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TR1とTR2 阪堺の"秘蔵っ子"拝見。

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▲デト11(右)と顔を揃えたTR1とTR2。両車が定位置のトラバーサー南側を離れてこの北側にやってくることはきわめて稀。'10.12.19 我孫子道車庫
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一般運用されている現役の電車としては最古の存在となったモ161形がひときわ人気の阪堺電気軌道。その我孫子道を出て左手に工場を見ながら大和川の橋梁へと築堤を登ってゆく車窓に、ほんの一瞬見慣れない超小型車輌が掠めるのをご存知の方もおられることと思います。これが今までほとんど紹介されたことのない阪堺の"秘蔵っ子"TR1とTR2です。

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▲TR1の晴れ姿。車体中央の櫓はかつての電動貨車のポール櫓で、運転室屋根上に搭載されているパンタグラフも当初はこの櫓の上に載っていた。櫓下の箱には抵抗器と元空気溜が収納されている。'10.12.19 我孫子道車庫
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TR1とTR2は残念ながら車輌ではなく機械扱いで本線に出ることはできませんが、ともに戦前からの来歴を持ち、いわば阪堺の"主"のような存在です。本誌ではこの2輌にスポットを当てるべく、同社の特別のご協力を得て詳細に取材を行いました。

110302n9.jpgTR1の出自は1944(昭和19)年に遡ります。我孫子道車庫(当時は大和川分工場)のトラバーサー・ピットの南側の線は敷地の関係でほとんど有効長がとれず、単車程度しか入ることができません。これは現在でも同様の状況なのですが、こうなると工場建屋から自走できない入場車をトラバーサー上に引き出す役目を担えるのは全長の短い単車だけとなってしまいます。しかも今度はトラバーサーで転線させた入場車を押し出すためにもう1輌の単車が必要ということになります。
▲TR1の運転台。ダイレクトコントローラーは発電制動付きのゼネラル・エレクトリック製B18だったが、現在はAEG K‐14に取り替えられている。'10.12.19 我孫子道車庫
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戦前はこの役目を2輌の散水車(もちろん単車)が受け持っていましたが、1944(昭和19)年にそのうちの1輌が他社に譲渡されることとなり、やむなく手持ちの電気品と資材を用いて"自作"されたのがTR1でした。戦時中の中断をはさんで完成は1950(昭和25)年6月。電動貨車からの発生品という"櫓"を中央に構え、その上に63形についていたという三菱製パンタグラフを載せたなんともユーモラスな姿での誕生でした。

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▲TR1に続き、今度は散水車を改造して製作されたのがTR2。台車はブリル21E。6本のリベットで止められた台枠部の帯金はかつての散水タンク締結用。'10.12.19 我孫子道車庫
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▲TR1の運転台。ダイレクトコントローラーにはAEG(アルゲマイネ)の陽刻が! '10.12.19 我孫子道車庫
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その後、もう1輌の散水車もこのトラバーサー引き出し・押し込み専用に改造されることとなり、こちらは水タンクを外して簡単なキャブを誂え、現在のTR2となりました。

110302n8.jpg形態的には単純な車体形状のTR2よりTR1に軍配が上がりそうですが、TR2の方は散水車時代のブリル21E台車がしっかりと残っており、しかもアルゲマイネ(AEG)製のダイレクトコントローラーが"今なお現役"で使われているなど、まさに歴史的鉄道遺産といっても過言ではありません。いずれにせよこの2輌、今年12月に開通100周年を迎える阪堺線の歴史の大半を裏方に徹して護り続けてきたわけで、その面でも頭が下がる思いがいたします。
▲TR1、TR2ともに運転席はなく立って運転する。右側の箱には抵抗器が収められている。写真はTR2。'10.12.19 我孫子道車庫
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▲TR1(左)とTR2(右)のバックビュー。なんともユーモラスな後ろ姿だ。'10.12.19 我孫子道車庫
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我孫子道車庫にはもう1輌、魅力的な事業用車がいます。1954(昭和29)年生まれのデト11で、こちらも十年ほど前に車籍は失っているため本線での走行はできませんが、構内での入換えなどに元気に働いています。

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▲デト11のプロフィール。1954(昭和29)年11月帝国車輌製で、運転室前面の強いRがチャームポイント。'10.12.19 我孫子道車庫
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かれこれ24年も前になりますが、本誌48号(1987年12月号)で「デト・モト探検隊」を銘打った小特集を企画したことがあります。当時、最後の活躍を続けていた国鉄の配給電車(クモル145、クル144)の特集にちなんで私鉄の電動無蓋貨車を総覧したもので、この時現役だったのは14社34輌。いまさら見返してみると、今ではそのほとんどが過去帳入りしてしまっています。そんな中でこの阪堺デト11が変わらずに今日でも活躍を続けているのはなんとも嬉しい限りです。

※この「阪堺の秘蔵っ子トリオ」については、発売中の本誌誌上で片野正巳さんのイラストを交えて詳細に紹介していますのでぜひご覧ください。こちら

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