。タスマニア島はオーストラリア本土の南東400kmにある北海道程度の大きさの「小さな」島です。

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▲日本人観光客にも人気のパッフィングビリー鉄道。NAクラスの牽く観光列車がティンバートレッスルを行く。'14.3 P:谷川雄介
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現役の鉄道としてはタスマニア州営の鉄道がありますが、不定期の貨物列車以外は走っておりません。しかし、かつては豊富な鉱山資源開発のために多くの路線が存在していたようです。その廃線の一部が保存鉄道となっているのは、英国と良く似たパターンで、軌間はいずれも日本と同じ1067mm(3フィート6インチ)です。今回は、West Coast Wilderness RailwayとDon River Railway をご紹介いたしましょう。

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▲1893年ダブス製のB1ラック蒸機№3のサイドビュー。この角度からはラックエンジン部は見えない。'14.3 P:谷川雄介
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West Coast Wilderness Railway
140525n612.jpgこの鉄道は、その名の通り西海岸の港町Strahan(ストラーン)から、ラックレール(2条のアプト式)で峠を越えて、銅鉱山の町Qweenstownまでを結ぶ35kmのもので、1899年に開業しました。保存鉄道としては、復元作業が1998年から始まり、2000年に部分開業、2002年に全通しています。しかし、温帯雨林と急峻な地形という過酷な環境のためメンテナンス費が嵩み、州の財政難で2013年は半年休業、資金難で再開業も危ぶまれたようですが、ボランティアと民間資本により2014年初頭に再度部分開通しております。
▲ラックレールのエントランス部。'14.3 P:谷川雄介
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2014年現在で運転しているのは、山側の始発駅Qweenstownから峠を越えた先のDubbil Barril(ダビル バリル)までの16kmですが、アプト区間はすべてこの区間にあり、魅力はたっぷりあります。また、タスマニアの観光事業として優秀賞を3回も貰っているそうです。

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▲路線の平面と断面略図。Rinadeenaをサミットとしてラック区間が設けられている。'14.3 P:谷川雄介
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この鉄道の魅力は何と言っても19世紀に製造されたオリジナルのアプト式の蒸気機関車が断崖の桟道のような路線で活躍していることです。動態の機関車は3輌あり、製造は日本のB6も製造した英国のDubs社です。この小さな0-4-2 (B1) のタンク機関車はアプト区間(62.5‰)を上り、峠を越え、再度アプト区間(50‰)を下って温帯雨林内の駅Dubbil Barrilまでを走ります。幸いこの機関車のキャブにラック区間で添乗させていただくことができました。

140525n614.jpg機関車は急勾配対応のために、特徴的なメカニズムを持っています。まず、足回りは、通常の粘着エンジン(外側左右のシリンダ) に加え、台枠内にラック用エンジン(内側左右のシリンダ) があるため、外側台枠になっています。それぞれのエンジンは独立した加減弁で蒸気供給量を調整できますが、カットオフは共通になっていました。弁装置は、それぞれのシリンダにワルシャート式が取り付けられています。ラックエンジンの動きは、ファンサービスとして、ラックレールの無い駅構内での停車中に空転させて見せてくれました。(動画参照↓)
▲№3のキャブ内。1963年に一旦廃車となり、その後レストアされている。'14.3 P:谷川雄介
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▲上のサムネール画像をクリックすると、「今日の一枚The Movie」の動画をご覧になれます。

140525n615.jpg上まわりは典型的な英国型ですが、煙突後ろのブレーキ排気筒やボイラの前後中心部分につけられた水面計、スチームドーム前から前述の4つのシリンダに伸びる蒸気管が特別仕様であることを物語っています。水面計の位置は蒸機にとって死活問題であり、ボイラの中央に取り付けるというのは勾配の変化が激しいラック用ならではです。
▲ボイラ中央部に取り付けられた水面計。キャブからの視認性は決してよくなさそう。'14.3 P:谷川雄介
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140525n610.jpgブレーキ排気筒は下り勾配でカウンタープレッシャーブレーキ(反圧制動)を用いた際のシリンダ排気を逃がすものです。また、反圧制動中はシリンダが真空ポンプとして作用しますので、 通常の機関車ならば煙室のブラストパイプから煤を吸い込むことになりシリンダが故障してしまいます。そこで、この機関車ではブラストパイプにもバルブを設けてキャブから開閉可能にしています。また、シリンダ背圧計もキャブに備えられ、反圧制動の状況が確認できます。さらに、乗車した3号機は煙突が漏斗状のレムパー煙突で燃焼の排気効率を高める改造をしております。なお、蒸気は飽和蒸気、現在の燃料は軽油です。
▲加減弁ハンドルはアドヒージョン用とラック用とが並んでいる。'14.3 P:谷川雄介
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