
▲一部新製されたサイドタンクとキャブが主台枠に載せられ、いよいよ全体像が見えてきたE103。'09.2.24 Blankenburg P:U.Przygoda
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2002(平成14)年に静態保存されていた丸瀬布いこいの森から生まれ故郷のドイツに里帰りしていった旧鉄道聯隊E103号ですが、現地在住の木村右史さんから最新情報が届きましたのでさっそくご紹介してみることにいたしましょう。彼の地の保存鉄道に対する取り組み方も理解できる興味深いレポートです。
旧日本陸軍鉄道聯隊の機関車が西武鉄道での砂利運搬など紆余曲折の生涯を過ごした後、北海道丸瀬布からドイツに里帰りしたのが2002年。このコッペル製機関車のその後の様子を報告いたしましょう。
この機関車については既に様々な記事が書かれていますが、基本的にドイツの鉄道聯隊で使用された機関車と同型であり、走り装置には野戦鉄道での急曲線通過のためにルッター・メラー(Luttermöller)式と呼ばれるギヤを使用した動軸遊動機構が採用されています。
▲取り外された煙突とドームのケーシング。バキュームホースの巻き取り座があるサンドドームは新製されたもの。'09.2.24 Blankenburg P:U.Przygoda
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5動軸でこの方式の機関車はドイツでも保存例がなく、引き取り先であるフランクフルト軽便鉄道博物館(Frankfurter Feldbahnmuseum、軽便鉄道とドイツ語のFeldbahnは意味が異なりますが、ほかに適切な訳が見つからないのでこのまま使用します)の見解では、歴史的・文化的に保存価値の非常に高い車輌という評価が与えられています。フランクフルトでは動態復元を最終目標にレストアが進められており、一日も早く復活を目にしたいものです。


▲完全に分解されてレストアされるボイラー。最終的には動態化を視野に入れた作業が続く。'09.2.24/'08.10.18 Blankenburg P:U.Przygoda
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このフランクフルト軽便鉄道博物館、博物館という名がついていますが基本は同好会、クラブです。ドイツではこういった同好会に対しては税金控除などの特典が与えられていますが、その代わり文化活動を通じて地域住民に還元する事が要求されます。そのため鉄道車輌の収集・レストアを主目的にしているクラブは自ずと博物館と命名される事が多いのですが、これは日本の公的団体が運営する博物館とは意を異にします。彼らは主に会員とヘルパーからなり、小さいクラブでは主に会費のみで運営されています。地元の企業がスポンサーになることもありますが、これは現物支給、技術的援助である場合が多いようです。
フランクフルトは、そういった軽便鉄道博物館としてはドイツで最大規模のクラブで、その活動も敬意をもって評価されています。こういった博物館は週末や特定の日に一般客に解放され、活動内容の説明、軽便鉄道や車輌の解説や運転が行われます。またテーマに沿ったフェスティバルが開催される事もあります。日常的には車輌の確保、レストア、車庫・倉庫などの拡充、線路の敷設、部品や工作機械の調達、事務作業など山積みの仕事をこなさなければなりません。それだけに、積極的な会員は余暇の大半をクラブの活動に費やしています。無論会費だけ払って実際の活動には参加しない会員もいます。ただ、現在こういったクラブはフランクフルトも含めて会員数の減少傾向が問題となっており、新会員獲得が大きな課題となっています。
▲火室側を見る。長さが150㎜短くなっていることも判明。'08.12.17 Blankenburg P:Juergen Ssteimecke
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ここフランクフルトでE103号機は16号機と呼ばれています。既に15輌の蒸気機関車がレストアされ、動ける状態で保存されているので、その追い番を付されたわけです。勿論ほかにもDL、ELを多数所有しており、隣接する公園には600mmゲージのレールが敷かれ,常設駅も2箇所あり、この路線の保守だけでも大変な作業です。しかも路線は徐々に延長されているのだから驚きです。現在、会員は約150名、創立は30年以上前であり、年間を通じての訪問者数は1万1千人を超えているそうです。

▲ドイツ流に赤く塗装されて組立を待つ主台枠。缶胴受は原設計で新製され、ボイラー中心高もオリジナルに戻される。'08.6.28 Blankenburg P:R. Fach
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ではこういった大きなクラブがどのように資金を調達しているか見てみましょう。主な資金源は以下のように分類できます。
・メンバーの会費、作業
・EUから地元まで、公共団体の文化財源による援助金
・文化財団による援助金
・企業のスポンサリング(資金援助、技術援助、現物支給)
・個人による寄付金

▲本機の最大の特徴であるルッター・メラー動軸遊動機構は徹底的に分解修理され、密閉されたギアボックスに収納された。'08.5.11 Blankenburg P:R. Fach
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どこのクラブでも基本は「自分で出来る事は自分でする」です。金がかからず、しかも会員の勉強にもなるからです。各クラブには大抵は鉄道のプロがいて、メンバーの技術指導に当たっています。地元公共団体からは頭割りで援助資金が出る場合もありますが、一般に援助金はプロジェクトに対して支給され、クラブは文化財団や公的機関に対して自分のプロジェクトをプレゼンテーションし、その文化的意義をアピールしなければなりません。

▲安比奈採砂場に放置されていた頃のE。手前からE18(西武1)、E16(西武2)、E103(西武3)。'65.3.2 安比奈 P:三谷烈弌
今回この記事を書くにあたって、フランクフルト軽便博物館が文化財団との間に交わした書簡を見せてもらうことができましたが、神経を使う、事務的かつ長期にわたる交渉力が要求される仕事であることが知れます。それぞれ仕事を持つメンバーが余暇を使ってこういった仕事をこなしていくのは、車輌や施設の保守同様たいへんな事でしょう。本当に好きでなければとても出来ない、と頭が下がる思いです。
