鉄道ホビダス

日本鉄道保存協会総会より。(上)

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▲北海道の秋は一気に深まる。またとない好天の下、雨宮21号の牽く特別列車が錦秋の湖畔を駆ける。客車のデッキで熱心に視察しているのは、同じ森林鉄道の保存に取り組む高知県馬路村・やなせ森林鉄道運営委員会の清岡会長。馬路村は総勢16人の大視察団を組んでの参加となった。'10.10.7
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先週、10月7日(木曜日)から9日(土曜日)までの日程で日本鉄道保存協会の2010年度総会が開催されました。今年の開催地は北海道・遠軽町。5年ほど前に生田原町、丸瀬布町、白滝村と合併した遠軽町は、その面積1,332.32㎢と全国2番目の広さを持つ町で、私たちファンにとっては石北本線の要衝としても広く知られています。

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▲特別に2列車同時運行が行われ、雨宮21号の牽く列車と、鶴居村簡易軌道の生き残りである運輸工業製DLの牽く列車がすれ違う。'10.10.7
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思えば前回、広域合併前の丸瀬布町でこの日本鉄道保存協会総会が開催されたのは1994(平成6)年8月のことですから、実に16年ぶりに戻ってきたことになります。個人的には3年前に森林公園いこいの森を訪れており(アーカイブ「丸瀬布いこいの森を訪ねる」参照)、さほど久しぶりという感覚はありませんでしたが、佐々木修一町長をはじめとする遠軽町の皆さんのエスコートで、"一見"では決して気づかないさまざまな町の表情を知ることができました。ちなみに今回の総会は、主開催地団体は遠軽町ですが、せっかく近隣までお出でになったのなら...と、"りくべつ鉄道"の動態保存を進める陸別町、旧士幌線のコンクリートアーチ橋の保存・利活用に取り組む上士幌町も招聘下さり、3町を巡る2泊3日とこれまでにない密度の高い行程となりました。

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▲北海道教育大学の今 尚之准教授による基調講演「北海道の近代化遺産の保存と活用」(左)。右は開催地団体として奔走された佐々木修一遠軽町長。'10.10.7
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いこいの森の雨宮21号を見学後、マウレ山荘の大広間で総会が開催され、事業報告、会計監査報告といった堅苦しい議事ののち、北海道教育大学の今 尚之准教授による基調講演「北海道の近代化遺産の保存と活用」が行われました。15年ほど前に北海道教育委員会によって手探りで始まった道内の近代化遺産調査はまさに模索の連続で、交通カテゴリーに「大通公園」(通りだから...?)がノミネートされるなど、今では笑い話になるようなさまざまな紆余曲折があったようです。
北海道ならではのニシン漁や石炭鉱業の遺構を保存するにせよ、単に番屋や機械類だけを残すのではなく、「一構え」=システムとしてどう機能していたのかを後世に伝えてゆくことこそが本来の近代化遺産の保存だという今先生のお話は、全国各地から集った参加者の皆さんの大きな共感を呼んでいました。

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▲82歳を迎えてますますエバーグリーンの輝きを放つ雨宮21号。北海道遺産にも指定されている。'10.10.7
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開催地団体からの報告では、雨宮21号を護り続けている産業課の小山信芳係長から同機のこれまでの歩みが説明されましたが、保存に至る経緯についてはこれまでほとんど知られることのなかった事実も詳らかにされ、実に興味深いものでした。
1951(昭和26)年からのディーゼル機関車導入によって、雨宮21号は僚機とともに1957(昭和32)年3月には廃車・解体される予定でしたが、林業とともに歩んできた地元の熱意がこれを抑え、処分価格10万円を積み立てて雨宮21号のみがスクラップを免れることとなります。ところが一難去ってまた一難、1969(昭和44)年春に、群馬県沼田市に設けられた研修施設(現在の林業機械化センター)の展示候補に挙がり、林野庁は雨宮21号の群馬への移管を計画します。この時も丸瀬布町はこぞって反対署名を集めてこれを阻止。かくして雨宮21号は丸瀬布を出ることなく、1976(昭和51)年には所有権が正式に町へと移管され、今や北海道遺産にまでなって元気に活躍を続けているのです。

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▲遠軽駅を出る石北本線貨物8073列車後補機。DD51のプシュプルが農産物の"動脈輸送"+リサイクル廃棄物の"静脈輸送"を受け持っている。ちなみにこの日は上り団体臨時列車との交換の関係で時変がかかり、所定より12分の早く遠軽駅を発車していった。'10.10.8
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▲煙の絶えなかった遠軽機関区の扇形庫は跡形もなく、転車台だけが名残を留めている(左)。右は今も変わらぬ遠軽のシンボル瞰望岩(がんぼういわ)。遠軽駅開業以来、駅構内を見下ろし続けている。'10.10.8
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この話にはさらに後日談があります。同時期に置戸森林鉄道の3号機(ボールドウィン)が廃車となって保管されており、林野庁は抜き打ち的にこの置戸森林3号機を沼田に移管することを決定、当時の北海道新聞は「明暗を分けた2台」のタイトルでこの経緯を紙面で紹介しているそうです。事と次第によっては、小ブログでもたびたびご紹介している「よみがえれボールドウィン実行委員会」は「よみがえれ雨宮実行委員会」になっていたかも知れないのです。

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▲日本鉄道保存協会加盟団体をはじめとした総会参加者の皆さん(一部)。'10.10.7
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先述のように雨宮21号は2004(平成16)年10月に北海道遺産に指定され、今や遠軽町のみならず道内の"お宝"として大きな脚光を浴びています。遠軽町では今後、この雨宮21号機を軸に森林鉄道車輌の保存・利活用にさらなる取り組みを行ってゆく予定だそうで、耳を疑うようなサプライズ計画も動き始めています。

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