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驚異の『国有林森林鉄道全データ(東北編)』。

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▲収録されている膨大な再現路線図の一例。一般の地形図ではなく森林管理署(旧営林署)の管内図上に路線を再現したもの(約1/6200縮尺)で、森林鉄道研究にとって図上の情報量は圧倒的。 (『国有林森林鉄道全データ(東北編)』より)
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東北森林管理局長の矢部三雄さんから、『近代化遺産 国有林森林鉄道全データ(東北編)』(定価2500円+税/秋田魁新報社)をお送りいただきました。昨日、6月26日発行の最新刊で、B5判304ページに盛り込まれた資料はまさに驚異的。ついに"真打"登場の感がいたします。

touhokushinrin010n11.jpg昨年夏に仁別森林博物館で開催された「森林鉄道企画展」の驚くべき内容(編集長敬白アーカイブ「仁別森林博物館を訪ねる」参照→こちら)についてはご記憶にある方も多いかと思いますが、本書はその展示内容をさらに深化させたもので、東北森林管理局(旧青森営林局・秋田営林局)管内に存在したすべての森林鉄道(森林軌道)を局管理資料に基づいて詳らかにした画期的なものです。ここで言う局管理資料とは主に土木台帳、林道台帳で、いわば森林鉄道の戸籍・登記簿のようなもの。登記番号、延長、平均勾配、最急勾配、最小半径、財産区分、経費、修繕経緯などが克明に記録されており、いかなる支線もこれに漏れることはないはずです。

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▲戦前からの膨大な土木台帳、林道台帳から資料作りが始まった(左)。右は333路線、総延長2,135を記録した1950(昭和25)年時点での森林鉄道位置図。 (『国有林森林鉄道全データ(東北編)』より)
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矢部さんは東北森林管理局長の要職に就かれてこの台帳の発掘に尽力され、昭和11年の土木台帳規定の制定を受けて作成された現存最古と思われるものから暦年順にその記載内容を読み取られ、最終的にはその膨大な資料を路線(本線、支線、分線)、名称、読み方、等級、実行年度ごとの開設延長、平均勾配、最急勾配、最小半径、幅員および廃止年ごとの廃止延長と転換先に分類されてデータ化されました。ちなみに読み方はすべて現地確認をされたとのことです。

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▲下北半島のふたつの大規模森林鉄道、大畑森林鉄道と川内森林鉄道を接続しようとする計画「下北半島森林鉄道重兵衛越」も今回初めて明らかになった。実現はしなかったものの、実測図が現存しているという。 (『国有林森林鉄道全データ(東北編)』より)
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巻頭には読み物的記事も10編収録されております。「下北半島縦貫森林鉄道構想」や「分水嶺を越えた森林鉄道」、「自署運用ができない小阿仁林道、藤琴林道」など、貴重な一次資料に裏付けされた専門家(いや当事者か...)ならではの記事の数々は、ナローゲージャーのみならず心ときめくに違いありません。

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▲仁別森林博物館(アーカイブ「仁別森林博物館を訪ねる」参照→こちら)のある「国民の森」への保存機搬入の状況なども紹介されている(左)。各署別にきわめて詳しく路線の消長が紹介されている(右)。 (『国有林森林鉄道全データ(東北編)』より)
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再現路線図についてはすべてカラーで掲載されており、驚くべきはそのベースとなっているのが一般的な国土地理院の地形図ではなく、各森林管理署の業務用として使われている管内図であることです。編集を担当された財団法人日本森林林業振興会秋田支部・青森支部が不明な点は手分けして関係者や地域住民への裏付け調査を行って管内図にプロットしていったとのこと。ちなみに、それでも管内図が現存していなかった旧岩手営林署の松川林道、松尾林道など一部は推定ルートとせざるを得なかったとの注記があり、そのご努力たるや感動ものです。

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▲後半には貴重な写真の数々が30頁にわたって収録されている。青森運輸営林署の大規模な修理工場内部の様子や、浅野物産製代燃機関車の写真など初見のものも多い。 (『国有林森林鉄道全データ(東北編)』より)
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巻末には資料編としてこれら各署別、各線別のデータを集約した「東北森林管理局管内森林鉄道全路線一覧表」が収録されており、これはインデックスとしても便利なものとなっています。なお、各章の扉には画家の田村まさよしさんが描かれた津軽森林鉄道跡のスケッチ画が用いられており、データ密度の高い本書の中にあって、これは一服の清涼剤ともなっています。

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▲巻末資料編の「東北森林管理局管内森林鉄道全路線一覧表」は各線の正確な読み方や概要のほか、1910(明治43)年から1970(昭和45)年までを13期に区切って各期の延長距離も収録している。 (『国有林森林鉄道全データ(東北編)』より)
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巻頭言を矢部局長は「この東北編の発行を契機として、全森林管理局管内の森林鉄道の記録が世に出されることを大いに期待したい」と結ばれております。従来の営林局史のようなものと異なり、「全国の森林鉄道ファンの方々にも手に取っていただくことを願っている」(同じく矢部局長巻頭言)とされる本書は、いわば本邦初の森林鉄道に関する"オフィシャル本"であり、その意義は限りなく大きいと申せましょう。
なお、さっそく「書泉グランデ」さんに本書の取扱いをお願いいたしましたので、東京在住の方は店頭で現物をご覧になったうえでご購入いただくことが可能です。

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