KTXに乗る。

ちょうど一年前になりますが、JR九州さんからのお招きで、開業間もない韓国高速鉄道“KTX”に試乗する機会を得ました。博多を起点に、JR九州の高速艇“ビートル”を利用しての1泊2日の視察会です。すでに何回目かの開催で、今回は九州の記者クラブがメイン、東京の鉄道六誌連絡会からは私と『鉄道ピクトリアル』の今津編集長が参加しました。
写真はソウル駅ホームでずらりと並んで発車を待つ“KTX”です。“KTX”とはKorea Train eXpressの略で、ソウル~釜山回廊の激増する交通需要に対応するため、1989年から十数年がかりで結実したKHSR(Korea High Speed Rail)プロジェクトの成果です。さまざまな紆余曲折を経て、1994年にはフランスのTGV方式が採用されることが決まり、結果として写真のようにTGVと瓜二つの外観をもつペンデルツーク18輌(前後の動力車を含めると20輌)編成が誕生しました。
近未来新幹線試験車E954などから比べると、今や一時代前の先頭部形状ですが、逆に今となっては鉄道車輌らしい“表情”とも思え、サイボーグ的ながら、何となく親しみの持てるスタイルでもあります。
余談ですが、E954はもとより、一般報道では「空力を考慮した先頭部形状」が喧伝されますが、実際に高速車輌開発に携わっておられる技術者の方に伺うと、むしろ「後部形状」こそがキモだと言います。つまり、飛行機のように走行方向が一定ならば先頭部形状をメインテーマにすることもできるでしょうが、鉄道車輌の場合、折り返し運転が前提ですから、先頭部は数時間後には後部となるわけです。先頭になった時には空力に適い、後部になった時には無用な浮力やバタつきを起こさない形状こそが不可欠なのだそうです。

すっかりおしゃれになり、さながらヨーロッパのターミナルのような新ソウル駅コンコースです。韓国鉄道庁の路線延長は3129km、電化率21%(2001年現在)。ナローの水仁線なき今、すべてスタンダード・ゲージとなっています。
“KTX”は第一段階開業としてソウル~東大邸(トンテグ)間409kmを開業、東大邸~釜山間は在来線を走る形となります。ソウル(龍山)~東大邸間の高速区間は300km/h運転が可能で、開業2ヶ月後とあって路盤状態も良いのか、揺れも少なく非常に快適な乗り心地でした。釜山まで2時間40分の所要時間ですから、おおむね「のぞみ」の東京~大阪間といった感じでしょうが、隧道(最長で約10km)や視界を遮る防音壁等が少ないこともあってか、視覚的ストレスも少なく、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

1等車の室内です。1+2の座席はシートピッチ1120ミリとゆったりとしており、快適な空間です。その一方、2等車(普通車)の座席は2+2で、しかも簡易リクライニングではあるものの、いわゆる“集団見合い型”レイアウトとなっており、開業直後に行ったアンケートでも、走行方向と逆を向くシート配置への不満が上位を占めたそうです。
ちなみに、画面前方の人々は、韓国鉄道庁公報部長の車内インタビューに群がるテレビ・新聞各社の面々です。

ところで、韓国鉄道庁のお歴々がとうとうと説明する車内でちょっと?なものを発見してしまいました。なんと窓ガラスにクラックが入って、そこをテープのパッチで塞いであるのです。いや、正直言ってこれにはびっくり。しかもよりによって日本からそれなりのメンバーを招待して貸切の1等車です。本家フランスのTGVも乗ってみるといろいろとアバウトなところはありましたが、さすがに300km/h走行する窓にパッチを当てているのは見たことがありません。
開業('04.4)一ヶ月後の利用客は予想需要の47%と発表されており、逆に大邸をはじめとした地方空港の需要激減、さらにはKTX建設費による鉄道庁の累積負債が、地方交通線の整理という形で転嫁され始めるなど、その前途は決して順風ではなさそうです。あれから一年、今、KTXはどうなっているか気になるところです。(写真はすべて'04.6.25撮影)



