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▲洋上に浮かぶ小島Nordstrandischmoor(画面右上)へと北海を渡る600㎜の軌道。今もって実用の交通手段として利用されているが、さすがにこの状態では"世界で最も乗りたくないナロー"のひとつかもしれない。'10.9.17 Luttmoorsiel
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第1回:世にも不思議なNordstrandischmoor軌道。
遅い夏休みをいただいて2年ぶりにヨーロッパに行ってまいりました。と言っても、もちろん観光目的ではなく、今回の旅のターゲットは北ドイツに点在するナロー、しかもインダストリアルナローです。ハンブルク近郊にはいまだにターフ(ピート)採掘用の軌道がいくつか残されていますが、一部には環境条例の改定によって2012年をもって採掘が禁止されるとの観測もあり、いわばお尻に火が点いた状態での訪独となりました。
それでは、何回かに分けて、この北ドイツのナロー巡りの旅をお伝えすることにいたしましょう。なお、あくまで不定期での掲載となりますことをあらかじめご承知おきください。
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▲今回ご紹介するNordstrandischmoorと、のちに詳しくご紹介するOland-Langenessのふたつの軌道の位置関係。ともにデンマークに近いドイツ最北部の北海上に浮かぶ小島である。
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日本からハンブルクへの直行便はなく、単身、アムステルダム経由でハンブルク空港に降り立ったのは成田を発って16時間余り、現地時間は22時をとっくに回っていました。例によってこの手の旅の"極意"は、食べる・観るといった海外旅行らしさ(?)を如何に排除して体力を温存するかにあります。この日もジャンクフードを携えてお決まりのibisホテルチェーンにチェックイン。明日早朝からの行動に備えることにしました。
実は今回のもうひとつの大きな目的は、ターフ軌道のほかに北海に浮かぶ孤島への軌道探訪にありました。オランダからドイツにかけての北海沿岸には小さな島々が連なっており、現在でも島内で観光鉄道を走らせている例が少なくありません。そんななか、デンマーク国境にほど近いユトランド半島西部には、本土から島への実用輸送手段としていまだにナローゲージの軌道を使用しているサイトが二か所あります。ただ、海外のウェッブを見てもこれらの軌道に関しての記述は少なく、行き当たりばったり、行ってみなければ実態が判らないというのが正直なところでした。
▲戦前はドイッツ製のいわゆる"オットー"が活躍していた。(Luttmoorsielの歴史案内看板より)
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▲沿岸整備局とも呼ぶべき官庁所有の列車。機関車は1968年製のSchoma(CDL10形・製番3104)で、なんともかわいい。'10.9.17 Luttmoorsiel
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▲さらに小型のキャブレス機は1956年製のDiema(DL6形・製番1870)。ヤードには島の住民のプライベートカー(?)と思しき車輌たちも留置されている。'10.9.17 Luttmoorsiel
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▲Nordstrandischmoor島住民用の連絡車。宿泊客を乗せたこの車輌が、食材などを載せた無蓋車を牽引してよろよろと北海を渡ってゆく。'10.9.17 Luttmoorsiel
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ハンブルクからレンタカーを飛ばすこと2時間あまり、まず訪れたのはGoogle Earth で現存を確認したNordstrandishmoor(ノルトシュトランディッシュモール)と呼ばれる小さな島への軌道です。国道を離れて見渡す限りの干拓地をひたすら走って北海の堤防に出ると、そこには言葉を失う光景が...。遙か洋上に浮かぶ孤島に向けて伸びる600㎜ゲージの軌道が波しぶきを浴びているではないですか。聞けば島には4軒しか建物がなく、しかもうち1軒は教会、もう1軒は学校で、残り2軒が民宿を営んでいるとのことです。ちなみに学校に通っているのはこの民宿の子供3人。この人たちの日々の生活と、宿泊客の輸送が洋上の600㎜の軌道に委ねられているのです。
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▲堤防上から沿岸整備局車庫(右奥)をのぞむ。天候は急速に回復し、ヤード上には見事な虹が架かった。'10.9.17 Luttmoorsiel
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▲ヤード(左写真右奥)を出た軌道は斜面を駆け上がって堤防上に出、スイッチバックするかたちで今度は海岸へと下りてゆく。'10.9.17 Luttmoorsiel
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船で渡れば造作もないこと...と思いがちですが、この付近は広大な干潟となっており、しかも潮の干満の差が大きく渡船が使えないそうで、21世紀の現在にあっても島との最短の往来はいまだにこの原始的な軌道に頼らざるをえないのです。かつては内陸側の干拓地も広大な干潟で、軌道延長は6㎞ほどあったようですが、現在は短縮して3.5㎞ほど。Luttmoorsiel(リュットモールジール)と称する起点には沿岸整備局とでも言うのでしょうか、官庁のヤードが広がっており、各種の車輌や資材が置かれています。また、周辺はサンクチュアリとしても知られているようで、バードウォッチャーたちが集う小さなカフェも設けられています。
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▲ノルトシュトランディッシュモール島に日が暮れようとしている。強風に流された雲間から、後光のような鋭い陽が洋上の軌道を照らす。あいかわらずの寒さの中、何かの啓示の如きこの光景を、しばらく茫然と見つめていた。'10.9.17 Luttmoorsiel
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この軌道は4日後に再訪することになるのですが、さらにクルマで30分ほど北上したDagebull(ダゲビュール)から出ているもう1線の"島軌道"Oland-Langeness線のあまりの凄さに、今回の旅の主目的はターフ軌道から島軌道へと見事に変わってしまいました。その辺はまた後日...。
※これまでにご紹介した主なヨーロッパのナローゲージ(実物)関連記事
●項目をクリックするとそれぞれのアーカイブに飛びます(ただし、動画はすでにリンクが切れていますのでご了承ください)。
●レイトン・バザードのハロウィン(イギリス/2009年10月)
●世界最古の桟橋ナロー Hythe Pier Railway(イギリス/2009年1月=3回連載)
●レイトン・バザードの秋(イギリス/2008年10月=2回連載)
●ノルマンディーに欧州最古の現役内燃機関車を訪ねる(フランス/2008年7月=3回連載)
●"リリプット"の森(フランス/2008年6月=3回連載)
●惜別! ライン河軌道(スイス・オーストリア/2007年8月)
●老人ホームの「給食軌道」(オーストリア/2007年7月=3回連載)
●ヘレンタールバーンとナスバルトバーン(オーストリア/2007年3月=2回連載)
●アッペンツェラー・バーンの残り香(スイス/2007年2月)
●知られざるもうひとつのレーティッシェ・バーン(スイス/2006年2月=2回連載)
●アイルランドに欧州最大のナローゲージ網を訪ねる(イギリス・アイルランド/2006年1月=13回連載)
●ひとりぼっちの「RhW」(スイス/2005年10月=2回連載)
●12年ぶりのライン河上流工事事務所(スイス・オーストリア/2005年10月=10回連載)






