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2006年03月20日
お薦めの『帝釈人車鉄道 〜全国人車データマップ〜』。
一昨年(2004年)の10月23日から12月19日にかけて「葛飾区郷土と天文の博物館」で開催された「帝釈人車鉄道 —人車のゆくえを追って—」をご記憶の方もおられると思います。大正初年、京成電気軌道の開業によって廃止となった帝釈人車軌道の“人車”が、茨城県の笠間人車軌道に転じて再使用されていたという言い伝えを検証する試みを軸として開催されたこの企画展は、宮城県松山人車、千葉県長南茂原人車、静岡県湯河原の豆相人車、さらには交通博物館の松山人車や千葉大学鉄道研究会が作った現代版人車と、実に5輌の「実物」が顔を合わせるこれまでにないユニークなものでした。
▲『帝釈人車鉄道 —全国人車データマップ—』(かつしかブックレット15)の表紙。A5判とコンパクトなサイズ。

今回上梓されたのは、この企画展の成果をもとにしたA5判100ページほどの本『帝釈人車鉄道 —全国人車データマップ—』(かつしかブックレット15)です。本編は「人車鉄道の時代」「帝釈人車鉄道」「人車のゆくえを追って」の3編から構成され、そのあとに資料編として「明治35年備忘録」「全国人車データマップ」、さらに展示抄録がつく、まさに人車鉄道に関するこれまでにないエンサイクロペディアとなっています。しかも前半24ページは貴重な絵葉書や古地図がカラーで掲載されており、いち自治体の郷土博物館が刊行した本としては異例の完成度の高さと言えるでしょう。
▲豆相人車鉄道のカラーグラフ頁。機械動力による軌道と違って小規模なものが多かっただけに、残された写真類はどれもが極めて珍しい。この写真はもちろん当時の“人着”(人工着色)によるカラー。

▲主題である帝釈人車鉄道の路線図や公文書館所蔵の平面図などもカラーで紹介されている。

同じく帝釈人車鉄道の項。事業報告書など経営に関わる資料もきちんと記録掲載されている。▲

人が動力となって車輌を押す“人車鉄道”は、1891(明治24)年の「藤枝焼津間人車鉄道」をはじめとして、1959(昭和34)年に廃止された島田軌道まで29路線が存在しました。もちろんこれらは軌道条例(のちの軌道法)による開業軌道で、森林や鉱山などで数多く使われていた産業用のものは含まれていません。この本では主題である帝釈人車軌道の顛末に加えて、これらすべての開業軌道について旧版地形図を掲載してそのルートを特定しようと努めるとともに、可能な限り写真を紹介しています。これまでにも2月18日付け本欄でもご紹介した佐藤信之さんの『人が汽車を押した頃 〜千葉県における人車鉄道の話〜』や伊佐九三四郎さんの『幻の人車鉄道 〜豆相人車の跡を行く〜』など、いくつかの人車鉄道関連図書が出版されていますが、この『帝釈人車鉄道 —全国人車データマップ—』はビジュアル面でも非常に良く出来ており、文句なくお薦めの一冊です。
▲梨畑の監視小屋に使われていた松山人車の車輌を発掘する様子もリアルに紹介されている。

3月15日に発行されたばかりのこの本、残念ながら一般書店には流通せず、「葛飾区郷土と天文の博物館」宛に直接申し込む形となります。価格はなんと600円。まさに自治体発行でなければ実現不可能なリーズナブルさです。詳しい申し込み方法は下記をご参照ください。
●代金600円+送料210円=810円分(1冊の場合)の郵便小為替を下記宛に送付。
〒125‐0063 東京都葛飾区白鳥3−25−1 葛飾区郷土と天文の博物館
℡03(3838)1101 FAX03(5680)0849。
▲裏表紙には全国の開業人車軌道の一覧マップが付いている。
投稿者 名取紀之 : 2006年03月20日 15:32

