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2006年01月03日
アイルランドに欧州最大のナローゲージ網を訪ねる。(2)

第二回:二十数年ぶりの念願成就?
蒸気トラックに度肝を抜かれたバーゼルドゥン・ブリックワークス(Bursledon Brickworks)でしたが、オープン・デーとは言うものの、まぁ村祭りといった程度の規模で、来場者もせいぜい百名といったところだったでしょうか。煉瓦工場の見学コースをひとわたり見て回り、早々に次の目的地アンバレー・ワーキング・ミュージアム(Amberley Working Museum)へと向かうことにします。
▲シンプレックスの牽く列車がゆっくりとアンバレー・ミュージアムの園内を巡る。'02.10.20
アンバレー・ワーキング・ミュージアムは鉄道のみならず、手工業や工芸といったサセックス州の伝統技術を活きた形で伝承し、来場者に体験してもらおうというミュージアムで、わが国で言えば明治村や北海道開拓の村のような施設です。そんなバックグラウンドがあるからか、ここに保存されているのはすべてインダストリアル・ナローゲージの車輌たちで、2フィートゲージの機関車が30輌、それ以外のゲージの機関車が7輌、さらにおびただしい数の客貨車が集められています。
バーゼルドゥンからはポーツマスの海沿いをひたすら東に向かい、ブライトンの手前から内陸部へ一時間ほどの行程ですが、これがまたわかりにくく、またしてもカーナビの普及している日本の有り難さを実感するドライブでした。
▲11月上旬には冬期閉園となってしまうため、すでに乗客も少なく駅も閑散としている。'02.10.20
入口でチケットを買って入ると、そこは産業革命前後の村といった感じで、石灰工場のキルンやら自動車修理工場やら、とにかくありとあらゆる職業に関連した建物があり、そこで実際に作業が行なわれています。その徹底ぶりはとても遊園地感覚ではなく、決してメジャーとは思えないウエスト・サセックスのこの地に、これほど広大な施設が運営してゆけること自体が、日本的感覚からすると驚異的です。自らの手で産業革命を成し遂げた国と、文明開化の名のもとに模倣した国との差でしょうか…。
▲結構盛大なエキゾーストノートを響かせて機回し中のシンプレックス。'02.10.20

お目当ての2フィート鉄道は園内の一番奥の方にありました。距離にして1キロもないでしょうか、すでに10月末のシーズン終盤とあって運転本数も少なく、シンプレックスの牽くミキストが一時間に1本程度運転されているに過ぎませんでした。ただ、この列車に乗ってミュージアムのある終点駅に着いた時、飛び上がらんばかりに驚いてしまいました。駅名が「BROCKHAM」とあったからです。実はこのBROCKHAMという名には個人的にきわめて深い思いがあるのです。
▲左が二十数年にわたって大事にしてきた『BROCKHAM MUSEUM』のガイドブック。右は現在のアンバレー・ミュージアムのガイドブック。

それはまだ十代の頃のことです。当時としては極めて珍しいヨーロッパ製のナロー製品を輸入している模型店(といっても自宅アパートの一室でしたが)があり、ある日そこで20頁ほどの興味深いインダストリアル・ナローのガイドブックを見かけました。コピーのような印刷の、まさに機関誌といった感じのそれは『BROCKHAM MUSEUM』とだけタイトルがあり、あとはひたすら写真とリストが連ねられていました。ご店主に伺っても、ほかの輸入品と一緒に紛れ込んできたらしくまったく要領を得ません。よほど欲しそうにしていたのか、「あげますよ」の一声に小躍りしてもらって帰ってきたのを昨日のことのように覚えています。
バグナル、ラストン、シンプレックス、リスター…ぼけぼけのモノクロ写真にどれほど見入っていたことでしょうか。あれ以来、実に四半世紀以上に渡ってBROCKHAMの名は脳裏から消え去ることはありませんでした。その後知己を得た英国ファンにBROCKHAM MUSEUMの所在を尋ねたりいろいろと探してはみたものの、ついにその場所はわからず終いでした。それだけに私にとってこの日の出会いはまさに時空を超えた衝撃であるとともに、二十数年ぶりの念願成就だったのです。
のちにわかったのは、1966年に設立されたBROCKHAM MUSEUM協会は1982年にこのアンバレー・ワーキング・ミュージアムに安住の地を得てその蒐集車輌をすべて移設していたのです。終点駅のブロックハムの名は、母体であるBROCKHAM MUSEUMを顕賞して付けられたものなのでした。
▲ようやく巡り合えたブロックハムの名を冠した駅。いや、思えば長い道のりだった…。'02.10.20
投稿者 名取紀之 : 2006年01月03日 17:36
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