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「へっつい」と呼ばれた機関車たち。

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▲信達軌道(後の福島交通軌道線)保原町を行く「へっつい」。牽引する客車との対比で背の低さが知れよう。ちなみに「へっつい」とは民家の土間に設けられた竈の意味。志賀直哉が短編小説『真鶴にて』のなかで熱海鉄道の機関車を「まるでへつつひだな」と描いたことに由来する。絵葉書所蔵:白土貞夫 (RMライブラリー『「へっつい」の系譜 −低重心超小型機関車の一族−』より)
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今月のRMライブラリーは湯口 徹さんによる『「へっつい」の系譜 −低重心超小型機関車の一族−』をお届けします。前号では本シリーズとしては比較的近年の内容でお届けしましたが、今月は打って変わって明治から大正にかけての内容が中心です。

121119rml160.jpg本ブログをご覧の方々には"釈迦に説法"かとは思いますが、「へっつい」とは明治後期から大正初期にかけて誕生した一部の軽便鉄道用蒸気機関車の通称です。そのルーツは1905(明治38)年に小田原〜熱海間の豆相人車鉄道(後の熱海鉄道)が動力化のために導入したボールドウィン機とされており、それまで人車しか通らなかった軟弱な軌道に対応するため、軽量かつボイラーの中心高を極端に下げた特異な構造が特徴でした。

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▲豆相人車鉄道(→熱海鉄道)が導入したボールドウィン機。当初は海外のトラムロコのように全面屋根付きであった。
 (RMライブラリー『「へっつい」の系譜 −低重心超小型機関車の一族−』より)
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その後、石川島造船所や雨宮鉄工所などの国内メーカーでこのボールドウィン機を範とした兄弟ともいうべき機関車が続々と誕生しました。大日本軌道各支社をはじめとした全国各地の軽便鉄道に投入された「へっつい」の総数は60輌程度と推測されます。

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▲大日本軌道の総帥、雨宮敬次郎率いる雨宮鉄工所では「へっつい」を量産。配下の各支社で使用した。左下は最後の現役「へっつい」であった中勢鉄道キ21。背後の職員との対比でその小ささがわかろう。 (RMライブラリー『「へっつい」の系譜 −低重心超小型機関車の一族−』より)
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このように一世を風靡した「へっつい」一族でしたが、低重心がゆえに屈んだような状態での運転を強いられるなど、その操縦性は決してよいものではなかったはずです。そもそも豆相人車→熱海鉄道以外の各鉄道ではそこまで重心を下げる必然性はなく、やがて一般的な軽便用蒸気機関車の導入、あるいは路線自体の改廃によって、元号が「昭和」になる頃には大半が淘汰されてしまいました。最後まで現役、というよりも例外的に長命だった三重県・中勢鉄道(旧大日本軌道伊勢支社)の「へっつい」が1943(昭和18)年に消えた(路線廃止)のを最後に、その命脈は途絶えてしまったのです。

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▲雨宮機の組立図と、鷹取工場技能者養成所で"標本"となっていた越中島機。この越中島機が現在熱海駅前に「熱海鉄道7号機」として保存されている現存唯一の「へっつい」である。 (RMライブラリー『「へっつい」の系譜 −低重心超小型機関車の一族−』より)
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これら「へっつい」の一族について、数々の未公開写真や図面を用いて、はじめて系統だてて解説・発表するのが本書です。著者は島秀雄記念優秀著作賞も受賞した本シリーズ第103・104巻『日本の蒸気動車』、第115巻『石油発動機関車』などでもおなじみの湯口 徹さん。内燃車輌研究の泰斗が挑まれた日本の鉄道車輌史の「空白部分」を埋める一冊、ぜひ書架にお揃えください。なお、本書にも多くの未公開写真をご提供いただいているニューヨーク在住の研究家Dan Free氏の来日講演会が来る12月2日(日曜日)に交通科学博物館で開催されます(→こちら)。千載一遇の機会でもありますので、ぜひお運びください。

※「へっつい」関連の編集長敬白アーカイブ
熱海の"へっつい"を見る→こちら
「わんぱくらんど」の"へっつい"→こちら

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