鉄道ホビダス

2010年8月 9日アーカイブ

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▲素晴らしい状態で保存されている伊予鉄道1号機。1967(昭和42)年10月14日付けで鉄道記念物に指定されている。'10.6.25
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夏目漱石の小説『坊つちやん』に登場したことから、「坊っちゃん列車」として全国的に有名となったのが、伊予鉄道創業期の蒸気列車です。もっとも小説『坊つちやん』では「マッチ箱のような汽車」と記述されているだけで、とりわけ詳述されているわけでもなく、いつの間にか有名になっていたというのが真相かもしれません。2001(平成13)年には外観を忠実に模した軌道線用のディーゼル機関車D1・D2形が誕生して、「坊っちゃん列車」は今や伊予鉄道を象徴する観光資源となっています。「坊っちゃん列車」の機関車は伊予鉄道本社前に置かれているものをはじめ、数多くのレプリカが存在します(アーカイブ「越中島の"坊っちゃん列車"」参照)が、唯一の本物は高浜線沿いにある梅津寺公園に保存されています。

100809n640.jpg伊予鉄道"甲1形蒸気機関車"は1888(明治21)年に神戸以西では最初の私鉄として開業した同社が、東京の代理店・刺賀商会を介してドイツのクラウスから輸入した自重6.1tのウェルタンク機で、1888年に2輌(製番1774・1775)、1891(明治24)年に2輌(製番2584、2585)が導入され、1~4号となりました。その後"甲2形"(5~6号)、"甲3形"(7号)、"甲5形"(11~14号)、"甲6形"(15)号と、同系列のクラウス製Bタンク機合計12輌が松山の地を走り回ることになります。
▲キャブ横に付けられたクラウスのエージェントであった刺賀商会の銘板。1888年製番1774の文字が見える。近藤一郎さんの著書『クラウスの機関車追録』によれば、クラウス側の受注は同年2月4日、出荷は5月19日だったという。'10.6.25
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▲驚くほどの整備状態を保つ足回り部。クラウスの特徴でもある傾斜した弁室に注意。'10.6.25
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▲弁装置は外側スチブンソン式(左)。右はビッグエンド部に残る「2585」の打刻。「2585」は3号機のもの。'10.6.25
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▲火室下部を見る(左)。灰落としハンドルも残されている。連結器はスクリュー&リンク式で、緩衝器は中央に1基備わる(右)。'10.6.25
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▲インゼクタや水面計も復原され、見事に整備されたキャブ内。運転台は右側。'10.6.25
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郡中、横河原・森松線は戦後も非電化のまま残され、郡中線は1950(昭和25)年までに電化を達成したものの、横河原・森松線では相変わらずこのクラウス機が主力を務めていました。しかし、車輌そのものの老朽化に加えて石炭価格の高騰によって内燃動力化を図ることとなり、まず6号機(1898年製)が森製作所の手によってディーゼル機関車化改造されました(拙著『森製作所の機関車たち』参照)。このDB1を端緒に同社は1954(昭和29)年までに完全無煙化を達成、1号機関車は記念物として道後公園に保存されました。

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▲編成を組んで展示されている2軸客車は、貨車の足回りを流用して再生されたレプリカ 。'10.6.25
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100809n654.jpg現在、梅津寺公園に保存されているのはこの1号機で、貨車の足回りを利用して再生された2軸客車とともに素晴らしい状態で展示されています。もっとも、道後公園保存時はかなり荒廃の度を深めてしまっていたようで、1965(昭和40)年に愛媛大学に寄贈されていた3号機の部品を利用して伊予鉄道自らの手で大修理が敢行されました。このため各部品の打刻を見ると、3号機の製造番号2585を発見することができます。ちなみに、鉄道記念物に指定された説明板には「米1升が4銭5厘の時代に、9700円でした」との解説が見られます(近藤一郎さんの著書『クラウスの機関車追録』によれば出荷時の価格は8200マルク)。
▲軸箱蓋には伊予鉄道の社紋が入れられている。'10.6.25
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▲現在の展示状況。梅津寺公園入口を入ってすぐ右側に展示されている。梅津寺公園の入園料は50円。'10.6.25
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保存場所である梅津寺公園は昨春までは遊園地「梅津寺パーク」として知られていましたが閉園、現在は梅津寺公園と名称を変えて公開されています。1号機関車はこの際に再整備されたとのことで、見事な状態に保たれており、伊予鉄道を訪問された際にはぜひとも足を向けてみられることをお勧めします。

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